オルカンはなぜ中国・韓国の比率が低い?GDPではなく時価総額で決まるMSCI ACWIの仕組みを解説

株式

「オルカン」と呼ばれる全世界株式型の投資信託を見ると、世界第2位の経済規模を持つ中国の比率が意外に小さく、韓国についても「もっと多くてもよいのでは」と感じることがあります。

その理由は、オルカンの国別比率がGDP(国内総生産)の大きさで決まっているわけではないからです。代表的な「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」はMSCI ACWIという株価指数への連動を目指しており、基本的には世界の上場企業を「投資可能な浮動株調整後時価総額」で評価します。

そのため、中国経済が巨大でも、国有企業の比率、外国人投資家が実際に購入できる株式の割合、上場市場、株価水準などを反映すると、指数上の中国比率はGDPシェアよりかなり小さくなります。韓国についても同様で、「経済規模」ではなく「世界の投資可能な株式市場でどれほどの時価総額を占めるか」が重要です。

オルカンの国別比率はGDPで決まっているわけではない

まず理解しておきたいのは、「世界経済に占める国の割合」と「世界株式指数に占める国の割合」は別物だということです。

GDPは、その国の中で一定期間に生み出されたモノやサービスの付加価値を示す経済指標です。一方、株価指数で使われる時価総額は、上場企業の株価に株式数を掛けて計算される市場価値です。

例えばGDPが非常に大きい国でも、主要企業の多くが非上場だったり国有だったり、外国人が自由に購入できる株式が少なかったりすれば、世界株式指数に占める比率は小さくなります。反対に米国のように巨大企業の多くが株式市場へ上場し、世界中の投資家が取引できる国は比率が高くなりやすくなります。

オルカンが連動するMSCI ACWIとは?

「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、日本を含む先進国と新興国の株式へ幅広く投資し、MSCI ACWI(配当込み、円換算ベース)への連動を目指すインデックスファンドです。

MSCI ACWIは、米国、日本、英国、中国、台湾、韓国、インドなど世界の先進国・新興国を対象とする代表的な世界株指数です。MSCIの2026年4月30日時点の資料では、MSCI ACWIは2,500銘柄を超える企業で構成されています。[参照:MSCI ACWI Index Factsheet]

ただし各国へ「日本5%、中国15%」というように政策的に割り当てる指数ではありません。企業の市場価値が変化すれば、国別比率も自動的に変わっていきます。

重要なのは「浮動株調整後時価総額」

MSCIの指数では、単純な企業全体の時価総額だけではなく、投資家が市場で実際に取引できる株式を考慮した「浮動株調整後時価総額」が重要になります。

例えば時価総額10兆円の会社でも、政府や創業家などが大量の株式を保有し、市場で自由に流通する株式が30%しかない場合、世界株指数で10兆円すべてを同じように評価するわけではありません。

この仕組みによって、「国の経済規模は大きいが株式市場で自由に投資できる部分は小さい国」の指数比率は、GDPから想像するより低くなることがあります。

中国のGDPは巨大なのにオルカンで少ない最大の理由

中国は世界有数の経済大国ですが、中国経済全体がそのまま外国人投資家の投資対象になっているわけではありません。中国には巨大な国有企業が多く、未上場企業もあり、上場企業についても自由に市場で売買できる株式の割合や外国人投資家のアクセスには歴史的に制約がありました。

また中国本土には上海・深圳市場のA株が大量に存在しますが、MSCIはA株を世界指数へ一度に100%組み入れたわけではありません。外国人投資家がアクセスできる市場環境などを踏まえながら段階的に組み入れてきました。

その結果、中国のGDPが世界経済に占める割合と、MSCI ACWIで中国株が占める割合には大きな差があります。これは「MSCIが中国を嫌っているから」という単純な理由ではなく、指数が投資可能な株式市場を測っているためです。

中国企業がオルカンに入っていないわけではない

中国企業そのものがオルカンから排除されているわけではありません。MSCIの新興国指数では、中国は依然として非常に大きな構成国です。

2026年3月末のMSCI Emerging Markets関連資料では、新興国指数における中国の比率は約29%で、台湾と並ぶ大きな構成国となっています。また、Tencent、Alibaba、中国建設銀行、ICBC、BYDなど中国を代表する企業も指数に含まれています。[参照:MSCI Emerging Markets関連Factsheet]

しかしオルカンでは、新興国だけでなく米国、日本、欧州など世界中の株式と合算します。そのため「新興国の中では中国が大きい」のに、「全世界株式の中では数%程度に見える」ということが起こります。

米国が圧倒的に大きく見える理由

オルカンを見ると、米国だけで全体のかなり大きな比率を占めています。これは米国のGDPが世界の6~7割を占めているからではありません。

米国にはNVIDIA、Apple、Microsoft、Amazon、Alphabet、Metaなど、世界最大級の上場企業が集中しています。MSCI ACWIの2026年4月末時点の上位銘柄でも、台湾のTSMCを除けば大部分を米国企業が占めています。[参照:MSCI ACWI Index Factsheet]

つまりオルカンは「世界のGDPを買っている商品」ではなく、世界の上場株式市場を時価総額に近い比率で丸ごと買う商品と考えると理解しやすくなります。

GDP比率と株式市場比率が違う具体例

単純化して、A国のGDPが世界の20%、B国が世界の10%だったとします。しかしA国では巨大企業の多くが国有・非上場で、投資可能な上場株式が少なく、B国には世界的な上場企業が多数存在するとします。

この場合、株式指数ではA国5%、B国15%という逆転もあり得ます。

つまり「経済が大きい=株式市場も同じ割合で大きい」わけではありません。オルカンの国別構成を見るときには、この違いを押さえておく必要があります。

中国A株には「全部がそのまま入るわけではない」という事情もある

中国本土市場には非常に多くのA株企業があります。MSCIは中国A株をグローバル指数へ組み入れていますが、歴史的には「インクルージョン・ファクター」と呼ばれる考え方を使い、対象企業の時価総額をそのまま100%反映しない形で段階的に採用してきました。

これは外国人投資家の市場アクセス、資本移動、取引停止、市場制度などを考慮するためです。したがって中国の国内株式市場全体の大きさとMSCI ACWIでの中国比率は一致しません。

中国株だけに投資するMSCI China A Indexを見ると、中国工商銀行、中国農業銀行、招商銀行、長江電力、貴州茅台など多数の大型企業が存在しています。[参照:MSCI China A Index]

香港上場の中国企業も「中国」として扱われる

中国企業の株式は中国本土だけに上場しているわけではありません。TencentやAlibabaなど、香港市場を主要な取引市場とする巨大中国企業もあります。

MSCIでは企業の国籍分類について、単純に「どこの証券取引所へ上場しているか」だけで判断するわけではありません。その企業の所在地、事業、上場場所などMSCIの国分類基準によって決まります。

そのため「香港市場だから香港企業」「米国ADRだから米国企業」という単純な分類にはなりません。中国企業として世界株指数に組み入れられている銘柄もあります。

韓国が少なく見えるのも同じ理由

韓国も世界有数の経済国で、Samsung Electronics、SK hynix、Hyundai Motorなど世界的な企業があります。しかしオルカン全体にすると韓国の比率は数%規模にとどまります。

これも韓国のGDPが小さいからというより、世界株式市場全体と比較した浮動株調整後時価総額によって決まるためです。巨大企業が存在しても、世界には米国、日本、台湾、欧州、中国、インドなど多数の市場があります。

なおMSCIでは韓国を「新興国」に分類しています。この分類は「韓国経済が未発達」という意味ではありません。市場へのアクセス性、外国人投資家の取引環境、為替市場などを含むMSCI独自の市場分類基準によるものです。

韓国は「先進国株ファンド」に入らないことがある

MSCI基準では韓国が新興国に分類されているため、MSCI Worldなど「先進国株式だけ」を対象とする指数には韓国が含まれません。

一方、オルカンが連動を目指すMSCI ACWIは先進国と新興国の両方を対象にするため、韓国株も含まれます。Samsung ElectronicsなどはMSCI ACWIの構成銘柄です。

したがって「オルカンに韓国株がない」のではなく、全世界の株式時価総額と比べると比率が小さく見えるという理解が適切です。

中国・韓国・台湾は新興国部分で見ると存在感がかなり大きい

全世界株式では米国の巨大市場に隠れて小さく見えますが、新興国だけを取り出すと東アジアの存在感は非常に大きくなります。

MSCIの2026年3月末の新興国関連資料では、中国約29%、台湾約32%、インド約10%、韓国約6%という構成例が示されています。指数の種類によって数字は異なりますが、中国・台湾・韓国が新興国株市場で大きな位置を占めていることが分かります。[参照:MSCI Emerging Markets関連Factsheet]

オルカンでは、ここに米国・日本・カナダ・英国・フランス・ドイツなどをすべて加えるため、それぞれの国の割合が薄まります。

「企業数が少ない」と「投資比率が少ない」は別

オルカンについて「中国企業が少ない」と感じた場合は、企業数と投資金額の比率を分けて見る必要があります。

時価総額加重指数では、100社ある小規模企業より、1社の巨大企業の方が指数への影響が大きい場合があります。例えばNVIDIAのような世界最大級の企業は、1社だけでMSCI ACWIの数%を占めることがあります。

つまりオルカンは「各国から同じ数の会社を選ぶ商品」ではありません。世界全体の株式価値に合わせて保有するため、企業数も国別比率も均等にはなりません。

オルカンは国を均等に分散するファンドではない

「全世界株式」と聞くと、米国10%、日本10%、中国10%、韓国10%のように各国へ均等に分散するイメージを持つことがあります。しかし実際は全く違います。

オルカンの考え方は、世界の市場が付けている企業価値を基準に、その規模に応じて投資することです。そのため米国企業の市場価値が上昇すれば米国比率は自然に高くなり、中国株が大きく上昇すれば中国比率も上昇します。

「どの国が将来伸びるか」を運用会社が予想して比率を決めているわけではないことが、インデックス投資の重要な特徴です。

中国経済が今後伸びればオルカンの中国比率も増える?

必ず増えるとは限りません。中国のGDPが増えることと、中国上場企業の浮動株調整後時価総額が増えることは別だからです。

中国企業の利益や株価が世界平均以上に伸び、外国人が投資できる株式の範囲も拡大すれば、MSCI ACWIにおける中国比率が上がる可能性があります。反対にGDPが伸びても上場企業の株価が低迷すれば、比率が上がらないこともあります。

つまりオルカンでは経済成長率そのものより、最終的には投資可能な上場企業の市場価値が比率を動かします。

中国株をもっと多く持ちたいなら追加投資は必要?

「中国は将来もっと成長するから、オルカンの中国比率では少なすぎる」と考えるなら、中国株ファンドや新興国株ファンドを追加する方法自体はあります。

ただし、その時点でオルカンだけを保有する「世界の時価総額どおり」という考え方から離れ、自分の判断で中国を市場平均以上に保有するオーバーウェイトになります。

それが悪いわけではありませんが、「オルカンでは中国が少ないから不足分を補う」という必然性があるわけではありません。中国を多く持つことは、中国固有の政治・規制・地政学・為替・市場制度などのリスクも多く引き受けることを意味します。

NISAでオルカンを買う場合、中国比率を自分で調整する必要はある?

NISAでオルカンを長期積立する場合、世界株式市場全体への分散を目的としているのであれば、国別比率を自分で細かく調整し続ける必要は基本的にありません。

中国企業の市場価値が大きくなれば指数内の比率は自動的に増え、逆に小さくなれば減ります。新しい企業が指数採用条件を満たせば組み入れられ、条件を満たさなくなれば除外されます。

これは「どの国が次に伸びるか分からないので、市場全体を持つ」という全世界株式インデックスの考え方そのものです。

S&P500との違いを考えるとオルカンの仕組みが分かりやすい

S&P500は米国の大型株を中心とした指数なので、中国企業や韓国企業は基本的に対象ではありません。一方、オルカンは先進国と新興国を含む世界株式へ投資します。

そのためオルカンには中国、韓国、台湾、インドなども含まれています。ただし「世界の国を平等に持つ」のではなく、「世界市場で価値の大きな企業を多く持つ」設計です。

この違いを理解すると、オルカンの米国比率が高く、中国・韓国が少なく見える理由も自然に理解できます。

オルカンを見るときは国別GDPより3つの数字を見る

国別構成について疑問を持った場合は、GDPランキングだけではなく、次の3つを見ると理解しやすくなります。

指標 意味 オルカンへの影響
上場企業の時価総額 株式市場で企業がいくらと評価されているか 大きいほど基本的に比率が高まりやすい
浮動株比率 市場で投資可能な株式の割合 低ければ指数上の評価額も小さくなりやすい
外国人の投資可能性 市場アクセスや保有制限など 指数への組み入れ範囲に影響する

GDPは国全体の経済を測るには非常に重要ですが、株式投資の対象となる市場規模をそのまま表す数字ではありません。

まとめ|オルカンで中国・韓国が少ないのは「経済規模」ではなく「投資可能な株式時価総額」で配分するから

オルカンで中国や韓国の比率がGDPの大きさに比べて低く見える最大の理由は、MSCI ACWIがGDP加重ではなく、基本的に投資可能な浮動株調整後時価総額を基準として構成されているからです。

中国は世界有数のGDPを持っていますが、中国経済には国有企業・非上場企業が大きな割合を占め、外国人が自由に投資できる株式の範囲にも歴史的な制約があります。中国本土A株についても、世界指数への組み入れは市場アクセス等を考慮しながら進められてきました。そのためGDP比率とオルカンの中国比率は一致しません。

韓国についても同様で、Samsung Electronicsなど巨大企業は含まれていますが、世界の投資可能株式市場全体で比較すれば米国などより時価総額が小さいため、オルカン全体では数%規模になります。またMSCIでは韓国を新興国市場に分類していますが、オルカンは先進国・新興国の両方を含むため韓国株も投資対象です。

一方で、新興国だけを見ると中国・台湾・韓国の存在感はかなり大きくなります。MSCIの新興国関連資料でも、中国は約3割を占める大きな市場です。[参照:MSCI Emerging Markets関連Factsheet]

つまり、オルカンの中国比率が小さいから「中国をほとんど無視している」ということではありません。中国も韓国も含めたうえで、世界の株式市場が現在付けている価値に近い割合で保有しているのがオルカンの基本的な仕組みです。NISAでオルカンを選ぶ際も、GDPランキングではなく「世界の投資可能な上場株式市場へ時価総額ベースで分散する商品」と理解すると、その国別構成を判断しやすくなります。

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