投資をやるべき人は限られる?自己投資と資産運用はどちらを優先すべきかを合理的に考える

資産運用、投資信託、NISA

「投資は若いうちから老後資金を積み立てる人か、すでに大きな資産を持つ人がするもの。それ以外なら自己投資して本業の収入を増やしたほうが合理的」という考え方には、納得できる部分がある一方、その2種類だけに限定すると投資の役割を狭く捉えすぎる面があります。

そもそも金融投資と自己投資は、必ずしも二者択一ではありません。金融投資は現在持っている資金を将来へ配分する手段であり、自己投資は知識・技能・経験などを通じて将来の収入や選択肢を増やそうとする行為です。それぞれ役割が違います。

重要なのは「投資をするべき人・しない人」を職業や資産額だけで分類することではなく、生活防衛資金、投資期間、目的、リスク許容度、収入を増やせる余地を踏まえて、お金をどこへ配分するのが合理的か考えることです。

「長期積立する人」と「大資産を持つ人」は確かに投資と相性がいい

若いうちから長期間にわたり積立投資をする方法には、投資期間を長く確保できるという大きな特徴があります。金融庁も資産形成の基本として「長期・積立・分散投資」を紹介しており、価格変動と付き合いながら資産形成する考え方を示しています。[参照:金融庁 NISAを知る・資産形成の基本]

また、すでに大きな金融資産を持つ人ほど、同じ運用利回りでも金額として得られる利益が大きくなるのは事実です。仮に年3%で運用できた年を単純比較すると、100万円なら3万円、1億円なら300万円です。

ただし、これは「資産が少ない人には投資する意味がない」ということではありません。金融投資では元本が大きいほど利益額も大きくなりやすい一方、長い時間を使って元本そのものを積み上げていくことも資産形成だからです。

少額投資の目的は「投資だけで生活すること」とは限らない

投資を「運用益だけで生活できるか」という基準で評価すると、確かに少額投資は魅力が小さく見えます。しかし一般的な会社員や自営業者が資産運用を行う目的は、投資収益だけで生活することとは限りません。

例えば毎月3万円を長期間積み立てる人は、明日の生活費を投資で稼ごうとしているわけではありません。給与などの労働所得を得ながら、その一部を将来の住宅、教育、老後などに向けた資産へ変えていくことが目的になります。

また投資には元本割れの可能性があり、長期間保有すれば必ず利益が出るわけでもありません。そのため生活費や近いうちに使う予定のお金ではなく、当面使わない余裕資金を基本に考える必要があります。

「短期で大きく儲けたい」ほど博打的になりやすいのは事実

一方で、「資金が少ないから短期間で何倍にもしたい」という発想になると、リスクが急激に高くなりやすいという指摘は重要です。短期間で非常に大きな利益を狙うには、一般に大きな価格変動を受け入れる必要があるからです。

個別銘柄への極端な集中、信用取引によるレバレッジ、値動きの激しい資産への全額投資などを行えば、大きく利益を得られる可能性と同時に大きな損失を被る可能性も高まります。「元手100万円を早く1000万円にしたい」という目標と、「20~30年かけて資産形成したい」という目標では、同じ投資という言葉でも内容はまったく違います。

投資で短期間に人生を変えようとすると投機性が高まりやすく、投資を長期的な資産形成の補助として利用すると考えれば、必ずしも博打にする必要はありません。

若くて資産が少ないほど自己投資のリターンが大きい場合もある

資産形成を考える際、自己投資を重視する考え方には合理性があります。特に若く、金融資産がまだ少ない人の場合、運用利回りを数%改善することより、収入そのものを増やすほうが家計へ与える影響が大きい場合があります。

例えば100万円を運用して年間5%の利益が出たとしても5万円です。一方、仕事に直結する資格や技術の習得、転職のための教育などへ資金と時間を投入し、それによって年収が50万円上がれば、金銭的な効果は大きく異なります。もちろん自己投資にも成功保証はなく、資格を取得しただけで収入が増えるとは限りません。

さらに収入増加が長期間続けば、その増えた収入から金融投資へ回せる金額も増えます。その意味で、人的資本を高めることは資産形成の土台になり得ます。

金融投資と自己投資は「どちらか一方」にしなくてよい

実際には、自己投資か金融投資かを完全な二択にする必要はありません。両方へ資金を配分する方法があります。

例えば毎月5万円の余裕資金がある20代の会社員なら、3万円を資格取得や専門書、語学学習などへ使い、2万円を長期の積立投資へ回すという方法も考えられます。数年後に収入が増えれば、積立額を2万円から5万円へ増やすこともできます。

反対に、すでに専門性が高く収入も安定していて、追加の自己投資による収入増加がそれほど期待できない人なら、余裕資金を金融資産へ振り向ける割合を高める選択も合理的です。最適な配分は人生の段階によって変化します。

投資より先に優先したほうがよいお金もある

投資を始める前には、家計の土台を確認する必要があります。金融商品には値下がりする可能性があるため、数か月後に必要になる生活費まで株式などへ投入すると、価格が下落しているタイミングで売却せざるを得なくなる場合があります。

そのため、日常生活に必要な現預金や突然の失業・病気・大きな出費へ対応するための資金を確保したうえで、余裕資金から投資を検討するのが基本です。また高金利の借入がある場合には、投資より返済を優先するほうが合理的なケースもあります。

例えば年15%の金利がかかる借入を抱えながら、「株式で年5%程度増えればいい」と考えて投資するのは、家計全体では合理的とは限りません。確実に発生する高い利息を減らす効果と、不確実な投資収益を比較する必要があります。

NISAも「儲かる商品」ではなく投資のための制度

日本では長期的な資産形成の手段としてNISAが利用されていますが、NISAそのものが利益を保証する金融商品ではありません。NISAは一定の条件のもとで投資による利益が非課税になる制度です。[参照:金融庁 NISAについて]

NISA口座で投資信託や株式を購入しても、購入した商品の価格が下がれば損失が発生します。「NISAだから安全」なのではなく、何を買うか、どの程度の期間保有するか、どの程度分散するかが重要です。

一方で、長期の資産形成を目的として少額から投資を始めたい人にとっては、税制上のメリットを利用できる選択肢です。資産家でなければ利用する意味がない制度ではありません。

投資に向いているかは4つの質問で考える

投資をするか迷った場合、「自分は投資家タイプなのか」と考えるより、次のような条件を確認したほうが実用的です。

確認すること 考え方
生活防衛資金はあるか 急な出費でも投資資産を売らずに済むか
いつ使うお金か 長期間使わない資金ほど価格変動を受け入れやすい
値下がりに耐えられるか 含み損になっても生活や精神面へ重大な影響がないか
自己投資の余地は大きいか 技能・資格・転職などで収入を増やせる可能性を比較する

この4つを確認すると、「投資する・しない」の二択ではなく、「今は自己投資を多めにする」「月1万円だけ金融投資する」「生活防衛資金ができるまで投資しない」といった現実的な判断ができます。

資産が少ない時期ほど「入金力」を高める効果は大きい

資産形成の初期には、運用利回りだけでなく毎月いくら資産形成へ回せるか、いわゆる入金力が大きく影響します。100万円を年3%から年5%で運用できたとしても、単純計算による1年間の差は2万円です。

それに対して仕事の技能を高めて手取り収入を月3万円増やし、その3万円を年間積み立てられれば36万円になります。若い時期に「運用テクニックより本業の収入を伸ばしたほうが重要」という考え方には、こうした意味で合理性があります。

ただし、本業の収入を伸ばすことと金融投資を始めることは両立できます。収入を増やし、その増えたキャッシュフローの一部を長期投資へ回すという組み合わせは、資産形成の有力な考え方の一つです。

まとめ:自己投資か金融投資かではなく、目的に応じて組み合わせる

「若いうちから老後へ向けて積み立てる人」と「すでに大資産を持っている人」が投資と相性がよいという考えには一理あります。また、資産が少ない若い時期には、金融商品の利回りを追求するより自己投資によって本業の収入を増やすほうが大きな成果につながるケースもあります。

しかし、投資をする意味があるのはその2種類だけ、というわけではありません。普通の給与所得者でも、将来使う資金を長期的に形成する目的で、生活に支障のない余裕資金を分散投資するという使い方があります。それは「投資だけで生活する」ことを目的としたものではありません。

合理的なのは、生活防衛資金を確保し、高金利の借入などを整理したうえで、自分の人的資本を伸ばせる時期には自己投資を重視しつつ、長期間使わない余裕資金については金融投資も組み合わせることです。「自己投資か投資か」ではなく、「今の自分の1万円をどこへ配分すると将来の選択肢が最も増えるか」という視点で考えると、判断しやすくなります。

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