一見すると「豊作=たくさん売れる=儲かる」という図式が成り立ちそうですが、現実の農業経済はそう単純ではありません。豊作で価格が下がると農家が困る理由は、流通や保存、価格形成の構造に深く関係しています。本記事では、豊作による価格下落がなぜ問題になるのか、その背景を具体例とともに解説します。
価格が下落しても「売上」は増えない理由
価格が下がれば多く売れるというのは経済学的に正しい一面がありますが、農作物には保存や需要の限界という実務上の制約があります。たとえばキャベツが1個100円から30円に値下がりしても、1人が1日で食べられる量には限界があるため、消費量は大幅には増えません。
また、大量出荷で売上を補おうとしても、市場価格が下がれば単価あたりの収益が減少し、輸送費や人件費を考慮すると逆に赤字になることもあります。
流通・保管のコストとロスが増える
豊作になると大量の農産物が市場に出回りますが、すべてが売れるとは限りません。流通業者やスーパーも販売量に限界があるため、余剰分は在庫となり、傷みやすい野菜や果物は廃棄されるケースもあります。
たとえばトマトやいちごなどは冷蔵保存でも数日が限界であり、需要を超えるとその分が無駄になるのです。これらのロスはすべて生産者の負担になります。
価格が下がると経費を回収できない
農業には、種苗費・肥料・農薬・人件費・燃料費など多くのコストがかかっています。価格が半分になると、収穫量を倍にしないと利益が変わらないことになりますが、収穫・選別・出荷の人手や時間は限られています。
たとえば、きゅうり農家が通常1kgあたり100円で売っていたものが豊作で50円に下がった場合、収穫・箱詰め・出荷コストが1kgあたり60円かかっていれば、売れば売るほど赤字になる計算です。
消費者の需要は価格だけでは動かない
安ければ売れる、というのは日用品の話であり、食品、とくに生鮮野菜には保存や調理の手間もあります。たとえば、にんじんが1本10円で売られていても、家庭で1週間に使う量は3本程度でしょう。
これ以上安くしても購買量はほとんど増えず、結果として値下げ競争が加速し、農家の利益がさらに圧迫される悪循環に陥ります。
農協や市場制度の制約も影響
農協出荷の場合、出荷調整が行われることがあります。市場価格が急落しすぎると一部の野菜が出荷制限され、農家は収穫できても出せないという事態になることもあります。
また、収入補償制度や価格安定対策があるとはいえ、全額が補填されるわけではなく、経営的には不安定要因になります。
まとめ:豊作は必ずしも“喜ばしいこと”ではない
豊作で価格が下落することは、単なる「売れ残り」や「もったいない」問題ではなく、農家の経営を圧迫する深刻な問題です。大量に収穫しても需要には限界があり、価格下落によって採算が取れなくなることが現実にあります。
農業経済を正しく理解するためには、価格、流通、需要、コストといった複合的な視点が必要です。

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