ゲーム理論を学ぶ中で、「お互いの利得が0の場合でもナッシュ均衡になるのか」「ある戦略の利得が常に低い場合、その戦略はナッシュ均衡にならないのか」と疑問に感じることがあります。ナッシュ均衡を判断するには、利得の大きさだけではなく、相手の戦略を固定したときに自分が戦略を変更するメリットがあるかを見る必要があります。この記事では、ナッシュ均衡の基本的な考え方と、利得が0の場合や特定の戦略の扱いについて具体例を使って解説します。
ナッシュ均衡とは何か
ナッシュ均衡とは、ゲーム理論において「相手の戦略が変わらないと仮定した場合、どのプレイヤーも自分だけ戦略を変更して得をすることができない状態」を指します。
重要なのは、ナッシュ均衡は「全員が最大の利益を得ている状態」ではないという点です。全員の利得が低くても、誰も単独で行動を変えるメリットがなければナッシュ均衡になります。
例えば、2人のプレイヤーが同じ戦略を選び、その結果として両者の利得が0になったとしても、どちらか一方だけが別の戦略へ変更すると利得が下がる場合、その組み合わせはナッシュ均衡になります。
お互いの利得が0でもナッシュ均衡になるのか
結論として、お互いの利得が0でもナッシュ均衡になることはあります。ナッシュ均衡の条件は、利得が大きいかどうかではなく、戦略を変更する誘因があるかどうかで決まります。
例えば、以下のような状況を考えます。
| プレイヤーB:戦略A | プレイヤーB:戦略B | |
|---|---|---|
| プレイヤーA:戦略A | (0,0) | (-1,1) |
| プレイヤーA:戦略B | (1,-1) | (0,0) |
この場合、両者が戦略Aを選んだ結果が(0,0)だったとしても、一方だけが変更すると利得が悪化するなら、その組み合わせはナッシュ均衡になります。
つまり、「利得が0だからナッシュ均衡ではない」という判断は誤りです。ナッシュ均衡では利得の絶対的な大きさではなく、他の選択肢と比較して変更する理由があるかを確認します。
ナッシュ均衡を判断するときは相手の戦略ごとに考える
ナッシュ均衡を探す場合は、「自分にとって最も良い選択は何か」を相手の戦略ごとに確認します。これを最適反応と呼びます。
例えば、相手が技1を選んだ場合、自分は技1・技2・技3のどれを選ぶと最も高い利得になるのかを比較します。そして、お互いの最適反応が一致する組み合わせがナッシュ均衡になります。
そのため、単純に「技1の利得が0だから選ばれない」と判断するのではなく、相手の選択によって技1が最適反応になる可能性があるかを見る必要があります。
技1の利得がすべて0で技2や技3の利得が高い場合はどうなるか
質問のように、あるプレイヤーについて技1を選んだ場合の利得がすべて0で、技2や技3を選ぶと必ず1以上の利得になる場合を考えます。
この場合、技1は合理的な選択肢にはなりません。なぜなら、相手がどの戦略を選んでも、技2や技3を選んだ方が必ず高い利得を得られるからです。
このような戦略を「厳密に支配される戦略」と呼びます。厳密に支配される戦略は、合理的なプレイヤーなら選ばないと考えられるため、ナッシュ均衡になる可能性は低くなります。
ただし技1が必ずナッシュ均衡にならないとは限らない
ただし、「技1の利得が0である」という情報だけでは、必ずナッシュ均衡ではないとは言えません。
例えば、技2や技3を選んだ場合に得られる利得が、相手の戦略によっては0以下になる場合、技1が最適反応になる可能性があります。
ナッシュ均衡の判断では、技1の利得だけを見るのではなく、相手がどの戦略を選ぶかによって自分の利得がどう変化するかを確認する必要があります。
支配戦略とナッシュ均衡の違い
ゲーム理論では、支配戦略とナッシュ均衡を混同しやすいため注意が必要です。
| 概念 | 意味 |
|---|---|
| 支配戦略 | 相手がどんな行動をしても、自分にとって最も有利になる戦略 |
| ナッシュ均衡 | 全員が相手の行動を前提にした最適な行動を選んでいる状態 |
支配戦略が存在する場合、その組み合わせはナッシュ均衡になることが多いですが、ナッシュ均衡には支配戦略がない場合もあります。
例えば、囚人のジレンマでは各プレイヤーが支配戦略を選んだ結果、全体として望ましくない状態がナッシュ均衡になります。
ナッシュ均衡を解くときの基本手順
ゲーム理論の問題を解く場合は、以下の手順で考えると分かりやすくなります。
- 各プレイヤーが相手の戦略ごとに最も高い利得を確認する
- 最適反応となる戦略を印をつける
- 両者の最適反応が一致する場所を探す
- その組み合わせがナッシュ均衡か確認する
例えば、利得表の中で両方のプレイヤーが同時に「ここが一番良い」と考える場所があれば、それがナッシュ均衡の候補になります。
まとめ:利得の大きさではなく戦略変更のメリットで判断する
ナッシュ均衡は、利得が高い状態や全員が満足している状態を意味するものではありません。たとえ両者の利得が0でも、一方的に戦略を変更するメリットがなければナッシュ均衡になります。
一方で、ある戦略の利得が常に他の戦略より低い場合、その戦略は合理的な選択肢から外れる可能性があります。ただし、判断には相手の戦略との関係を見る必要があります。
ゲーム理論の問題では、「どの戦略が一番高い利得か」だけではなく、「相手の行動を前提にして、自分が変更する理由があるか」を確認することがナッシュ均衡を理解するポイントです。
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