信用取引の空売りでは、保有していない株を借りて売却し、後から株を買い戻して返済する仕組みになっています。その中で、現物株を利用して返済する「現渡し」は、買い戻しによる返済とは異なるため、損益の考え方が分かりにくい取引です。この記事では、空売り価格より高い価格や安い価格で現物株を購入した場合に、現渡しで実際の損益がどのように決まるのかを具体例を使って解説します。
現渡しとは空売りした株を現物株で返済する方法
現渡しとは、信用取引で空売りした銘柄について、同じ銘柄の現物株を使って返済する方法です。通常の空売りでは、証券会社から借りた株を売却した後、株価が下がったタイミングで買い戻して返済します。
一方で現渡しの場合は、すでに保有している現物株を信用売りの返済に充てるため、市場で買い戻す必要がありません。そのため、現渡し時点では新たな株価変動による決済売買は発生しません。
例えば、700円で100株を空売りした後、同じ銘柄の現物株を保有していれば、その現物株を渡すことで信用売りを終了できます。
空売り価格より高い価格で現物株を買った場合の損益
空売り価格より高い価格で現物株を購入して現渡しした場合、空売り取引だけを見ると利益は発生していますが、現物株の購入価格によって実質的な損益が変わります。
例えば、700円で100株を空売りし、その後770円で100株の現物株を購入して現渡しした場合を考えます。
| 取引 | 価格 | 損益 |
|---|---|---|
| 空売り | 700円×100株 | 7万円受取 |
| 現物購入 | 770円×100株 | 7万7000円支払 |
この場合、空売りによる利益は700円で売って770円で買った計算ではなく、現渡しによって返済しているため、実質的には「現物株を770円で取得して、それを700円の空売り返済に使った」と考えます。
結果として、700円で売却した株を770円で取得したことになるため、1株あたり70円、100株なら7000円の損失になります。
空売り価格より安い価格で現物株を買った場合の損益
反対に、空売り価格より安い価格で現物株を購入して現渡しすると、空売りによる利益を得ることができます。
例えば、700円で100株を空売りし、その後600円で100株の現物株を購入して現渡しした場合を見てみます。
| 取引 | 価格 | 損益 |
|---|---|---|
| 空売り | 700円×100株 | 7万円受取 |
| 現物購入 | 600円×100株 | 6万円支払 |
700円で売った株を600円で用意できたため、1株あたり100円の利益となります。100株の場合は1万円の利益です。
つまり現渡しでは、空売りした価格と現物株を取得した価格の差額が、基本的な損益になります。
現渡しと買い戻しによる返済の違い
空売りの返済方法には、現渡しのほかに市場で株を買い戻す「買い返済」があります。どちらも信用売りを終了させる方法ですが、株の用意方法が異なります。
買い返済の場合は、株価が下落していれば利益、上昇していれば損失になります。一方、現渡しでは現物株の取得価格と空売り価格の差で損益を考えます。
例えば、700円で空売りした銘柄が770円まで上昇した場合、買い返済なら70円の損失です。しかし、その株を以前から600円で保有していた場合、現渡しを選択すると現物株の含み益を活用して信用売りを決済できます。
現渡しを利用する際に注意したいポイント
現渡しは便利な返済方法ですが、単純に株価だけを見て判断すると、本当の損益を誤解することがあります。特に、現物株をいつ、いくらで取得したかによって投資全体の結果は変わります。
また、信用取引では信用金利や貸株料などの諸費用が発生する場合があります。そのため、実際の利益や損失を計算するときは、手数料やコストも含めて考える必要があります。
例えば、空売りで利益が出ているように見えても、長期間信用売りを保有していた場合、諸費用によって利益が小さくなることがあります。
まとめ|現渡しの損益は空売り価格と現物取得価格の差で決まる
現渡しでは、空売りした株を市場で買い戻すのではなく、保有している現物株を使って返済します。そのため、空売り価格と現物株の取得価格との差額が実質的な損益になります。
700円で空売りして770円で現物株を購入した場合は、1株あたり70円の損失になります。一方、600円で購入して現渡しすれば、1株あたり100円の利益になります。
現渡しを正しく理解するには、信用取引の売買価格だけでなく、現物株を取得した価格や手数料なども含めて総合的に判断することが大切です。
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