投資関連書籍には、発売当時は普通に購入できたものの、その後に絶版となり、中古市場で高値が付いた本があります。代表例として知られているのが、バウポスト・グループのセス・クラマンが1991年に出版した『Margin of Safety』です。
一方で、「著名な投資家が書いた本」「絶版になった」「著者本人が本を買い戻した、あるいは市場に出ている本を集めたという逸話があった」といった記憶から本を探している場合、情報が混同されている可能性もあります。投資本には似た逸話を持つ作品が多いためです。ここでは候補になりやすい有名投資本と、タイトルを特定するためのポイントを整理します。
セス・クラマンの『Margin of Safety』は希少投資本の代表格
『Margin of Safety: Risk-Averse Value Investing Strategies for the Thoughtful Investor』は、著名なバリュー投資家セス・クラマンによる書籍です。安全域(Margin of Safety)を重視し、価格と価値の差を利用してリスクを抑えながら投資する考え方などを扱っています。
クラマンは投資会社バウポスト・グループを率いてきたことで知られており、本そのものより投資家としての実績によって著者の知名度が高まったことも、この本が注目される理由の一つです。
ただし、「有名投資家が自著を買い戻した」という記憶だけから『Margin of Safety』とは別の本を特定するのは難しく、著者が実際に在庫を買い戻したのか、投資家が絶版本を買い集めたという話なのかを分けて考える必要があります。
絶版・希少本として名前が挙がりやすい投資書籍
古いバリュー投資関連書籍には、一時期入手しにくくなった作品や、初版など特定の版が希少になった作品があります。候補を探す場合は、単に現在購入できるかどうかではなく、「どの版が絶版なのか」を確認することが重要です。
| 書籍・著者 | 特徴 | 探す際の手掛かり |
|---|---|---|
| 『Margin of Safety』/Seth Klarman | バリュー投資・安全域 | 1991年刊、希少投資本として有名 |
| 『Security Analysis』/Benjamin Graham、David Dodd | 証券分析・バリュー投資の古典 | 版によって内容が異なり初期版にも価値がある |
| 『The Intelligent Investor』/Benjamin Graham | 長期投資・安全域 | ウォーレン・バフェットにも大きな影響を与えた古典 |
| 『Common Stocks and Uncommon Profits』/Philip Fisher | 成長企業の定性分析 | 著名投資家に影響を与えた古典 |
| 『100 to 1 in the Stock Market』/Thomas Phelps | 長期保有による大幅上昇株の研究 | 古い投資本として再評価された作品 |
なお、古典的な投資書籍は復刻版や新版、電子版が登場することがあります。そのため、「昔は絶版だった」という記憶と「現在も絶版」という状態は必ずしも一致しません。
『100 to 1 in the Stock Market』も候補として確認したい
トーマス・フェルプスの『100 to 1 in the Stock Market』は、1972年に出版された古典的な投資書籍です。長期間保有することで投資額が100倍になるような企業について研究した作品として知られています。
後にクリストファー・メイヤーが『100 Baggers: Stocks That Return 100-to-One and How to Find Them』を執筆する際にも、フェルプスの研究が重要な着想の一つとなりました。
「昔の有名な投資本だった」「長期間入手困難だった」「後年になって再評価された」という記憶であれば、このような古典投資書籍も候補に含めると見つけやすくなります。
ピーター・リンチやジョエル・グリーンブラットの本と混同している可能性もある
著者自身が著名投資家という条件なら、ピーター・リンチ、ジョエル・グリーンブラット、ハワード・マークス、フィリップ・フィッシャー、ジョン・テンプルトンなどの書籍も候補になります。
例えばピーター・リンチの『One Up on Wall Street』は1989年に出版された著名な個人投資家向け書籍です。ただし、これは改訂版も出版されているベストセラーであり、「現在では非常に希少な絶版本」という条件とは合いにくいでしょう。
ジョエル・グリーンブラットも著名なバリュー投資家で、『You Can Be a Stock Market Genius』などを書いています。このように著名投資家本人が書いた本は多数あるため、タイトルの一部や表紙、出版年代まで思い出せると候補を大幅に絞れます。
「著者が買い戻した」という記憶は特に慎重に確認したい
本を特定するうえで重要なのが「買戻し」という記憶です。これは、著者が出版社から自著の在庫を買い取ったという話だけでなく、「有名投資家がある本を大量購入して知人に配った」「絶版になった本を投資家が探して買い集めた」といった逸話と混同している可能性があります。
実際、著名な投資家や経営者が気に入った投資書籍を大量に購入し、社員や関係者へ配ったというエピソードはいくつもあります。そのため、「本人が自分の本を買い戻した」という一点を確定情報として候補を絞ると、かえって目的の本から遠ざかる場合があります。
また、株式投資の話で頻繁に登場する「buyback(買い戻し)」は自社株買いを意味します。書籍の記事や紹介文を読んだ記憶の場合、「著者が本を買い戻した」という話と「著者が企業の自社株買いについて説明していた」という話が記憶の中で重なっている可能性もあります。
タイトルを特定するには覚えている条件を書き出す
絶版投資本を探す場合は、覚えている特徴をできるだけ分解すると特定しやすくなります。
- 著者はアメリカ人か、それ以外の国の投資家か
- バフェット、グレアム系のバリュー投資家だったか
- ヘッジファンド・ファンドマネージャーだったか
- 出版されたのは1980年代、1990年代、それ以前か
- 日本語訳が存在したか
- 原書そのものが絶版だったのか、日本語版だけが絶版だったのか
- 中古価格が数万円・数十万円という話だったか
- 著者が自著を買い戻したのか、別の投資家が大量購入したのか
- 表紙の色やタイトルに覚えている単語があるか
例えば「1990年代のアメリカのヘッジファンドマネージャー」「バリュー投資」「中古価格が非常に高い」という条件ならクラマンがかなり有力になります。一方、「1970年代以前」「100倍株」「長期保有」という記憶ならトーマス・フェルプスなど別の候補が浮上します。
絶版本を高額で購入する前に復刻版や電子版も確認する
投資本は中古価格が高騰していても、その後に復刻されることがあります。また、原書は入手できる一方、日本語訳だけが絶版になっているケースもあります。
古書市場では「絶版」「希少」といった理由だけで非常に高い価格が付く場合がありますが、その価格と本の投資情報としての価値は別問題です。投資理論を学ぶことが目的なら、同じ著者の別作品、復刻版、図書館所蔵などを確認する方法もあります。
特に古い投資本は現在とは税制、市場制度、売買コスト、企業会計などが異なるため、具体的な売買方法をそのまま現在の投資に適用するのではなく、投資哲学や分析方法を学ぶ資料として読むのが適しています。
まとめ
セス・クラマンの『Margin of Safety』以外にも、投資の世界には絶版になった時期がある本や、特定の版が希少化して高値で取引される著名書籍があります。トーマス・フェルプスの『100 to 1 in the Stock Market』など、後世の著名投資家や投資書籍に影響を与えた古典も候補になります。
ただし、「有名投資家が著者」「絶版」「本人が買い戻した」という条件だけでは一冊に断定できません。特に買い戻しの逸話は、大量購入して配った話や自社株買いの話などと混同している可能性があります。
著者の国籍、出版年代、投資スタイル、日本語訳の有無、表紙、タイトルの一部などを一つでも思い出せれば候補はかなり絞れます。希少本を探す場合には、原書・日本語版・初版・復刻版を区別して調べることも重要です。
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