投資信託を選ぶときに耳にする「タコ足配当」。ネット証券で投資信託を購入すればタコ足配当を避けられるのか、銀行や対面型証券会社だけの問題なのかと疑問に思う人もいるでしょう。
結論からいうと、ネット証券だからタコ足配当がない、ということではありません。証券会社は投資信託を購入する窓口であり、分配金をいくら出すかは基本的に投資信託の運用会社がファンドの方針や状況に基づいて決定します。
また、投資信託で俗に「タコ足配当」と呼ばれるものを理解するには、「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」の違いを知ることが重要です。分配金が多いほど投資成績が良いとは限りません。
ネット証券でもタコ足配当と呼ばれる状態はあり得る
SBI証券や楽天証券などのネット証券で購入したからといって、投資信託の分配金の仕組みそのものが変わるわけではありません。同じ投資信託を複数の金融機関が販売している場合、どこで購入しても基本的には同じファンドへ投資することになります。
投資信託では、運用会社が信託財産から分配金を支払います。金融庁も、投資信託の分配金について「預貯金の利息とは異なり、投資信託の純資産から支払われる」と説明しています。分配金が支払われれば、その金額相当分だけ基準価額が下がる要因になります。[参照:金融庁 NISAを知る]
したがって「ネット証券なら安全」「対面証券ならタコ足になる」という区別ではなく、何という投資信託を買うのか、そのファンドがどのような分配方針なのかを見る必要があります。
そもそも「タコ足配当」とは何を意味する?
「タコ足配当」は投資の世界で使われる俗称です。タコが自分の足を食べるように、投資で十分な利益が出ていないのに元本を取り崩すような形でお金を払い出している状態を指して使われます。
投資信託では、分配金を受け取ったとき、その全額が運用によって得た利益とは限りません。投資家ごとの購入時の個別元本との関係によって、分配金の一部または全部が「元本払戻金(特別分配金)」になる場合があります。
元本払戻金は名前の通り、投資家の元本の一部が払い戻されたものとして扱われます。その部分は利益ではないため非課税となり、払い戻された分だけ個別元本も減額されます。
普通分配金と元本払戻金(特別分配金)の違い
投資信託の分配金を理解するうえで重要なのが、この2種類の区別です。
| 種類 | 基本的な意味 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 普通分配金 | 個別元本を上回る部分から支払われる分配金 | 原則として課税対象 |
| 元本払戻金(特別分配金) | 個別元本を下回る部分から支払われ、元本の払い戻しに相当 | 非課税 |
例えば100万円で購入した投資信託から毎月まとまった分配金が入ってくると、「毎月これだけ利益が出ている」と感じるかもしれません。しかし、その一部が元本払戻金なら、自分が投資した資金の一部を受け取っていることになります。
なお、特別分配金が発生したことだけを理由に、そのファンドを直ちに「悪い投資信託」と断定するのも適切ではありません。分配金の課税区分は投資家ごとの個別元本によって異なるためです。重要なのは分配金だけでなく、基準価額やトータルリターンを含めて評価することです。
証券会社と運用会社は役割が違う
「ネット証券ならタコ足配当がないのでは?」という疑問が生まれる理由には、証券会社と投資信託の運用会社が混同されやすいことがあります。
証券会社や銀行などは主に投資家へ投資信託を販売する「販売会社」です。一方、ファンドの運用方針を決めて実際の運用を指図するのは「運用会社(委託会社)」です。このほか投資家の資産を管理する信託銀行などが関わっています。
そのため、同じファンドをAネット証券で買った場合だけ分配金が健全になり、B証券で買った場合だけタコ足になる、という仕組みではありません。販売会社を比較するときは取扱商品、販売手数料、ポイント、サイトの使いやすさなどを確認し、分配方針についてはファンドそのものを確認する必要があります。
毎月分配型だから必ずタコ足とも限らない
毎月分配型の投資信託は分配頻度が高いため、タコ足配当の話題と一緒に語られることがあります。しかし「毎月分配型=必ず元本を取り崩している」という意味ではありません。
十分な収益などを背景に分配している場合もある一方、基準価額が下落している時期にも一定額の分配を続ければ、資産形成という観点では効率が悪くなることがあります。分配した資金はファンドの外へ出るため、そのお金は以後ファンド内で運用されません。
長期的な資産形成が目的なら、「毎月いくら受け取れるか」だけではなく、分配金を含めたトータルリターンを見ることが重要です。現役世代が資産を増やす段階では、分配を抑えてファンド内部で運用を続けるタイプも有力な選択肢になります。
高い分配金だけを見て投資信託を選ばない
例えば基準価額1万円のファンドから500円の分配金が出たとしても、「5%儲かった」と単純には判断できません。投資信託の分配金は信託財産から支払われるため、分配後の基準価額はその分だけ下落する要因となるからです。
投資信託を比較する場合は、分配金額だけでなく、基準価額の推移、分配実績、トータルリターン、信託報酬、投資対象、リスク、純資産総額などを確認します。運用報告書や交付目論見書を読むことも有効です。
特に「年間分配金÷現在の基準価額」で非常に高い数字が表示されている商品では、その数字を預金金利や株式の配当利回りと同じ感覚で比較しないことが大切です。元本の値下がりを含めた全体の損益を確認しなければ、本当の運用成果は分かりません。
NISAでも分配金の仕組み自体は変わらない
NISAを利用している場合にも注意が必要です。NISAは投資によって得られる利益を一定の条件のもと非課税にする制度であり、投資信託そのものの運用方法を変える制度ではありません。
また、NISAのつみたて投資枠について金融庁が定める対象商品の要件には、毎月分配型ではないことなどが含まれています。長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に対象を限定する仕組みです。[参照:金融庁 つみたて投資枠対象商品]
一方で、NISAだからすべての商品が無分配というわけではありません。利用する枠や商品によって異なるため、「NISAかどうか」と「どのような分配方針の商品か」は分けて確認する必要があります。
まとめ:ネット証券かどうかではなく投資信託そのものを確認する
ネット証券だからタコ足配当が存在しない、ということはありません。ネット証券は投資信託を購入する販売窓口の一つであり、分配方針は基本的に投資信託そのものに設定されています。
投資信託では、受け取った分配金がすべて投資利益とは限りません。投資家の個別元本との関係によっては、その一部または全部が元本払戻金(特別分配金)となる場合があります。ただし、特別分配金が発生したという一点だけでファンドの良し悪しを判断することもできません。
ネット証券・対面証券という販売チャネルだけで判断せず、交付目論見書や運用報告書で分配方針を確認し、分配金、基準価額、コスト、トータルリターンを合わせて評価することが重要です。資産形成が目的なら「いくら分配されたか」よりも「分配金を含めて資産全体がどれだけ増減したか」を見ると、投資成果を正しく把握しやすくなります。
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