日本の若者が貧しくなったと感じるのは投資をしないから?物価・賃金・資産形成から考える本当の理由

資産運用、投資信託、NISA

「日本の若い世代は以前よりお金に余裕がない」「若者が投資をしないから貧しくなっているのではないか」という議論があります。しかし、若者の経済状況を投資の有無だけで説明するのは適切ではありません。

資産形成の知識を身につけ、若いうちから長期的な投資を始めることには確かにメリットがあります。一方で、そもそも投資に回せる余剰資金を作れるかどうかは、賃金、物価、家賃、社会保険料、家族構成などにも左右されます。

「投資をしないから貧しい」というより、所得と生活費によって決まる日々の家計と、貯蓄・投資による資産形成を分けて考えることが重要です。

若者の生活が苦しく感じられる理由を投資だけで説明できない

投資をしている人としていない人では、長期間経過した後の金融資産に差が生じる可能性があります。しかし投資は、現在の給与そのものを増やす制度ではありません。毎月の給料から生活費を払った後に余剰資金がなければ、そもそも投資へ回せる金額も限られます。

近年は物価上昇も家計へ影響しています。総務省統計局によると、2025年度平均の全国消費者物価指数は総合で前年度比2.6%上昇しました。生鮮食品を除く総合は2.7%、生鮮食品とエネルギーを除く総合は3.0%上昇しています。[参照:総務省統計局 消費者物価指数]

例えば給与が増えていても、それ以上のペースで食費、日用品、家賃などの支出が増えれば生活に余裕が出たとは感じにくくなります。大切なのは名目上の給与額だけではなく、その収入で実際にどれだけの商品やサービスを購入できるかという購買力です。

「お金の勉強をしていない」は一部関係する

一方で金融知識が家計や将来の資産形成に影響することも事実です。お金の勉強とは株価を予想する技術だけではありません。家計管理、税金、社会保険、ローン、保険、金利、投資、詐欺対策など幅広い知識が含まれます。

例えば同じ月収25万円でも、毎月すべて使い切る人と、固定費を見直して毎月2万円を将来のために確保する人では、10年後の状況が変わります。投資以前に「収入-支出=余剰資金」を安定して作れる家計が資産形成の土台になります。

金融経済教育推進機構(J-FLEC)も、家計管理、生活設計、資産形成、金融トラブル防止などを金融経済教育のテーマとして扱っています。無料のオンライン講座も提供されています。[参照:J-FLEC]

若いうちから投資するメリットは「時間」にある

若い世代が資産形成で持っている大きな強みは、必ずしも収入の多さではなく運用できる期間の長さです。金融庁も資産形成の基本として長期・積立・分散投資を紹介しています。[参照:金融庁 資産形成の基本]

例えば毎月1万円を20年間積み立てれば元本だけで240万円、40年間なら480万円です。仮に運用による収益が加わればさらに増える可能性があります。長期間になるほど、運用で得た利益を再び運用する複利の効果も期待できます。

ただし投資をすれば必ずお金持ちになれるわけではありません。株式や投資信託などは価格が下落することがあり、元本割れする可能性があります。金融庁も預貯金より高いリターンが期待できる一方で元本割れのおそれがあると説明しています。

投資をしていないことと貧困は別問題

「投資していない人=お金の知識がない人」と考えるのも適切ではありません。近いうちに使う予定のお金や生活防衛資金については、値下がりする可能性のある金融商品より預貯金で確保することが合理的な場合があります。

例えば貯金が10万円しかなく毎月の生活費が20万円かかる人なら、手元資金をすべて株式へ投資することが優先とは限りません。病気、失業、家電の故障などが起きたときに現金が必要になるからです。

また奨学金やローンなどの負担、住居費、子育て費用などによって、同じ年齢・同じ年収でも投資できる余力は大きく異なります。投資額だけを比較して経済状況を評価することはできません。

若者と高齢者では「資産を作れた期間」が違う

世代間の資産額を比較するときには年齢そのものにも注意が必要です。20代と60代では、働いて貯蓄・投資できた期間が数十年違います。高齢者の金融資産が若者より多かったとしても、その差をすべて投資知識の違いと解釈することはできません。

J-FLECの「家計の金融行動に関する世論調査」では、単身世帯と二人以上世帯について年齢別・収入別などの金融資産データが公開されています。[参照:J-FLEC 家計の金融行動に関する世論調査2025年]

20代は社会人になって間もない人も多く、住宅購入前、結婚前などライフステージも異なります。若い人の資産額が高齢者より少ないという事実だけから「若者が貧しくなった」と結論付けることにも注意が必要です。

NISAは若者の資産形成に使えるが万能ではない

長期間使う予定のない余剰資金があるなら、NISAを利用した資産形成は選択肢の一つです。NISAでは対象となる株式・投資信託などから得られる利益を一定の制度枠内で非課税にできます。現在の制度では非課税保有期間が無期限となっています。[参照:金融庁 NISAを知る]

ただしNISA自体が利益を生み出す商品なのではありません。NISAは税制上の制度であり、その口座で何を購入するかによってリスクやリターンは変わります。

また「若いうちに投資しなければ損」と焦って、生活費や緊急時のお金まで投資する必要はありません。まず家計を黒字化し、必要な現金を確保し、そのうえで長期間使わないお金を投資へ回すという順番が現実的です。

資産形成では「収入を増やす・支出を整える・運用する」の3つを考える

若い世代がお金を増やす方法を投資だけに限定する必要はありません。家計改善を大きく分けると、収入を増やす、支出を整える、余剰資金を貯蓄・運用するという3方向があります。

20代や30代なら、資格取得や転職、技能習得などによって将来の給与が上がることもあります。毎月1万円の投資収益を追求するより、仕事のスキルを高めて月収を数万円増やせるなら、そのほうが家計へ大きく影響する場合もあります。

同時に通信費、保険、住居費、自動車など大きな固定費を適正化できれば、毎月の余剰資金が増えます。その余剰資金の一部を長期・積立・分散投資へ回すという組み合わせが、無理のない資産形成につながります。

「投資しないと貧乏になる」という考えにも注意

インフレが続く環境では、現金だけを長期間保有すると実質的な購買力が低下する可能性があります。その意味で株式や投資信託などを含め、資産をどのように保有するかを学ぶことには意味があります。

しかし「預金は悪、投資は正解」という二択ではありません。預金には価格変動が小さく、必要なときすぐ使いやすいという役割があります。一方、投資には資産成長を期待できる代わりに価格変動があります。

生活費や数年以内に必要なお金は安全性・流動性を重視し、長期間使わない資金について投資を検討するなど、目的によって使い分けることが重要です。

まとめ:若者の経済的な苦しさは「投資しないから」だけでは説明できない

日本の若い世代がお金に余裕を持ちにくいと感じられる背景には、物価、所得、住居費など複数の要因があります。「お金の勉強をせず投資しないから若者が貧しくなった」と一つの原因だけに結び付けるのは単純化しすぎです。

一方で、若いうちから家計管理、税金、社会保険、金利、投資について学ぶ価値は大きく、長期間使わない余剰資金について長期・積立・分散投資を検討することは将来の資産形成に役立つ可能性があります。

重要なのは「とにかく投資すること」ではなく、まず収支を把握して生活基盤を安定させ、必要な現金を確保し、収入を高める努力と支出の適正化を行ったうえで、余剰資金を自分のリスク許容度に合った方法で運用することです。若い世代にとって最大の資産形成上の武器の一つは、これから使える長い時間だと考えられます。

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