桐谷広人さんが米国株に投資していたら資産50億円になった?S&P500と日本株から検証

株式

株主優待投資で知られる桐谷広人さんについて、「もし日本株ではなく米国株へ投資していたら、現在は桁違いの資産を築いていたのではないか」と考える人もいるでしょう。米国株、とりわけS&P500やNASDAQの長期的な上昇を見ると、そう感じるのも不思議ではありません。

しかし、過去の資産額に米国株の上昇率を単純に掛ければ現在の資産を計算できるわけではありません。いつ投資したのか、どの商品を買ったのか、途中で売却したのか、配当を再投資したのか、為替変動をどう扱うのかによって結果は大きく変わります。

そこでこの記事では、桐谷さんの投資歴として公表されている情報と株価指数の考え方をもとに、「米国株なら50億円」という仮説がどの程度現実的なのかを整理します。なお、以下は過去のデータを使った仮定の試算であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。

そもそも桐谷広人さんはどのくらいの資産を築いたのか

桐谷広人さんは元プロ棋士で、現在は株主優待を活用する個人投資家として広く知られています。メディアでは多数の株式を保有し、株主優待券を使って生活する姿でも有名になりました。

重要なのは、桐谷さんの現在の資産が「最初から現在の金額だったわけではない」という点です。長期間にわたる投資の途中には利益だけでなく大きな損失もあり、リーマン・ショックでは資産を大幅に減らした経験についても本人が語っています。

したがって「現在数億円持っているのだから、昔からその全額を米国株へ投資していれば」という計算をすると、実際には当時存在していなかった資産まで過去へさかのぼって運用したことになってしまいます。比較には投資開始時点の元本とキャッシュフローをそろえる必要があります。

米国株に投資していれば有利だった可能性は高い

長期的な株価指数を見ると、2000年代以降の米国株、とくに2010年代以降のS&P500は大きく上昇しました。Apple、Microsoft、Amazon、Alphabet、NVIDIAなど巨大テクノロジー企業の成長が指数全体を押し上げた時期もあります。

一方、日本株も長期停滞の時期を経た後、アベノミクス以降は大きく上昇しています。そのため「日本株は増えず、米国株だけが増えた」と考えるのも正確ではありません。それでも比較する期間によっては、米国の代表的な株価指数が日本株指数を大幅に上回っています。

さらに日本の投資家から見れば為替も重要です。円安が進んだ期間には、ドル建て資産の円換算額が株価上昇以上に増えることがあります。逆に円高になれば、米国株がドルベースで上昇しても円換算した利益は縮小します。

「米国株なら50億円」を計算するには投資開始時期が必要

仮に過去のある時点で1億円を持っていた人が、その全額を米国株へ投資したとします。このとき必要になるのが「何年から何年まで保有したのか」という条件です。

例えば同じ1億円でも、米国株の大幅な上昇局面が始まる前から投資していた場合と、すでに株価が上昇した後から投資した場合では最終資産がまったく違います。また、S&P500へ投資した場合とNASDAQ100へ投資した場合、特定の個別株へ投資した場合でも結果は変わります。

つまり「米国株」という言葉だけでは、50億円になったかどうかは計算できません。投資対象と投資期間を具体的に設定して初めて比較できます。

50億円にするには元本を何倍にする必要がある?

ここでは計算を単純化して考えてみましょう。仮に投資元本が1億円なら、50億円にするには50倍になる必要があります。2億円なら25倍、3億円なら約16.7倍、5億円なら10倍です。

スタート時の資産 50億円までに必要な倍率
5,000万円 100倍
1億円 50倍
2億円 25倍
3億円 約16.7倍
5億円 10倍

この表を見ると、「米国株が日本株より上昇した」というだけでは50億円へ到達できないことが分かります。数十倍の資産を作るには、かなり早い時期から長期保有するか、非常に大きく値上がりした個別株を保有するなどの条件が必要です。

S&P500への投資なら50億円になったとは限らない

米国株の代表的な指数としてよく使われるのがS&P500です。米国の主要企業約500社で構成されるため、特定企業へ集中投資するよりも米国企業全体の成長を捉える比較対象として適しています。

ただし、S&P500は長期的に大きく上昇してきたとはいえ、短期間で何十倍にもなるような指数ではありません。「昔から米国株を持っていた」という条件だけで、数億円が自動的に50億円になるわけではありません。

また、指数そのものには直接投資できないため、実際にはETFや投資信託などを利用することになります。配当込みか株価だけか、運用コストや税金をどう扱うかによっても実際のリターンは変わります。

NASDAQや個別のハイテク株なら結果はまったく違う

一方、NASDAQ100のように成長企業の比率が高い指数へ長期間投資していたと仮定すれば、S&P500とはかなり違った結果になります。さらにNVIDIAやAppleなど、後に巨大企業へ成長した銘柄を早期から大量に保有していたという仮定なら、資産が何十倍になるケースもあり得ます。

ただし、これは典型的な「結果を知った後」の計算です。当時存在した多数の企業の中から、後に勝者となる企業だけを選択し、暴落しても売却せず保有し続ける必要があります。

例えば株価が10倍、20倍になった企業でも、その途中で大幅な下落を経験することがあります。最終的なチャートだけを見れば簡単そうでも、リアルタイムで巨額の含み損に耐えて保有を続けられたかどうかは別問題です。

リーマン・ショックを避けられたわけでもない

「日本株ではなく米国株なら安全だった」という理解にも注意が必要です。2008年の世界金融危機では米国株も大幅に下落しました。そもそもリーマン・ショックの震源地は米国の金融市場です。

したがって、当時米国株へ資産を集中させていたとしても、大きな含み損を経験した可能性があります。その局面で売却してしまえば、その後の長期的な米国株上昇の恩恵を十分に受けられません。

投資の結果は「最終的に何倍になったか」だけでなく、そこへ到達するまでの値動きと投資家自身の行動にも左右されます。

円安によって米国株投資の成績がさらに良く見える場合もある

日本から米国株へ投資するときに無視できないのがドル円相場です。例えば1ドル100円のときにドル資産を購入し、その後1ドル150円になれば、ドル建て資産の価格が同じでも円換算額は約1.5倍になります。

米国株の上昇と円安が同時に進めば、日本人投資家の円ベースの資産額には両方の効果が働きます。このため近年のチャートだけを見ると、米国株投資が非常に強力だったように感じられることがあります。

しかし為替は反対方向にも動きます。将来円高になれば円換算した米国株の価値を押し下げるため、「海外株なら為替でも必ず儲かる」というものではありません。

株主優待投資と米国株インデックス投資は目的そのものが違う

桐谷さんの投資を考える際には、単純な資産最大化だけで評価しないことも重要です。桐谷さんが有名になった理由の一つは、配当や株価上昇だけでなく、企業から受け取る株主優待を積極的に生活へ活用する独特のスタイルにあります。

例えば飲食券、映画券、買い物券などを利用すれば、金融資産の金額にはそのまま表れない生活上のメリットを得られます。米国企業では日本企業のような株主優待制度は一般的ではないため、米国株中心なら現在知られている桐谷さんの投資スタイルそのものが成立しにくかったでしょう。

つまり「最終資産額を最大化する投資」と「優待を受け取りながら生活に活用する投資」は、評価基準が異なります。後から資産額だけを比べると、この違いが抜け落ちてしまいます。

過去の勝者を使った「もしも投資」には注意が必要

投資では「20年前にこの株へ1,000万円投資していれば、今は○億円」という話がよくあります。計算そのものが正しくても、それが当時現実的に選択できた投資だったかは別の問題です。

例えば20年前に現在の巨大IT企業へ集中投資するには、その企業が将来の勝者になると予測しなければなりません。同時期に存在していたものの、その後低迷・破綻した企業を選んでいた可能性もあります。

過去のチャートには「生き残った企業」が目立つため、投資が実際より簡単だったように見えやすいという点は、仮想的な資産計算をするときに覚えておきたいポイントです。

まとめ|米国株ならもっと増えた可能性はあるが「50億円」とは断定できない

桐谷広人さんが日本株ではなく米国株へ投資していた場合、投資時期や銘柄によっては現在より大きな金融資産になっていた可能性はあります。特に米国株が大きく成長した期間を長期保有していたという条件なら、その差は相当大きくなることがあります。

しかし、「米国株に投資していれば現在50億円だった」と断定することはできません。50億円という数字を検証するには、その時点で実際に持っていた投資可能資産、購入時期、投資対象、売買履歴、配当再投資、税金、為替などを設定する必要があります。

そしてNASDAQや後に急騰した個別株を使えば非常に大きな数字を作れますが、それは結果を知った現在から過去を振り返ったシミュレーションです。投資成績を公平に比較するなら、「当時利用可能だった同額の資金を、同じ期間、S&P500など広く分散された指数へ投資していたらどうなったか」という条件で検証するのが分かりやすいでしょう。

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