「自分がお店でお金を使い、そのお店が受け取ったお金を別の支払いに使い、さらに受け取った人がお金を使う」。このようにお金が次々と経済の中を動くイメージは、景気の仕組みを理解するうえでかなり重要です。
ただし、単にお金が人から人へ移動していること自体を「景気が良い」と定義するわけではありません。消費や投資が活発になり、それが企業の売上や所得、雇用などにつながって経済活動全体が拡大している状態を考える必要があります。
そこで、お金の循環と景気にはどのような関係があるのか、身近な買い物を例に整理してみましょう。
「お金が回る」というイメージは景気を理解する第一歩
例えば、ある人が飲食店で3,000円の食事をしたとします。客にとっては3,000円の支出ですが、飲食店にとっては売上になります。飲食店はその売上などから食材代、家賃、電気代、従業員の給与などを支払います。
給与を受け取った従業員がスーパーで食品を購入すれば、今度はスーパーの売上になります。スーパーも商品の仕入れや従業員の給与などを支払います。このように、誰かの支出が別の誰かの所得や売上になるというつながりがあります。
そのため「多くの人がお金を使い、それを受け取った人や企業がさらに経済活動を行う」という考え方は、景気の一面をうまく捉えています。
景気が良いとは単に現金が移動することではない
注意したいのは、お金が移動すれば何でも景気が良くなるわけではないことです。例えば自分の銀行口座Aから自分の銀行口座Bへ100万円を移しても、それだけで新しい商品やサービスが生産されたわけではありません。
また、友人へ一時的にお金を貸した場合にも資金は移動しますが、それだけを見て景気が良くなったとは判断できません。景気を見るうえでは、商品・サービスの生産、消費、設備投資、雇用、所得などの経済活動を見る必要があります。
内閣府も景気動向を判断するため、生産、雇用など幅広い経済活動を示す指標を組み合わせた景気動向指数を公表しています。[参照:内閣府 景気動向指数]
GDPで見ると「買う側」と「売る側」のつながりが分かりやすい
国全体の経済活動を測る代表的な指標がGDP(国内総生産)です。内閣府はGDPを含む国民経済計算を公表しています。[参照:内閣府 国民経済計算]
GDPを支出面から見る場合、家計の消費だけではなく、企業などの投資、政府支出、輸出入なども関係します。そのため「みんなが買い物をすること」だけが景気を決めるわけではありません。
一方で家計消費は経済の大きな構成要素です。例えば家電が売れれば販売店だけでなく、メーカー、物流会社、部品メーカーなどにも需要が波及します。需要が継続すれば企業が生産を増やし、設備投資や雇用を増やすこともあります。
100万円のお金が一度使われたら消えるわけではない
経済をイメージするときに面白いのが、支払ったお金は通常そこで消滅するわけではないという点です。例えばAさんが家具店へ10万円支払い、家具店がその収入などから従業員へ給与を払い、その従業員が別のお店で買い物をすれば、お金は経済主体の間を移動していきます。
ただし、同じ10万円が何回使われても、その取引額をすべて単純に足したものがそのままGDPになるわけではありません。GDPでは二重計算を避けるため、最終的な財・サービスや各生産段階で生み出された付加価値を捉えます。
例えばパン屋が小麦粉を仕入れてパンを販売する場合、小麦粉の取引と完成したパンの価格を無条件に全部足すと、生産活動を重複して数えてしまいます。この点は「お金が何回動いたか」と「どれだけ新しい価値が生み出されたか」を区別するうえで重要です。
消費が増えると所得が増え、さらに消費につながることがある
景気が良くなる典型的な流れとして、消費や投資の増加が企業の売上を増やし、生産や雇用、賃金などを通じて所得へ波及し、その所得の一部がさらに消費されるという循環があります。
例えば地域の飲食店に客が増えれば、店がアルバイトを増やしたり、食材の仕入れ量を増やしたりするかもしれません。食材業者の売上が増えれば、そちらでも新しい支出や所得が発生します。
このように最初の需要増加が別の需要へ波及していく考え方は、経済学では「乗数効果」と関連します。ただし受け取った所得がすべて再び消費されるわけではなく、貯蓄や税、輸入品の購入などにも向かうため、単純な無限循環ではありません。
貯金すると景気が悪くなるのか?
「お金を使うほど景気に良い」のであれば、「貯金は悪いのか」と思うかもしれません。しかし、そう単純ではありません。家計にとって貯蓄は病気、失業、老後、大きな買い物などに備える重要な行動です。
さらに金融システム全体では、預金などによって集められた資金が企業や個人への融資などに活用されることがあります。企業が資金調達をして工場や店舗を作るなど、投資へつながる可能性もあります。
問題になり得るのは、経済への不安などから多くの家計や企業が同時に支出を大幅に減らし、需要が弱くなる場合です。ある人にとって合理的な節約でも、社会全体で一斉に行われると企業の売上や所得が減り、さらに支出が減るという循環につながることがあります。
物価が上がるだけでは「景気が良い」とは限らない
お店の売上金額が増えていても、それだけで好景気とは判断できません。例えば商品の販売数量は変わらず、物価が20%上昇したため売上金額だけ20%増えているケースがあります。
家計の所得が物価上昇に追いつかなければ、実際に購入できる商品やサービスは減ってしまいます。そのため景気を考える際には名目上のお金の動きだけでなく、物価変動を考慮した実質的な生産・所得・消費を見ることも重要です。
実際の景気判断でも、GDPだけでなく個人消費、生産、雇用、賃金、物価、企業収益など多数のデータが使われます。「お金が回っている」という表現は分かりやすいものの、景気という複雑な現象を一つの数字だけで表しているわけではありません。
好景気のイメージは「支出→売上→所得→次の支出」
日常感覚で景気の良い状態を理解するなら、「支出→企業の売上→生産・雇用→所得→次の支出」という循環をイメージすると分かりやすいでしょう。
例えばAさんが旅行へ行くことで、ホテル、鉄道、飲食店などに売上が生まれます。それらの企業が従業員へ給与を払い、設備や商品を購入します。そこで所得を得た人や企業がさらに支出すれば、経済活動が別の場所へ広がっていきます。
逆に将来への不安から消費や設備投資が減ると、企業の売上が減少し、生産や採用を抑える可能性があります。所得が伸びなくなればさらに消費が弱くなるため、「お金が回らない」と表現される状態になりやすくなります。
まとめ:考え方はおおむね合っているが「お金の移動」だけが景気ではない
「自分が使ったお金が誰かの売上・所得になり、その人や企業がさらにお金を使うことで経済活動が続いていく」というイメージは、景気の仕組みを理解するうえでおおむね合っています。
ただし、単に同じお金が人から人へ移動することを「景気が良い」と定義するわけではありません。商品やサービスへの需要が増え、生産、企業収益、投資、雇用、所得などへ波及し、経済活動全体が活発になっているかを見る必要があります。
したがって、景気の良い状態を身近な言葉で表すなら、「お金が回っている」よりも「支出が誰かの売上や所得になり、その所得が次の需要につながる好循環が起きている」と考えると、より正確に理解できます。
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


コメント