バブル崩壊後の日本で資産運用は本当に難しかったのか?シニア世代の経済事情を今の視点で読み解く

資産運用、投資信託、NISA

現在の高齢者世代が年金だけで生活が難しい背景には、さまざまな社会的・経済的要因が存在します。中でも「資産運用をしてこなかったからだ」とする批判がありますが、当時の環境を振り返ると、それが容易でなかった事情も見えてきます。この記事では、バブル崩壊後から2010年代前半までの資産形成の難しさと、その要因について考察していきます。

バブル崩壊後の日本経済と株式市場の低迷

1990年代のバブル崩壊以降、日本の株式市場は長期間にわたって低迷しました。日経平均株価は1989年末に38,915円の高値をつけた後、2003年には7,600円台まで下落。実に20年近く、右肩下がりの相場が続きました。

この間、長期投資を試みても元本割れが続く可能性が高く、資産運用のモチベーションがそがれる状況でした。いわば「株を買っても報われない時代」だったのです。

当時は金融商品の手数料が高く、非課税制度も未整備

現在はNISAやiDeCoといった非課税制度や、低コストのインデックスファンドが普及していますが、1990年代〜2000年代前半はそうした制度がほとんど存在しませんでした。

加えて、証券会社の売買手数料は今と比べて非常に高額で、例えば数十万円の取引でも1〜2%の手数料が取られるのが一般的でした。さらに信託報酬が年率2%を超える投資信託も多く、長期運用のコスト負担は現在の数倍にのぼりました。

「投資=危険」という価値観が根強かった時代背景

当時の日本社会では、「投資=ギャンブル」「資産運用=一部の富裕層のもの」という考え方が支配的でした。特に老後は「貯金と年金でなんとかなる」という前提が強く、金融教育もほとんど行われていませんでした。

結果として、投資に対して心理的なハードルが高く、生活資金を市場に投じるという選択を取れる人はごく一部に限られていたのが現実です。

一方で成功した人も存在するという事実

もちろん、厳しい環境でも着実に資産を増やした人もいます。たとえば、2000年代にJ-REIT市場が立ち上がった際に投資を始めた一部の人々は、不動産市況回復の恩恵を受けています。また、外貨建ての資産や金、定期預金を複数の金融機関で使い分けるなどして分散投資を行っていた人もいました。

しかし、こうした人々は情報感度が高く、金融リテラシーも備えたごく一部の層であったことは否定できません。

現代の若者世代が学ぶべき過去の教訓とは

過去の環境を知ることで、現代がいかに恵まれているかを理解できます。低コストのETFや投資信託、NISA・iDeCoなどの優遇制度、スマホ一つで始められる取引環境。これらを活用しない手はありません。

将来に向けて安定した資産形成を目指すためには、制度の恩恵を最大限に活かし、自ら金融リテラシーを高めることが不可欠です。

まとめ:当時は不利な環境だったが、今はチャンスに満ちている

バブル崩壊から2010年前後までの日本は、資産運用にとって厳しい時代だったのは間違いありません。手数料の高さ、制度の未整備、市場の低迷、社会的な投資アレルギー――これらの要因が重なり、多くの人にとって投資は現実的な選択肢ではありませんでした。

その背景を理解した上で、今を生きる私たちは、時代の恩恵を受けながらより柔軟で合理的な資産運用を選択できる立場にあるのです。

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