現在の株式市場では電子取引が当たり前になっていますが、かつての東京証券取引所では、証券会社の場立ち(ばたち)が手や指の動きだけで売買注文を伝える「手サイン」が使われていました。
当時は多くの銘柄を短時間で取引する必要があり、声だけでは情報が混乱するため、銘柄や売買内容を一目で伝えるための独自の合図が発達しました。この記事では、昔の東証で使われた手サインの仕組みや、企業ごとの特徴的な合図について解説します。
東証で使われていた手サインとは何だったのか
昔の東京証券取引所では、立会場と呼ばれる場所で多くの証券会社の担当者が集まり、株式の売買を行っていました。場立ちは注文を受けると、手や指の動きを使って周囲の担当者へ情報を伝えていました。
手サインでは、単純に「買い」「売り」を表すだけではなく、数量や価格、銘柄なども組み合わせて表現していました。大きな声で叫ぶだけでは聞き間違いが起こるため、視覚的に伝わる方法として利用されていました。
現在のネット取引では考えられないほど人間同士の連携が重要な取引方法であり、場立ちには高い記憶力や判断力が求められていました。
銘柄ごとの手サインはどのように決められていたのか
銘柄を表す手サインは、会社名や社名の特徴、業種、企業イメージなどから連想できる動きを使って作られることが多くありました。
例えば、日産自動車の場合は質問にもあるように、数字の「2」と「3」を指で示した後、ハンドルを握るような仕草をすることで自動車メーカーであることを表現していました。
このように、誰が見ても連想しやすい動きを採用することで、騒がしい立会場でも瞬時に銘柄を判断できるよう工夫されていました。
JALやANAなど航空会社の手サイン
航空会社の銘柄では、飛行機や空をイメージできる動きが使われることがありました。航空会社の場合、社名そのものよりも業種を表すジェスチャーが重視されました。
例えば、飛行機の翼や飛行する動きを連想させるような仕草を使うことで、「航空関連の銘柄」であることを伝える考え方です。
ただし、手サインは全国で完全に統一された公式一覧が存在するものではなく、証券会社や場立ちの間で慣習的に使われていたものも多くあります。そのため、細かな表現には違いがありました。
鉄道会社の手サインはどう表現されていたのか
鉄道会社の場合は、電車や線路、駅などをイメージした動きが使われることが多くありました。鉄道という業種は視覚的に表現しやすいため、比較的覚えやすいサインが作られていました。
例えば、電車の車輪や走行をイメージする動き、駅員や鉄道関連の動作を連想させる仕草など、会社や業種の特徴を利用した表現が使われました。
東武鉄道、近鉄、名鉄、西武鉄道などの大手私鉄も、場立ちの間ではそれぞれ識別できるようなサインが存在していました。
銀行・製薬会社・建設会社などのサインの考え方
銀行や製薬会社、建設会社なども、それぞれの業界を連想できる動きが使われました。
銀行の場合はお金や金融をイメージする動き、製薬会社の場合は薬や医療に関連する仕草、建設会社の場合は建物を作る動きを表すなど、業種の特徴を取り入れることで識別していました。
特に上場企業が多い業界では、似た名前の会社を間違えないように、場立ち同士で長年使われる独自の表現が発展していきました。
なぜ手サインは消えてしまったのか
手サインによる取引は長い間、証券市場を支える重要な仕組みでしたが、コンピューターによる注文処理が普及すると徐々に姿を消しました。
電子取引では注文速度や正確性が向上し、大量の取引を効率的に処理できます。そのため、1990年代以降、世界的に立会場での取引は縮小していきました。
東京証券取引所でも立会場での取引は終了し、現在ではほぼすべての売買が電子システムによって行われています。
昔の手サインが今も注目される理由
手サインは単なる取引方法ではなく、証券市場の歴史を象徴する文化でもあります。短時間で大量の情報を人間同士が伝達する仕組みは、現在のデジタル取引とは違った職人技の世界でした。
当時の場立ちは、銘柄ごとのサインを数多く覚え、瞬時に判断する必要がありました。その技術や経験は、現在の金融システムでは見ることのできない貴重なものです。
昔の東証の手サインを知ることで、日本の株式市場がどのように発展してきたのかを理解するきっかけになります。
まとめ
昔の東京証券取引所では、場立ちが手や指の動きで銘柄や注文内容を伝える手サインが使われていました。
JALやANAなどの航空会社、東武鉄道や近鉄などの鉄道会社、銀行や製薬会社なども、それぞれの特徴を連想できる仕草によって区別されていました。
現在では電子取引に置き換わりましたが、手サインは日本の株式市場を支えた独自の文化として、今でも多くの人に興味を持たれている仕組みです。
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