Z世代はブルーカラーを避けてNISAで一攫千金を狙う?若者の仕事観と新NISAの本当の目的を解説

資産運用、投資信託、NISA

Z世代の就職観やNISAへの関心が高まるなか、「高学歴の若者は現場仕事を避け、投資で一攫千金を狙うのではないか」という見方を目にすることがあります。しかし、学歴や世代だけを理由に、特定の職業を避ける、あるいはNISAで大金を狙うと一括りにすることはできません。

そもそもNISAは、短期間で大金を得るための制度として設計されたものではありません。金融庁はNISAを、若年期から高齢期まで継続的に資産形成を行うための制度として位置付けており、特に長期・積立・分散投資を重視しています。

一方、建設・運輸など、いわゆるブルーカラーと呼ばれることのある現場系職種では人手不足が続いています。今後は人材不足によって賃金や待遇が改善したり、専門技能を持つ人材の市場価値が上昇したりする可能性もあり、「高学歴ならホワイトカラー、そうでなければブルーカラー」といった昔ながらの単純な区分では仕事と資産形成を考えにくくなっています。

NISAは「一攫千金を目指す制度」ではない

NISAは、一定の範囲内で投資から得られる利益を非課税にする制度です。現在のNISAには、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託を対象とする「つみたて投資枠」と、上場株式やETFなども購入できる「成長投資枠」があります。

制度の大きなメリットは、株式や投資信託の値上がり益、配当・分配金などについて一定の条件で税負担を抑えながら資産形成できることです。しかし、NISAを利用したからといって投資商品の価格が上昇するわけではなく、NISAにも元本保証はありません。

たとえば100万円をNISAで株式へ投資し、その株価が2倍になれば200万円になりますが、半値になれば50万円です。NISAによって変わるのは主に税金の扱いであり、投資そのものの価格変動リスクがなくなるわけではありません。

金融庁も、安定的な資産形成を行う選択肢として長期・積立・分散投資の重要性を示しています。したがって、NISAを「働かずに一発逆転する手段」と考えるより、給与などから生まれた余剰資金を長期間運用する仕組みとして理解したほうが、制度本来の考え方に近いといえます。

[参照] 金融庁「NISA特設ウェブサイト」

Z世代だから投資で一攫千金を狙うとは限らない

Z世代は一般に1990年代後半から2010年代前半ごろまでに生まれた世代を指す言葉として使われますが、その中には会社員、公務員、研究職、ITエンジニア、営業職、建設業、製造業、自営業などさまざまな職業の人がいます。当然ながら投資への考え方も人によって異なります。

また、高学歴であることと投資へのリスク選好にも直接的な関係があるとは限りません。積立投資を続ける人もいれば個別株を積極的に売買する人もいますし、投資そのものを行わず預金を重視する人もいます。

NISAの利用自体は若い世代にも広がっています。日本証券業協会によれば、証券会社におけるNISA口座の開設・利用状況は継続的に拡大しており、金融庁も2026年時点で18歳以上のおよそ4人に1人がNISA口座を保有する状況になったと説明しています。

つまり、NISAは一部の投機好きな若者だけが使う特殊な制度ではなく、幅広い年代に普及している資産形成制度になりつつあります。

[参照] 日本証券業協会「NISA及びジュニアNISA口座開設・利用状況調査」

「ブルーカラー=高学歴が避ける仕事」とは単純に言えない

ブルーカラーという言葉は一般に、建設、製造、運輸、整備など身体作業や技能を伴う職種を表すときに使われます。ただし、実際の職場ではIT化、自動化、ロボット、CAD、施工管理システムなどの導入が進んでおり、「頭を使わない肉体労働」という古いイメージだけでは説明できなくなっています。

たとえば建設業では、現場で作業する技能者だけでなく、施工管理、測量、設備、電気、機械、ドローン、BIM・CIMなど幅広い専門知識が必要になります。製造現場でも、生産設備の保守、品質管理、制御技術、ロボット運用など高度な技能を求められる仕事があります。

さらに、人手不足という需給関係も無視できません。厚生労働省の「令和7年版 労働経済の分析」では、2024年平均の有効求人倍率が全職業で1.14倍だったのに対し、輸送・機械運転従事者は2.18倍、建設・採掘従事者は5.12倍とされています。つまり、一部の現場系職種では人材需要がかなり強い状態です。

[参照] 厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析」

建設業では若手不足が大きな課題になっている

建設業では特に年齢構成の偏りが課題となっています。厚生労働省と国土交通省による2026年度予算案に関する資料では、建設技能者のうち60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は約12%とされています。

この数字から分かるのは、「若者がブルーカラーを嫌っている」と単純に断定できることではなく、若い技能者の確保そのものが重要な政策課題になっているということです。若年層が少なければ、将来的に技能を持つ人材の希少性が高まる可能性があります。

実際、建設、設備、整備、運輸などでは資格や経験によって収入が大きく異なります。会社員として専門技能を積んだ後、独立して事業を始める人もいます。そのため、「デスクワークよりブルーカラーのほうが必ず収入が低い」という前提も必ずしも成立しません。

[参照] 厚生労働省・国土交通省「建設業の人材確保・育成に向けた取組」

仕事で稼ぐこととNISAで資産形成することは競合しない

仕事と投資は「どちらか一方を選ぶもの」と考える必要はありません。むしろ一般的な資産形成では、仕事による収入を得て、その一部を貯蓄・投資へ回すという組み合わせが基本になります。

たとえば25歳で手取り収入から毎月3万円を投資へ回せる人がいたとします。年間36万円をNISAで積み立てれば、10年間の投資元本は360万円になります。投資先が値上がりすれば資産額はさらに増える可能性がありますが、反対に市場環境によって減少する可能性もあります。

一方、技能を身につけて収入が上がり、毎月6万円投資できるようになれば、同じ10年間でも投資元本は720万円です。投資成果を考えるときは「どの商品が大化けするか」だけでなく、本業からどれだけ安定して投資資金を生み出せるかも非常に重要になります。

若いうちは投資リターンより人的資本の影響が大きいこともある

若年層の資産形成を考えるときに重要なのが「人的資本」という考え方です。人的資本とは、知識、技能、資格、経験などによって将来得られる労働収入を資産のように捉える考え方です。

たとえば100万円の金融資産を運用して年5%の利益を得ても年間5万円です。一方、資格取得や転職、専門技能の習得によって年収が50万円増えれば、単純な金額ではその効果のほうが大きくなります。

もちろん年5%の投資利益が保証されているわけではありませんが、若いうちは投資元本そのものが少ないため、投資商品選びよりも収入を増やす能力のほうが資産形成へ大きく影響する場合があります。

この点では、大学や大学院で専門性を高めることも、建設・製造・整備などで高度な技能を身につけることも、どちらも人的資本への投資と考えることができます。

NISAで本当に一攫千金を狙うとどうなる?

NISAの成長投資枠では個別株も購入できるため、理論上は大幅に値上がりする銘柄へ投資して大きな利益を得ることも可能です。しかし、大きな利益を狙うほど一般的には価格変動リスクも大きくなります。

たとえば100万円を1銘柄へ集中投資し、その株価が5倍になれば500万円になります。一方、業績悪化などによって株価が80%下落すれば20万円になります。「何倍にもなる可能性」だけを見ると魅力的ですが、その裏側には大きな損失の可能性もあります。

さらにNISAには重要な税制上の注意点があります。NISA口座で発生した損失は、課税口座の利益との損益通算ができません。そのため、ハイリスクな短期売買をNISAで繰り返すことが必ず税制上有利とは限りません。

NISAのメリットを活かしやすい方法の一つは、十分に分散された投資信託やETFなどを長期間保有し、利益に対する非課税メリットを長期的に利用することです。

長期・積立・分散投資では「一発当てる」必要がない

NISAを使った資産形成の特徴は、必ずしも将来大化けする1社を当てる必要がないことです。金融庁も、価格変動リスクを抑えながら安定的な資産形成を目指す方法として長期・積立・分散投資を紹介しています。

たとえば全世界株式型のインデックスファンドなら、世界中の多数の企業へまとめて投資できます。特定企業が不振になっても、他の企業の成長によって影響を分散できるのが特徴です。

積立投資では、価格が高いときには少ない口数を、価格が低いときには多い口数を購入します。そのため、「今日が最高の買い時か」を毎回正確に予測する必要も小さくなります。

[参照] 金融庁「長期・積立・分散投資の考え方」

高学歴ホワイトカラーにも将来リスクはある

高学歴でホワイトカラー職へ就職すれば安泰、現場系職種なら将来性が低い、という構図も現在では単純ではありません。生成AIや業務自動化が進むことで、資料作成、翻訳、事務処理、分析など、従来は大卒ホワイトカラーが担当してきた仕事の一部が効率化される可能性があります。

一方、設備工事、整備、建設、保守など、現実の空間で高度な判断と技能を必要とする業務は、デジタル化が進んでも人材需要が残る分野があります。どちらが絶対に安全ということではなく、職種ごとに求められる能力が変化していくと考えたほうが自然です。

そのため若い世代にとって重要なのは、「ホワイトカラーかブルーカラーか」というラベルではなく、需要がある技能を身につけ、継続的に収入を生み出せる能力を高めることです。そのうえで余剰資金をNISAなどで運用すれば、労働収入と金融資産の両方から資産形成を進められます。

仕事と投資を組み合わせるほうが現実的な資産形成になりやすい

資産形成では、「働くか投資するか」ではなく「働いて稼ぎながら投資する」という考え方が現実的です。会社員でも職人でも自営業でも、安定したキャッシュフローがあれば相場が下落したときにも積立投資を続けやすくなります。

たとえば月5万円の積立を20年間続ければ、元本だけでも1,200万円になります。これに運用成果が加われば資産がさらに増える可能性があります。一方で、一攫千金を狙って最初の100万円を高リスク銘柄へ集中投資し、大きな損失を出せば、その後の資産形成に影響します。

投資では派手な成功例が注目されがちですが、長期間にわたる資産形成では、収入を確保すること、支出を管理すること、余剰資金を継続的に投資すること、分散することの組み合わせが重要になります。

まとめ:Z世代・高学歴・ブルーカラー・NISAを単純な対立で考えない

Z世代や高学歴者がブルーカラー職を避け、NISAで一攫千金を狙うと一括りにすることはできません。職業選択も投資方針も個人差が大きく、学歴や世代だけから判断できるものではありません。

また、NISAは短期間で資産を何倍にもするための制度ではなく、税制上のメリットを活用しながら継続的な資産形成を行うための制度です。金融庁も長期・積立・分散投資を安定的な資産形成の重要な考え方として示しています。

一方、建設・運輸などの現場系職種では人手不足が続き、特に建設業では若い技能者の不足が課題になっています。人材が不足する職種では、専門資格や高度な技能を持つ人の価値が高まる可能性もあります。

若い世代の資産形成を考えるなら、「どんな仕事なら格好いいか」「投資で一発当てられるか」ではなく、需要のある能力を身につけて収入を高め、その一部を長期的に投資へ回すという視点が重要です。仕事による人的資本とNISAによる金融資産形成は競合するものではなく、両方を組み合わせることで将来の選択肢を増やすことができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました