NTT株はIOWNで1000円・1万円になる?169円台の株価が「安い」とは限らない理由とNISAで買う前の判断材料

株式

NTT(証券コード9432)は1株あたりの株価が100円台で、100株単位でも比較的少額から購入できるため、NISAで個別株投資を始めたい人からも注目されやすい銘柄です。さらにNTTが推進する次世代通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」は、AIやデータセンターの電力消費、通信遅延といった課題への対応が期待されており、将来の成長材料として関心を集めています。

ただし、「1株169円だから安い」「IOWNが成功すれば1000円や1万円になる」と株価だけを見て判断するのは注意が必要です。株式投資では1株の値段ではなく、発行済株式数を掛け合わせた時価総額、利益、キャッシュフロー、配当、成長率などを合わせて評価する必要があります。

この記事ではNTT株を例に、少額で買えることと割安であることの違い、IOWNの可能性、NVIDIAとの関係、株価1000円・1万円を考える際に必要となる時価総額の視点まで整理します。

NTT株が169.5円なら100株の購入額は約1万6950円

最初に計算を確認しておくと、1株169.5円の株を100株購入する場合、必要な株式代金は169.5円×100株=16,950円です。169,150円ではありません。実際、2026年8月26日のNTT株は169円台で取引されており、単元株数は100株なので最低購入代金は約1万7000円前後です。

NTT株がこのように少額から買える大きな理由の一つが、2023年に実施された1株を25株にする株式分割です。株式分割では会社全体の価値が突然25分の1になるのではなく、株数を増やす代わりに1株あたりの価値が細分化されます。

例えば250万円の価値があるものを25個に分割したからといって、全体が10万円になるわけではありません。それと同じで、「1株の値段が安い=会社そのものが割安」という意味ではない点が個別株を見るうえで非常に重要です。

株価ではなく「時価総額」を見るとNTTの大きさが分かる

企業の株式市場における規模を見る代表的な指標が時価総額です。計算方法は「株価×発行済株式数」です。2026年8月26日時点でNTTの発行済株式数は約905億株あり、株価169円台では時価総額がおよそ15兆円規模になります。

つまりNTTは、1株が100円台だから小さな会社なのではなく、日本を代表する巨大企業の一つです。株式分割によって1株を細かくした結果として、少ない資金でも100株を購入しやすくなっています。

投資判断では「100株が約1万7000円だから安い」と考えるのではなく、「約15兆円の企業価値に対して、今後どの程度利益が増える可能性があるのか」と考えるほうが本質的です。

NTT株が1000円になったら時価総額はいくらになる?

IOWNへの期待から「NTT株が1000円になる可能性はないのか」と考える場合には、株価ではなく時価総額へ置き換えると規模感を理解しやすくなります。

発行済株式数を約905億株のままと仮定すると、株価1000円では単純計算で時価総額約90.5兆円です。169円台から1000円なら株価は約5.9倍になります。

もちろん企業が成長して株価が数倍になること自体は株式市場では起こり得ます。しかし、すでに15兆円規模のNTTが90兆円規模まで評価されるには、IOWNなどの技術が期待されるだけではなく、利益やキャッシュフローの大幅な拡大を市場が見込むだけの事業成果が必要になります。

ではNTT株が1万円になった場合は?

さらに1株1万円を同じ発行済株式数で計算すると、時価総額は約905兆円になります。現在の株価169.5円から見れば約59倍です。

将来の株価を絶対に不可能と断定することはできません。自社株買いによって発行済株式数が減ったり、将来さらに株式分割・株式併合が行われたりすれば、単純比較できなくなるためです。しかし現在の株式数を前提として「1万円」を考えるなら、世界でも例外的に巨大な企業価値が必要になります。

目標株価を考えるときは「1000円という数字が夢がある」ではなく、「その株価なら時価総額はいくらになり、その企業価値を正当化できる利益はいくら必要か」と逆算することが大切です。

IOWNとは何か?なぜデータセンターと相性が良いのか

IOWNはNTTが2019年に提唱した次世代の情報通信基盤構想です。その中核技術の一つが、ネットワークから端末内部まで光技術を活用する「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」です。大容量、低遅延、低消費電力な通信環境の実現を目指しています。

AIの普及によってデータセンターではGPUなど大量の計算資源が使われ、通信量と消費電力の増加が大きな課題になっています。そこで遠隔地のGPUやデータセンターを高速・低遅延な光ネットワークで接続できれば、計算資源を効率的に配置・利用できる可能性があります。

NTTは実際にIOWN APNを利用したAI処理の実証を進めており、2024年にはRed Hat、NVIDIA、富士通との協力による郊外型データセンターを利用したAI分析技術を発表しました。従来方式と比較して一定条件下でAI分析の遅延時間を最大60%削減したとしています。[参照:NTT・IOWNを用いた省電力リアルタイムAI分析技術]

NVIDIAが関係していることはIOWNの大きな材料なのか

NVIDIAとNTTがIOWN関連の取り組みで協力している事実はあります。例えばNTTはRed Hat、NVIDIA、富士通とIOWN技術を使ったAI分析基盤を開発しています。また、NVIDIA製GPUを遠隔地からIOWN APN経由で利用する実証なども進められています。

これはAI時代のネットワーク需要を考えるうえで興味深い材料です。GPUが高速化しても、GPU間やデータセンター間の通信、電力消費がボトルネックになればシステム全体の効率が落ちます。光ネットワークを使ってそこを改善するというIOWNの方向性には合理性があります。

しかし、「NVIDIAと一緒に実証している=NVIDIAの成長利益がそのままNTTへ入る」という意味ではありません。技術協力や実証実験と、NTTの売上・営業利益に大きな金額が計上される商用事業とは分けて考える必要があります。

IOWNが成功しても株価が必ず暴騰するとは限らない

株価で重要なのは、「良い技術かどうか」だけではなく、その期待がすでにどの程度株価へ織り込まれているかです。非常に優れた技術でも、実用化まで時間がかかったり、競合技術が登場したり、売上に対して利益率が低かったりすれば株主利益への寄与は限定されます。

IOWNについて見る場合には、技術実証のニュースだけでなく、APNの契約数、関連サービスの売上、設備投資額、利益率、海外展開、データセンターやAI事業との相乗効果などを継続的に確認する必要があります。

例えばIOWN関連事業で年間1000億円の売上が発生しても、NTTほど巨大な企業では全社業績に与える影響を確認しなければ株価へのインパクトを評価できません。「すごい技術」と「株価を何倍にもする利益」は必ずしも同じではないわけです。

NTTの現在の本業と業績も無視できない

NTTへの投資をIOWNだけで判断すると、企業全体を見落とします。NTTグループには携帯通信、固定通信、法人向けIT、データセンター、海外ITサービスなど巨大な既存事業があります。

2026年度第1四半期は、営業収益が前年同期比10.9%増の3兆6177億円、営業利益が4.9%増の4251億円、当社帰属四半期利益が5.8%増の2748億円となりました。一方、会社の通期計画では当社帰属当期利益9800億円と前年度比減益を見込んでいます。[参照:NTT・2026年度IR情報]

したがってNTT株を見るなら、IOWNの将来性だけでなく、通信料金競争、人件費・設備投資、NTT DATAを含む海外事業、金利、株主還元なども合わせて判断する必要があります。

配当目的でNTT株を見る考え方もある

NTTは将来技術だけを期待して投資する銘柄ではなく、配当を含めた株主還元という観点でも見られる企業です。2027年3月期の会社予想では1株あたり年間配当5.40円が示されており、169円台の株価を前提にすると予想配当利回りはおおむね3%台です。

仮に100株を169.5円で買えば投資額は16,950円で、年間配当が1株5.40円なら税引前540円という計算になります。NISAの成長投資枠で要件を満たして保有する場合、制度上は配当や売却益を非課税にできるメリットがありますが、配当の受取方法など条件にも注意が必要です。

ただし配当は保証されたものではありません。会社の業績や経営判断によって増配・据え置き・減配になる可能性があります。配当目的でも元本である株価が下落するリスクは残ります。

NISAならNTT株を買っても安全というわけではない

NISAは投資商品そのものではなく、投資による一定の利益を非課税にする制度です。そのため、NISA口座でNTTを購入しても株価が下落しなくなるわけではありません。

例えば169.5円で100株を購入して株価が130円になれば、評価額は16,950円から13,000円となり、約3,950円の含み損になります。NISAでもこの価格変動リスクは同じです。

さらにNISA口座で生じた損失は、課税口座の利益との損益通算などができません。そのため「NISAだからとりあえず買う」のではなく、自分がその会社を長期で保有したいかを先に考える必要があります。

NTT株を検討するときに見るべき5つのポイント

IOWNへの期待を投資判断につなげたい場合でも、次の項目を定期的に確認すると感情だけで売買しにくくなります。

確認項目 見る理由
利益・EPS 1株あたり利益が実際に成長しているか
PER・PBR 現在の株価にどの程度の期待が織り込まれているか
配当・自社株買い 利益が株主へどの程度還元されているか
IOWNの商用化 実証段階から売上・利益へ移行しているか
設備投資とキャッシュフロー 成長投資が将来の利益につながっているか

特にIOWNは長期構想であるため、「実証実験が成功した」というニュースと「利益が大幅に増えた」というニュースを区別して見ることが重要です。

100株だけ買う方法にも意味はある

個別株に興味はあるものの、将来予測には自信がないという場合、最初から大金を投入する必要はありません。NTTは100株でも2万円を下回る水準で購入できるため、小さな金額で企業分析を始めることができます。

実際に株主になると決算発表、配当、株主総会資料、IOWN関連のニュースなどを見る動機が生まれます。例えば100株を保有して1年間企業を観察し、自分の投資仮説が正しいかを確認してから追加投資を判断する考え方もあります。

一方で「安いから10000株買っておこう」という判断になると意味が変わります。169.5円でも10000株なら約169万5000円です。1株の価格が小さいことで投資額まで小さく感じてしまう錯覚には注意しましょう。

IOWNへの期待だけで集中投資しない

IOWNが将来大きな社会インフラとなる可能性に期待することと、NTT一社へ資産の大部分を投資することは別問題です。どれほど有望に見える技術でも、商用化の遅れ、競合技術、規制、設備投資負担など予想外のリスクがあります。

特にNISAで長期の資産形成を目的とする場合、全世界株式など幅広く分散された投資信託を中心にし、個別株は余裕資金の一部にする方法もあります。これはNTTが良い・悪いという話ではなく、一企業固有のリスクを資産全体へ及ぼしにくくするためです。

「IOWNが世界を変えると思う」という投資仮説を持つこと自体は問題ありません。ただし、その仮説が外れた場合でも家計や将来設計に大きな影響が出ない金額にすることがリスク管理になります。

まとめ|NTTのIOWNは有望な材料だが「169円だから安い」とは判断できない

NTT株が169.5円の場合、100株の購入額は約16,950円です。少額から購入できるのは確かですが、これは株式分割によって1株が細分化されている影響が大きく、株価が100円台だから企業価値まで安いという意味ではありません。

IOWNには、大容量・低遅延・低消費電力の通信基盤としてAIやデータセンター時代の課題を解決する可能性があります。NTTはNVIDIAなどとも実証を進めており、長期的に注目する価値のある事業テーマの一つです。しかし、技術的な成功がそのまま株価の数倍・数十倍上昇を保証するわけではありません。

現在の発行済株式数を単純に維持すると仮定すれば、株価1000円では時価総額約90兆円、1万円では約905兆円という規模になります。そのため1000円や1万円という目標を見るときには、IOWNへの期待だけではなく「その企業価値に見合う利益をNTTが将来生み出せるか」という視点が欠かせません。

NTTへの投資を検討するなら、IOWNの商用化状況に加えて、本業の利益成長、EPS、PER、配当、自社株買い、キャッシュフローなどを継続して確認するのが基本です。NISAは税制面では有利ですが株価下落を防ぐ制度ではないため、「少額で買える」と「割安である」を分けて判断することが重要です。

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