株式投資で企業の割安度を判断するときによく使われるPERですが、時価総額ではなく浮動株時価総額を使って計算できるのか疑問に感じる人も少なくありません。大株主が保有する固定株を除けば、実際に市場で売買されている価値だけで企業を見ることができるようにも思えます。この記事では、浮動株ベースのPERという考え方が成立するのか、通常のPERとの違いや投資判断での使い方について解説します。
PERの基本的な計算方法と意味
PER(株価収益率)は、一般的に「時価総額÷純利益」または「株価÷1株当たり利益(EPS)」で計算されます。
例えば、時価総額が100億円で年間純利益が1億円の企業の場合、PERは100倍になります。これは、現在の利益水準が続いた場合、企業価値を利益だけで回収するまで100年かかるという見方ができます。
PERは市場全体で共通して使われる指標であり、基本的には企業全体の価値と利益を比較するためのものです。そのため、通常は発行済み株式すべてを基準に計算します。
浮動株時価総額を使ったPERは考え方として可能なのか
浮動株時価総額を使ってPERを計算すること自体は、独自の分析指標として考えることは可能です。
例えば、時価総額100億円の企業で、大株主が80%を保有しており、市場で流通している株式の価値が20億円だった場合、浮動株時価総額÷純利益という計算をすれば20倍という数字になります。
ただし、この数字は一般的なPERとは意味が異なります。浮動株PERは「市場で取引されている株式だけを基準にした利益倍率」であり、企業全体の価値に対する利益倍率を示しているわけではありません。
なぜ通常のPERでは固定株も含めて考えるのか
大株主が保有している固定株も、企業価値の一部であるためです。株式を80%保有している創業者や親会社がいたとしても、その株式には企業の利益を受け取る権利があります。
例えば、会社が1億円の利益を出した場合、その利益は市場で売買されている20%の株主だけではなく、固定株を持つ株主にも配分されます。配当や企業価値上昇による利益を受ける対象は、全株主です。
そのため、投資家が企業全体の価値を評価するときには、固定株を含めた時価総額を使うことが基本になります。
浮動株PERを見るメリットと注意点
浮動株PERには、市場で実際に売買されている株式の需給を見るというメリットがあります。特に、大株主の保有比率が非常に高く、流通株が少ない銘柄では、株価の動きや市場参加者の評価を考える材料になる場合があります。
例えば、時価総額100億円の企業でも、浮動株が極端に少ない場合、少ない資金流入で株価が大きく変動することがあります。そのような銘柄では、浮動株比率を確認することは有効です。
一方で、浮動株PERだけを見て「本当のPERは20倍だから割安」と判断するのは危険です。企業価値全体と利益を比較する本来のPERとは目的が違うため、補助的な指標として利用するのが適切です。
投資判断ではPER以外の指標も合わせて確認する
企業の割安度を判断するときは、PERだけではなく、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)、利益成長率、財務状況なども確認することが重要です。
例えば、PERが高く見える企業でも、今後大きな利益成長が期待される場合は市場から評価されている可能性があります。逆にPERが低くても、利益が減少傾向にある企業では割安とは言えない場合があります。
浮動株時価総額を見る場合も、企業分析の一つの視点として取り入れ、通常のPERや事業内容と合わせて判断することで、より多面的な分析ができます。
まとめ:浮動株ベースのPERは独自分析として使えるが通常のPERとは別物
浮動株時価総額÷純利益でPERのような指標を作ることは可能ですが、それは一般的なPERとは異なる意味を持ちます。
大株主の固定株も企業価値や利益を受け取る権利を持つため、企業全体を評価する場合は通常の時価総額ベースのPERを使うのが基本です。
浮動株PERは需給や市場での取引状況を分析する補助的な指標として活用し、通常のPERや他の財務指標と組み合わせて投資判断を行うことが大切です。
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