「アメリカは自国の減税原資を確保するために、貿易赤字相手国に関税を課しているのでは?」という疑問を抱く方も多いかもしれません。この記事では、関税と減税の関係、そしてアメリカの関税政策がどのような目的で行われているのかを丁寧に解説します。
関税収入は“減税の原資”になるのか?
関税は確かに国家歳入の一部ですが、アメリカの連邦政府における歳入構造に占める割合はごくわずかです。2022年の米連邦予算において関税収入は全体の2%未満に過ぎず、減税の財源を補うほどの規模ではないのが実情です。
したがって、「関税で減税分を補っている」というよりは、「他国への圧力・政策ツール」として関税が使われているのが実態です。
アメリカが貿易赤字国に関税をかける本当の目的
アメリカが中国など特定の貿易相手に対して高関税を課す背景には、次のような戦略的意図があります。
- 貿易不均衡の是正:巨額の貿易赤字を減らす
- 国内産業の保護:特に製造業・鉄鋼業など
- 知的財産保護:中国などへの技術流出懸念
- 外交・経済的圧力:交渉カードとしての使用
つまり、関税は歳入目的よりも政治・経済戦略の一環として用いられており、その影響は対中政策を中心に全世界に波及しています。
事実:関税強化と減税は同時に行われたが、直接の因果関係は薄い
トランプ政権期(2017年〜)には、大規模な法人税減税と同時に中国・メキシコなどへの関税強化が進められました。
このことから「関税=減税の原資」という誤解が生まれがちですが、実際には両者は独立した政策パッケージとして行われており、関税収入は減税額の足元にも及ばず、予算赤字はむしろ拡大しました。
“被害者”になるのは誰か?影響を受けるのは両国の消費者と企業
アメリカが関税を課すと、その対象国(例:中国、日本、EUなど)の輸出企業は価格競争力を失い、場合によっては輸出額が減少します。
一方、アメリカ国内では関税分が価格に転嫁されるため、消費者が高い商品を買わされるという「見えない増税」になります。
つまり、関税戦争は「相手国に打撃を与えるだけでなく、自国民も傷つける」構造となっており、その“被害者”は一方的ではありません。
事例:米中関税戦争の影響と副作用
2018年以降の米中貿易摩擦では、両国が互いに関税をかけ合う「報復関税合戦」となりました。その結果。
- 中国はアメリカ産の大豆・車・航空機の輸入を減少
- アメリカではiPhoneや家電、鉄鋼製品の価格が上昇
- 農家や製造業者に対する政府補助金(税金)が拡大
このように、関税収入よりも「関税による損失補填の支出」の方が多かったとする分析もあります。
まとめ:アメリカの関税政策は減税の原資ではなく、外交・経済戦略が主目的
・関税は国家収入だが、減税の財源を支える規模ではない
・関税は対中・対貿易赤字国への政治的・経済的圧力の手段
・実際には関税で被害を受けるのは両国の消費者や企業
・“アメリカの無計画”というより「戦略的強硬策」と言えるが、その副作用は大きい
アメリカの関税政策は単純な財源確保ではなく、グローバルなパワーバランスの中での交渉戦略として理解することが大切です。

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