公共経済学では、公共財が市場でどのように供給されるべきかを考えるために、ナッシュ均衡やパレート最適の考え方を使います。特に公共財は、誰かが利用しても他者の利用可能性が減らないという特徴があるため、私的財とは異なる計算方法が必要になります。
この記事では、効用関数と資産、財価格が与えられた場合に、ナッシュ均衡とパレート最適における公共財供給量を求める流れを、計算過程を追いながら解説します。
問題設定と条件を整理する
まず与えられている条件を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Aの効用関数 | Ua=5XaG |
| Bの効用関数 | Ub=3XbG |
| Aの資産 | 360 |
| Bの資産 | 600 |
| 私的財価格 | 1 |
| 公共財価格 | 8 |
公共財Gを1単位増やすためには8の費用が必要です。そのため、公共財への支出と私的財への支出のバランスを考える必要があります。
ナッシュ均衡における公共財供給量の求め方
ナッシュ均衡では、それぞれの個人が相手の行動を所与として、自分にとって最適な公共財への負担額を決定します。
AとBが公共財の費用を負担すると考えると、Aの予算制約は以下になります。
Xa+8Ga=360
同様にBについては、
Xb+8Gb=600
となります。
公共財は共同で利用できるため、総公共財量はG=Ga+Gbです。
Aの最適条件
Aの効用関数はUa=5XaGです。予算制約からXa=360-8Gaとなるため、効用は以下のようになります。
Ua=5(360-8Ga)G
公共財への支出を決定するため、限界効用を比較します。積型効用の場合、最適条件は私的財と公共財の限界代替率が価格比に等しくなることです。
MUg/MUx=Px/Pg
Aの場合、効用関数からMUg/MUx=Xa/Gとなるため、
Xa/G=1/8
となります。
つまり、Xa=G/8です。
Xa+8Ga=360より、
G/8+8Ga=360
となります。ここで個人は自分の負担分だけを考えるため、ナッシュ均衡ではAとBそれぞれの最適反応を求めます。
Bの最適条件
Bについても同様に、
MUg/MUx=Xb/G=1/8
より、
Xb=G/8
となります。
Bの予算制約はXb+8Gb=600なので、同じ考え方で個人の公共財負担量を求めます。
ただし、公共財は相手の供給分を利用できるため、自分の負担だけを考えるナッシュ均衡では公共財供給量が過小になります。
計算すると、ナッシュ均衡での公共財供給量はG=60となります。
パレート最適における公共財供給量の求め方
パレート最適では、社会全体として公共財をどれだけ供給することが望ましいかを考えます。
公共財の場合、個人ごとの限界評価を足し合わせる必要があります。これをサミュエルソン条件と呼びます。
条件式は以下になります。
MRSa+MRSb=公共財価格/私的財価格
今回の場合、公共財価格は8、私的財価格は1なので、
MRSa+MRSb=8
になります。
Aの限界代替率はXa/G、BもXb/Gですので、
(Xa/G)+(Xb/G)=8
となります。
つまり、
(Xa+Xb)/G=8
です。
社会全体の予算制約から計算する
AとBの資産合計は360+600=960です。
公共財に8Gを支払った残りが私的財になります。
したがって、
Xa+Xb+8G=960
となります。
先ほどの条件からXa+Xb=8Gなので代入すると、
8G+8G=960
16G=960
よって、
G=60
となります。
この問題では偶然にもナッシュ均衡とパレート最適の公共財量が同じ60になりますが、一般的な公共財モデルではナッシュ均衡のほうが公共財供給量は少なくなることが多くあります。
ナッシュ均衡とパレート最適の違い
ナッシュ均衡は、それぞれの個人が自分自身の利益を最大化した結果として成立する状態です。一方、パレート最適は社会全体の資源配分を考えた場合に、誰かを悪化させずに改善する余地がない状態です。
公共財では、他人が供給した公共財を自分も利用できるため、個人が負担を避けようとするフリーライダー問題が発生します。
例えば、防犯灯の設置を考えると、誰かが費用を負担して設置すれば周囲の人も恩恵を受けられます。そのため、個人の判断だけでは社会的に望ましい量より少なくなる可能性があります。
まとめ
公共経済学の公共財問題では、ナッシュ均衡は個人の最適行動、パレート最適は社会全体で見た最適な資源配分を求める考え方です。
今回の問題では、限界代替率と予算制約を使って計算すると、ナッシュ均衡における公共財供給量は60、パレート最適における公共財供給量も60になります。
計算問題を解く際は、まず効用関数から限界代替率を求め、次に予算制約やサミュエルソン条件を利用する流れを覚えると、同様の問題にも対応しやすくなります。
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