養老保険で総額800万円を払い込み、17年後の満期時に1,060万8,000円を受け取れるとすると、単純な差額は260万8,000円です。一見すると「17年かけて260万円しか増えない」と感じるかもしれませんが、養老保険とNISAはそもそも性質が異なるため、受取額だけを比べて「NISAのほうが賢い」「養老保険は損」と結論付けることはできません。
特に重要なのが、800万円を最初に一括で支払う契約なのか、17年間かけて合計800万円を積み立てる契約なのかという違いです。この2つでは実質的な利回りが大きく変わります。また養老保険には死亡保障が含まれるため、純粋な資産運用商品と同じ物差しだけでは評価できません。
800万円が1,060万8,000円なら260万8,000円増える
まず数字を整理すると、払込保険料総額が800万円、満期時の受取額が1,060万8,000円なら、額面上の増加額は260万8,000円です。単純な返戻率を計算すると約132.6%になります。
計算は「1,060万8,000円÷800万円×100」で約132.6%です。つまり払い込んだ金額に対して約32.6%多く戻ってくる計算です。元本割れする設計でなければ、満期まで契約条件どおり継続した場合の受取額を見通しやすいことは養老保険の大きな特徴です。
ただし、返戻率132.6%だから年利32.6%という意味ではありません。17年間という時間をかけて増えるため、資産運用商品と比較するときには年率に直して考える必要があります。
「800万円をいつ払うか」で実質利回りは大きく違う
仮に契約開始時に800万円を一括で支払い、それが17年後に1,060万8,000円になると仮定すると、複利ベースの年率は約1.67%です。これは「800万円を17年間ずっと運用した」と考えた場合の概算です。
ところが、17年間の毎月払いで合計800万円を支払う契約なら事情がまったく違います。800万円÷204か月なら月々の平均支払額は約3万9,216円です。最初から800万円全額を運用しているわけではなく、後半に支払う保険料は運用される期間が短いためです。
仮に毎月同額を17年間支払い、最後に1,060万8,000円を受け取るという単純化した条件で内部収益率を計算すると、年率換算はおおむね3.2%程度になります。ただし実際の養老保険は死亡保障、保険関係費用、配当の有無、払込時期などが絡むため、これはあくまで比較のための概算です。
| 比較条件 | 概算 |
|---|---|
| 払込総額 | 800万円 |
| 17年後の受取額 | 1,060万8,000円 |
| 額面上の増加額 | 260万8,000円 |
| 返戻率 | 約132.6% |
| 800万円を最初に一括投入した場合の年率換算 | 約1.67% |
| 800万円を17年間均等に積み立てると仮定した場合 | 年率約3.2%相当の概算 |
このように「800万円払って1,060万円」という2つの数字だけでは、利回りが高いか低いかを正確に判断できません。保険証券や設計書に記載された払込期間、毎回の保険料、満期保険金、配当の扱いまで確認する必要があります。
養老保険とNISAはそもそも同じ商品ではない
養老保険は、一定期間の死亡保障と貯蓄機能を組み合わせた生命保険です。一般的には保険期間中に死亡した場合には死亡保険金、満期まで生存した場合には満期保険金を受け取ります。
一方、NISAは保険商品でも金融商品そのものでもなく、一定の投資から得られる利益を非課税にする制度です。NISA口座を使って投資信託や株式などを購入し、その値上がり益や配当・分配金について制度の範囲内で非課税のメリットを受けます。金融庁によると、現在のNISAは非課税保有期間が無期限で、年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、併用すると年間最大360万円です。非課税保有限度額は合計1,800万円です。[参照] 金融庁 NISAを知る
したがって比較すべきなのは「養老保険対NISA」というより、死亡保障を含む養老保険を継続する場合と、必要な保障を別途確保したうえでNISAを使って投資する場合の違いです。
NISAなら17年間でどれくらいになる可能性がある?
NISAで投資信託などを運用した場合、結果は投資対象と市場環境によって変わります。例えば800万円を最初から運用できたと仮定し、17年間ずっと年3%で複利運用できれば約1,323万円、年5%なら約1,834万円、年7%なら約2,527万円になります。
| 仮定する年平均リターン | 800万円を17年間運用した場合の概算 |
|---|---|
| 1.67% | 約1,061万円 |
| 3% | 約1,323万円 |
| 5% | 約1,834万円 |
| 7% | 約2,527万円 |
ただし、この表で最も重要なのは3%、5%、7%は保証された数字ではないという点です。株式や投資信託には価格変動があり、17年後に元本を下回る可能性もあります。NISAを利用したから利益が保証されるわけでもありません。
また実際に800万円を17年間積み立てるケースでは、800万円を初日に一括投資する計算とは結果が異なります。保険との比較をするなら、「同じタイミングで同じ金額を支払った場合」という条件にそろえてシミュレーションする必要があります。
NISAの強みは非課税と長期・積立・分散投資
NISAの大きなメリットは、制度の対象となる投資によって得られた利益が非課税になることです。さらに、つみたて投資枠では長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託などが対象になっています。[参照] 金融庁 つみたて投資枠対象商品
金融庁も資産形成の基本として長期・積立・分散投資を紹介しています。複数の地域や資産へ分散することで価格変動をある程度抑え、積立によって特定のタイミングだけで購入するリスクを軽減する考え方です。[参照] 金融庁 資産形成の基本
ただし、長期・積立・分散を行えば絶対に元本割れしないという意味ではありません。NISAでは市場価格が下落すれば評価額も下がります。満期時の金額が契約上決まっているタイプの養老保険とは、この確実性の違いが非常に大きなポイントです。
養老保険にはNISAにはない死亡保障がある
資産額だけを見ると、期待リターンの高い投資商品が魅力的に見えます。しかし養老保険の保険料には、単純な積立だけではなく死亡保障を提供するための機能も含まれています。
例えば契約後の比較的早い時期に被保険者が亡くなった場合、まだ積立額が少なくても契約内容に応じた死亡保険金が支払われます。自分で投資信託を積み立てるだけなら、基本的に残るのはその時点で保有している資産です。
そのため「養老保険の利回りが株式投資より低いから損」という比較だけでは不十分です。保障が必要なら、その保障を掛け捨て保険などで別途用意した場合の保険料まで含めて比較する必要があります。
途中解約してNISAへ変更する場合は「解約返戻金」を必ず確認
すでに養老保険へ加入している場合、最も注意したいのが途中解約です。満期時に1,060万8,000円受け取れる予定でも、現在解約したときに800万円がそのまま戻るとは限りません。
特に契約してからの期間が短い場合などは、解約返戻金が既払込保険料を下回る商品があります。つまり「NISAのほうが増えそうだから変更する」と考えて解約すると、最初に確定損を出した状態から投資を始めることになる可能性があります。
比較するときは保険会社に「今日解約した場合の解約返戻金」「今後支払う保険料の総額」「満期時の保証額」「配当を含まない最低保証額」「死亡保険金額」を確認すると判断しやすくなります。満期時の予想額だけでなく、現在から満期までに追加でいくら払う必要があるのかを見ることが重要です。
満期保険金には税金がかかる場合がある
養老保険の満期保険金は税金についても確認が必要です。国税庁によると、保険料を負担した本人が満期保険金を一時金として受け取る場合、原則として一時所得になります。[参照] 国税庁 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
他に一時所得がない一般的なケースでは、「満期保険金-支払保険料総額-特別控除50万円」で一時所得を計算し、その2分の1が課税対象となります。例えば単純に1,060万8,000円から800万円を差し引くと260万8,000円で、さらに50万円を差し引くと210万8,000円、その2分の1である105万4,000円が課税所得に加算される計算になります。
ただし、契約形態によって課税関係は変わります。保険料を負担した人と満期保険金を受け取る人が異なる場合には贈与税の対象となることがあります。また一定の一時払養老保険には別の課税方法が適用される場合があります。[参照] 国税庁 満期返戻金などの一時所得
「養老保険を全部やめてNISA」だけが選択肢ではない
資産形成では二者択一にする必要はありません。死亡保障や確実に確保したい資金を保険で持ち、それとは別に余裕資金をNISAで長期投資する方法もあります。
例えば17年後に必ず必要になる教育資金や生活資金について価格変動を極力避けたい人と、17年以上使う予定がなく途中で大きく値下がりしても保有を続けられる人では、適切な資産配分が違います。
「どちらの利益が大きそうか」ではなく、「いつ使うお金か」「元本割れをどこまで許容できるか」「死亡保障はいくら必要か」の3点から考えると判断しやすくなります。
比較するときに確認したい7項目
養老保険を継続するか、NISAを利用するか迷った場合には、少なくとも次の項目を同じ条件で比較しておくとよいでしょう。
- これまでに支払った保険料
- これから満期まで支払う保険料
- 現在解約した場合の解約返戻金
- 満期時に保証される金額と、配当などを含む予想額の違い
- 死亡保険金など保障内容
- NISAへ投資した場合に許容できる値下がり幅
- 17年後にその資金を必ず使うのか、運用期間を延ばせるのか
特に「1,060万8,000円」が保証された満期保険金なのか、配当などを含めたシミュレーション上の数字なのかは重要です。保険会社の設計書で「保証」「配当」「返戻率」などの記載を確認してください。
まとめ|800万円が1,060万8,000円だけではNISAへの変更を決められない
払込総額800万円に対して17年後に1,060万8,000円なら、額面では260万8,000円増え、返戻率は約132.6%です。800万円を最初に一括投入したと仮定すれば年率約1.67%に相当しますが、17年間積み立てて合計800万円を支払う契約なら実質的な利回りはこれより高くなります。
NISAではより高い運用成果を得られる可能性がありますが、元本や17年後の金額は保証されません。一方の養老保険には死亡保障と満期時の金額を見通しやすいという特徴があります。このため、単純に「NISAのほうが利回りが高そう」という理由だけで既存の養老保険を解約するのは慎重に考える必要があります。
すでに契約中なら、まず保険会社から現在の解約返戻金、今後の払込総額、満期時の保証額、死亡保障額を取り寄せるのが第一歩です。その数字を使って「継続した場合」と「解約返戻金をNISAへ回し、以後の保険料相当額も積み立てた場合」を同じ17年間で比較すれば、かなり判断しやすくなります。
※本記事の運用額は比較のための概算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。税務は契約者・保険料負担者・受取人や契約内容によって異なります。実際の解約・契約変更・投資判断は、保険証券や設計書、最新の税制を確認したうえで行ってください。
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


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