FX(外国為替証拠金取引)のニュースでは、ときどき数千万円、数億円という非常に大きな損失が報じられます。一般的な個人投資家からすると、「為替が1円や2円動くだけなのに、なぜそこまで大きな損失になるのか」と疑問に感じるかもしれません。
大きな理由は、FXでは預けた資金よりはるかに大きな金額を取引できるレバレッジという仕組みがあることです。国内の個人向けFXでは、取引額の4%以上の証拠金が必要で、最大レバレッジは25倍です。
ただし、「FXをすると普通に数億円なくなる」という意味ではありません。通常の個人が入金した数十万円や数百万円だけで、突然数億円を失うわけではありません。巨額の損失になるケースでは、大量の資金を何度も投入したり、高いレバレッジを使ったり、損失を取り戻そうとして取引規模を拡大したりすることが背景にある場合があります。
この記事では、FXでなぜ巨額の損失が発生し得るのか、国内FXの25倍レバレッジ、ロスカット、海外FXとの違い、そして数億円規模の損失がどのように積み上がるのかを具体例で解説します。
- 報道された銀行貸金庫事件ではFXだけで少なくとも10億円の損失と報じられた
- FXでは少ない証拠金で大きな金額を動かせる
- 100万円で25倍の取引をすると4%の逆行が非常に大きい
- 国内FXにはロスカットがあるので無限に損するわけではない
- ロスカットされても再入金すれば損失は積み上がる
- 具体例|1回500万円負けても繰り返せば数千万円になる
- 「負けを取り返そうとする」ことで取引額が大きくなることがある
- FXそのものとギャンブル的な取引方法は分けて考える必要がある
- レバレッジ1倍と25倍では同じ為替変動でも影響がまったく違う
- 海外FXでは国内より高いレバレッジを提供する業者もある
- なぜ為替の数%の変動で大損できるのか
- 週末や重大ニュースでは急激な値動きも起こる
- 追証や不足金が発生する可能性も理解しておく
- 数億円失うには通常、それだけ大きな資金を投入している
- 借金でFXをするとリスクがさらに大きくなる
- FXで大損を避けるにはレバレッジを最大まで使わない
- 1回の取引で失ってよい金額を先に決める
- 生活費や借入金をFXに投入しない
- FXと株式の現物投資では損失構造が違う
- 「FXで10億円負けた」は10億円の現金を一度に賭けたという意味ではない
- 巨額損失事件を一般のFX利用者へそのまま当てはめない
- まとめ|FXで数億円の損失はあり得るが、通常は巨額資金の投入と高リスク取引の積み重ね
報道された銀行貸金庫事件ではFXだけで少なくとも10億円の損失と報じられた
大きく報じられた事例の一つが、三菱UFJ銀行の元行員による貸金庫窃盗事件です。
2025年1月の報道では、元行員がFXや競馬で多額の損失を出し、その穴埋めなどのために顧客の貸金庫から資産を盗んだとみられていました。時事通信は捜査関係者への取材として、FX取引だけでも損失が少なくとも10億円に上ったと報じています。
また、元行員は利益を得ようとして海外のFX業者を利用していたという趣旨の供述をしていたとも報じられました。
その後、2025年10月には東京地裁が懲役9年の判決を言い渡し、裁判でも被告はFXや競馬の損失を穴埋めするために犯行を行ったと述べています。
FXでは少ない証拠金で大きな金額を動かせる
FXで損失が大きくなりやすい最大の理由がレバレッジです。
日本国内の個人向け店頭FXでは、取引金額に対して4%以上の証拠金を維持する必要があります。これは最大25倍のレバレッジに相当します。
例えば100万円を証拠金として預けた場合、理論上は最大2,500万円相当の通貨を取引できます。
通常の現物投資なら100万円を投資して価格が1%下落すると損失は約1万円です。しかし2,500万円分のポジションを持って1%不利に動けば、単純計算では約25万円の損失になります。
100万円で25倍の取引をすると4%の逆行が非常に大きい
レバレッジ25倍を単純化した例を考えてみます。
100万円を元手に2,500万円相当のポジションを保有していたとします。為替が予想と反対方向へ1%動けば約25万円、2%なら約50万円、4%なら約100万円の評価損に相当します。
| 相場の逆行幅 | 2,500万円のポジションでの単純な損失例 |
|---|---|
| 0.5% | 約12万5,000円 |
| 1% | 約25万円 |
| 2% | 約50万円 |
| 4% | 約100万円 |
実際には証拠金維持率が一定水準を下回れば、その前にロスカットが執行されるのが一般的です。そのためこの表は「そのまま4%まで耐えられる」という意味ではなく、レバレッジによって小さな価格変動でも損益が大きくなることを示した単純例です。
国内FXにはロスカットがあるので無限に損するわけではない
日本のFX業者には、個人投資家の損失拡大を防ぐためロスカットルールを設定・実行することが義務付けられています。
証拠金が一定水準まで減ると、保有しているポジションをFX会社が強制的に決済します。そのため通常は、口座資金がなくなるまで何も行われないわけではありません。
しかし、ロスカットは「必ず証拠金以内で損失が止まる制度」ではありません。
金融先物取引業協会は、相場が急激に変動した場合などにはロスカットの成立価格が想定水準を大きく超え、預けた証拠金以上の損失が発生する可能性もあると説明しています。
ロスカットされても再入金すれば損失は積み上がる
「ロスカットがあるなら10億円も失わないのでは」と思うかもしれません。ここで重要なのが、ロスカットは一回の取引を強制終了する仕組みであって、その人が二度と取引できなくなる仕組みではないことです。
例えば1,000万円を入金して大きな損失を出し、残高がほとんどなくなったとしても、さらに1,000万円を入金すれば再び取引できます。
その後また損失を出して追加で2,000万円、5,000万円と資金を投入すれば、累計損失はどんどん増えていきます。
つまり数億円規模の損失とは、必ずしも「一回の為替取引で数億円飛んだ」という意味ではありません。何年にもわたって資金を追加しながら取引を繰り返した結果として、累積損失が巨額になるケースがあります。
具体例|1回500万円負けても繰り返せば数千万円になる
例えばある人がFXへ1,000万円を入れ、相場を読み違えて500万円失ったとします。
そこで取引を終了すれば損失は500万円です。しかし「取り返したい」と考えて追加で500万円を入金し、再び500万円失えば累計損失は1,000万円になります。
これを何度も繰り返し、さらに取引金額まで大きくしていけば、累計損失が5,000万円、1億円と膨らむ可能性があります。
巨額損失を理解するときには、「最大レバレッジは何倍か」だけではなく、投入した資金の総額と取引を繰り返した期間を見る必要があります。
「負けを取り返そうとする」ことで取引額が大きくなることがある
FXに限らず、投機やギャンブルでは損失が出た後に「次で取り返したい」と考えることがあります。
例えば10万円負けた後、同じ1万円単位の取引では取り返すのに時間がかかると感じ、次は20万円、50万円と取引額を大きくするケースです。
うまくいけば短期間で損失を取り戻せますが、さらに逆方向へ動けば損失も急激に増えます。その結果、損失を取り返すために取引規模を拡大し、さらに大きく負ける循環に入ることがあります。
これはFX固有の問題というより、損失を追いかける投機行動全般にあるリスクです。
FXそのものとギャンブル的な取引方法は分けて考える必要がある
FXは外国為替市場を利用する金融商品であり、仕組みそのものが競馬やカジノと同一というわけではありません。
例えば企業が将来受け取る外貨の為替変動を抑えるために為替取引を使う場合もあります。また個人でも、低いレバレッジで損失許容額を決めて取引することは可能です。
一方、資産の大部分を投入し、最大レバレッジで短期売買を繰り返し、損失が出るたびに追加資金を投入するような取引をすれば、極めて投機性が高くなります。
したがって「FXだから必ず破産する」のではなく、どの程度のレバレッジと資金管理で取引するかによってリスクが大幅に変わります。
レバレッジ1倍と25倍では同じ為替変動でも影響がまったく違う
例えば100万円を使い、ドル円が1%動いた場合を考えます。
| レバレッジ | 取引金額の単純例 | 1%逆行した場合の損失例 |
|---|---|---|
| 1倍 | 100万円 | 約1万円 |
| 2倍 | 200万円 | 約2万円 |
| 5倍 | 500万円 | 約5万円 |
| 10倍 | 1,000万円 | 約10万円 |
| 25倍 | 2,500万円 | 約25万円 |
同じ100万円を用意していても、取引規模が大きくなれば損益の振れ幅も比例して大きくなります。
レバレッジは利益を25倍にする魔法ではなく、利益と損失の両方を大きくする仕組みです。
海外FXでは国内より高いレバレッジを提供する業者もある
国内の個人向けFXは最大25倍に規制されていますが、海外の事業者の中には国内規制よりはるかに高いレバレッジを表示している業者もあります。
100倍、500倍、1,000倍などをうたう海外業者も存在しますが、日本の金融商品取引法に基づく登録を受けず、日本居住者へ勧誘を行っている事業者について金融庁は注意を呼びかけています。
高レバレッジでは少額の証拠金から非常に大きなポジションを取れる反面、わずかな相場変動でも資金の大部分を失う可能性があります。
また海外業者の場合、業者とのトラブル、出金拒否、国内の投資者保護制度の対象にならない可能性など、価格変動以外のリスクも考慮する必要があります。
[参照] 金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」
なぜ為替の数%の変動で大損できるのか
主要通貨の為替レートは、株式のように1日で半値になることは通常ありません。そのため一見すると安全そうに感じます。
しかしFXでは、その比較的小さな値動きをレバレッジによって拡大しています。
例えばドル円が150円から147円へ動けば2%の変動です。現金でドルを100万円分持っていれば、単純な評価損は約2万円です。
ところが同じ100万円を証拠金として25倍、つまり2,500万円相当を取引していれば、同じ2%の変動による損失は単純計算で約50万円になります。
「為替は2%しか動いていない」のに、「自己資金に対して50%近い損失」という現象が起こり得るのがレバレッジ取引です。
週末や重大ニュースでは急激な値動きも起こる
FXのリスクは通常の値動きだけではありません。
中央銀行の政策変更、金融危機、戦争、大規模な政治イベントなどによって為替相場が短時間で急変する場合があります。
また市場が休んでいる週末に重大事件が発生すると、月曜日の開始価格が金曜日の終値から大きく離れる「窓開け」が起こることがあります。
こうした場面では希望した価格で決済できず、ロスカット水準を超えた価格で取引が成立する場合があります。そのため金融先物取引業協会も、ロスカットがあっても証拠金以上の損失が発生する可能性を説明しています。
追証や不足金が発生する可能性も理解しておく
相場急変によって口座残高以上の損失が発生すると、FX会社に対して不足分を支払う必要が生じる場合があります。
例えば口座へ100万円預けていたのに、急変によって決済後の損失が120万円となれば、単純化すると20万円の不足が発生します。
もちろん通常はロスカットによって損失拡大を抑える仕組みがありますが、ロスカットが損失額そのものを保証する制度ではありません。
この点でも、FXは「入金した金額以上は絶対に失わない金融商品」とは言えません。
数億円失うには通常、それだけ大きな資金を投入している
ここは非常に重要です。
国内FXで100万円しか資金を持っていない一般的な個人が、通常の取引だけで累計10億円失うというのは現実的ではありません。
10億円規模の累計損失になるためには、大量の自己資金や借入金などを繰り返し投入する、大規模なポジションを継続的に保有する、高レバレッジ取引を繰り返すなど、何らかの形で巨額の資金が取引へ流れ込む必要があります。
そのため巨額損失事件を見て、「FX口座を作っただけで一瞬で10億円の借金になる」と理解するのも正確ではありません。
借金でFXをするとリスクがさらに大きくなる
自己資金だけで取引する場合、損失を出せば自分の資産が減ります。
しかし消費者金融やカードローンなどで借りたお金をFXへ投入すると、取引で損失を出した後にも借金が残ります。
例えば500万円借りてFXへ投入し、それをすべて失えば、金融資産はなくなっても500万円の返済義務は残ります。さらに「FXで取り返して返済しよう」と追加で借りれば負債は拡大します。
報道された三菱UFJ銀行元行員の事件でも、FXや競馬の損失と借金が背景にあったと報じられています。
FXで大損を避けるにはレバレッジを最大まで使わない
FXを利用する場合、制度上25倍まで可能だからといって常に25倍で取引する必要はありません。
証拠金100万円でも100万円相当しか取引しなければ実質レバレッジは約1倍です。200万円相当なら約2倍、500万円相当なら約5倍になります。
実効レバレッジを低くすれば、同じ為替変動でも口座資産への影響を小さくできます。
「最大25倍まで取引できる」と「25倍を使うのが適切」はまったく別の話です。
1回の取引で失ってよい金額を先に決める
大きな損失を防ぐには、相場予想より資金管理が重要です。
例えば投資可能資金が100万円なら、「1回の取引で失う上限は1万円」など、自分で損失許容額を決める方法があります。
予想が外れたときに損切りせず、「いつか戻る」とポジションを増やし続けると、相場がさらに逆行した場合の損失が急増します。
特に「負けた分を次の取引で取り戻す」という考えからポジションを大きくすることは、損失拡大につながりやすいため注意が必要です。
生活費や借入金をFXに投入しない
FXに限らず、投資に使う資金は当面使う予定のない余裕資金に限定するのが基本です。
家賃、生活費、税金、教育費、緊急用預金などをFXへ投入すると、相場が下落しただけで日常生活まで維持できなくなる可能性があります。
さらに借金をしてFXを行えば、「投資で損をした」という問題と「借金を返済できない」という二つの問題が同時に発生します。
金融庁もFXについて、証拠金以上の取引ができる一方、相場変動によって大きな損失が発生する可能性のある高リスク商品であることを理解するよう注意喚起しています。
FXと株式の現物投資では損失構造が違う
| 項目 | FX | 現物株式の一般例 |
|---|---|---|
| レバレッジ | 国内個人FXは最大25倍 | 現物取引は原則1倍 |
| 小さな値動きの影響 | 大きく増幅されることがある | 投資額に応じた値動き |
| ロスカット | あり | 通常なし |
| 証拠金を超える損失 | 急変時などに可能性あり | 借入なしの現物株なら通常は投資額が上限 |
| 取引時間 | 平日はほぼ24時間 | 取引所の取引時間が中心 |
株式にも信用取引などレバレッジを利用する方法があるため、「株なら安全」という意味ではありません。ただ、借入なしの現物株とFXでは損失の発生構造が異なります。
「FXで10億円負けた」は10億円の現金を一度に賭けたという意味ではない
ニュースの巨額損失を見る際には、「累計損失」という考え方が重要です。
例えば年間2億円の損失を5年間続ければ、累計10億円になります。
途中で一時的に利益を出したり、その利益を再投資したり、さらに外部から資金を追加したりすれば、実際に売買した総額はさらに巨大になる可能性があります。
そのため「10億円の損失」という数字だけから、一回の取引内容や一時点での証拠金額を推測することはできません。
巨額損失事件を一般のFX利用者へそのまま当てはめない
銀行員による貸金庫窃盗事件は極端な事例です。
この事件から分かるのは、FXにはレバレッジによって損失を大きくする性質があり、資金投入を繰り返せば累計損失が巨額になり得るということです。
一方、「FXを始めれば誰でも数億円負ける」「国内FXで数万円入れただけで数億円の負債になる」という理解は適切ではありません。
リスクの大きさは、自己資金、レバレッジ、ポジション量、損切り、追加資金、取引期間などによって大きく変わります。
まとめ|FXで数億円の損失はあり得るが、通常は巨額資金の投入と高リスク取引の積み重ね
FXで数億円、場合によっては10億円規模の損失が発生すること自体はあり得ます。実際、三菱UFJ銀行の貸金庫窃盗事件では、元行員がFXだけで少なくとも10億円の損失を出したと捜査関係者への取材をもとに報じられました。
FXで損失が大きくなりやすい最大の理由はレバレッジです。国内個人FXでは最大25倍まで取引できるため、100万円の証拠金で最大2,500万円相当のポジションを取ることができます。
この状態では為替がわずか1%逆方向へ動いただけでも、単純計算で約25万円の損失に相当します。為替相場そのものの値動きが小さく見えても、自己資金に対する損益率は非常に大きくなります。
ただし国内FXにはロスカット制度があるため、通常は証拠金が一定水準まで減れば強制決済されます。それでも急激な相場変動では想定した価格で決済できず、証拠金を上回る損失が発生する可能性があります。
さらに重要なのは、ロスカットされても追加資金を入れれば再び取引できるため、何度も損失を繰り返すと累計額は非常に大きくなり得るという点です。
したがって数億円規模の損失は、「100万円だけ入金した人が突然数億円負ける」という話ではなく、大量の資金を投入したり、借入金まで利用したり、高レバレッジの取引を長期間繰り返したりすることで生じるケースを考える必要があります。
FXそのものが必ず巨額損失を生むわけではありませんが、最大レバレッジでの取引、損失を取り返すための追加投資、借入金の投入などが重なると、通常の現物投資とは比較にならない速度で損失が膨らむ可能性があります。
利用するのであれば、「最大何倍まで取引できるか」よりも、実際のレバレッジを低く保つこと、1回の損失上限を決めること、生活費や借入金を投入しないことのほうが重要です。
[参照] 金融先物取引業協会「個人顧客を相手方とするFX取引に係る証拠金規制」
[参照] 時事通信「三菱UFJ元行員・海外FX利用と巨額損失」
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


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