遺産2000万円をどう運用する?投資初心者がNISA・オルカンを使う前に決めたい現金比率と投資額

資産運用、投資信託、NISA

まとまった遺産を受け取ったとき、「せっかくなら運用したい」と考える人は多い一方、これまで投資経験がなければ、いきなり大きな金額を株式へ入れるのは慎重に考えたほうがよいでしょう。特に2000万円のうち200万円だけを現金で残し、残り1800万円を株式型の投資信託へ回す場合、資産全体の約90%を値動きのある資産へ置くことになります。

全世界株式型のインデックスファンド、いわゆる「オルカン」のような商品は、1本で世界中の株式へ広く分散できる点が魅力です。ただし、世界中に分散していても「株式100%」であることには変わりなく、相場環境によっては数十%下落することがあります。

遺産2000万円の運用では、まず「いくら増やしたいか」より「いつ使うお金か」「どこまで下がっても保有を続けられるか」を決め、その後にNISAと投資商品を選ぶことが重要です。

最初に確認したいのは「200万円だけ現金で本当に足りるか」

2000万円のうち200万円を残し、1800万円を投資に回す方法は、生活状況によってはかなり積極的な配分です。200万円が十分かどうかは、毎月の生活費、収入の安定性、住宅費、家族構成、今後予定している大きな支出によって変わります。

例えば毎月の生活費が25万円なら、200万円は約8か月分です。安定した給与収入があり、大きな支出予定もなければ一定の余裕がありますが、転職予定、住宅購入、車の買い替え、教育費などが近い場合には不足する可能性があります。

投資へ回す前に、生活防衛資金と5年程度以内に使う可能性があるお金を分けておくと判断しやすくなります。近いうちに使うお金まで株式投資へ入れると、必要になったタイミングで相場が下落している場合に損失を確定して売却しなければならないからです。

オルカンは分散されているが「安全資産」ではない

全世界株式型のインデックスファンドは、日本、米国、欧州、新興国など多数の国・地域の株式へ分散投資します。個別株を数銘柄だけ保有するより、一企業の不祥事や倒産による影響を受けにくいというメリットがあります。

一方で、世界的な金融危機や景気後退が起きれば、多くの国の株式が同時に下落することがあります。そのため「世界中に分散しているから元本割れしない」という商品ではありません。

例えば1800万円を株式100%で運用し、その後30%下落すると、単純計算では評価額が約1260万円となり、約540万円の含み損になります。40%下落なら約720万円の含み損です。こうした値動きがあっても売らずに保有できるかを、投資前に考えておく必要があります。

NISAなら1800万円を一度に投資できるわけではない

現在のNISAでは、成人の場合、年間投資枠はつみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合計360万円です。非課税保有限度額は取得価額ベースで合計1800万円となっています。

つまり、手元に1800万円あっても、NISAだけで一度に全額を投資することはできません。毎年360万円ずつ投資した場合、単純計算では最短5年で1800万円の非課税保有限度額に到達します。

年 年間投資額 累計投資額
1年目 360万円 360万円
2年目 360万円 720万円
3年目 360万円 1080万円
4年目 360万円 1440万円
5年目 360万円 1800万円

金融庁も、新NISAについて年間最大360万円、非課税保有限度額1800万円と案内しています。[参照:金融庁・NISA制度概要]

投資初心者なら最初から1800万円を株式にする必要はない

これまで投資経験がない場合、最初から資産の90%を株式へ移すより、値動きに慣れながら投資額を増やす方法も十分合理的です。

例えば1年目はNISAで120万円または360万円まで投資し、残りは預金や個人向け国債など比較的値動きの小さい資産として保有します。その状態で半年から1年ほど値動きを経験し、自分が下落にどの程度耐えられるかを確認します。

10%下落しただけで夜眠れなくなるなら、1800万円を株式へ入れる配分は合っていない可能性があります。逆に数百万円の含み損でも長期保有を続けられると判断できるなら、翌年以降に株式比率を高める方法があります。

2000万円の資産配分は複数パターンで考える

投資額に唯一の正解はありません。例えば2000万円を以下のように分ける考え方があります。

例 株式等 現金・低リスク資産 特徴
積極型 1600万円 400万円 長期運用でき、値下がり耐性が高い人向け
中間型 1200万円 800万円 成長と安定の両方を重視
慎重型 600万円 1400万円 投資初心者や近い将来支出予定がある人向け

ここでいう「低リスク資産」には普通預金、定期預金、個人向け国債などが考えられます。株式以外を持つことで、相場下落時にも生活資金を確保しやすくなります。

例えば1200万円を株式、800万円を現金等にしておけば、株式部分が30%下落しても資産全体では約18%の下落に抑えられます。株式100%より心理的に保有を続けやすい人も多いでしょう。

投資するなら「一括」と「分割」のどちらが良い?

まとまった資金がある場合、投資タイミングも重要な悩みになります。理論上、株式市場が長期的に上昇するなら早く市場へ投資したほうが運用期間を長くできます。

一方、投資初心者が大金を一括投資し、その直後に20%や30%下落すると、精神的な負担が大きくなります。そのため、NISAの年間枠を使いながら数年かけて投資すること自体が時間分散になります。

例えば年間360万円を12か月に分けて毎月30万円程度ずつ投資する方法もありますし、年初に一定額をまとめて投資する方法もあります。どちらが必ず正解というわけではなく、下落時にも続けられる方法を選ぶことが重要です。

オルカンを選ぶなら低コストかどうかを確認する

全世界株式型の投資信託を選ぶ場合、似た商品が複数あります。比較したいのは信託報酬などの保有コスト、連動対象となる指数、純資産総額、運用実績などです。

長期投資では、年間0.1%前後のコスト差でも保有期間が長くなるほど影響が積み重なります。そのため、同じような指数へ連動する商品なら、低コストで安定して運用されているものを優先する考え方があります。

また、名称に「全世界」と書いてあるだけで判断せず、どの指数へ連動し、米国株が何%程度含まれているのかなど基本的な中身も確認しましょう。全世界株式でも時価総額の大きい米国株の比率は高くなる傾向があります。

遺産だからこそ一度に使わず「目的別」に分ける

遺産は給与とは違い、一度に大きな金額が入ることがあります。そのため、受け取った直後に「使わないともったいない」と考えて急いで投資する必要はありません。

例えば2000万円を、生活防衛資金、近い将来使う資金、老後など長期資金の3つに分ける方法があります。長期資金だけをNISAで運用すれば、必要なお金まで相場変動へさらさずに済みます。

また、相続税や未払いの税金、相続手続きに関連する費用が残っていないかも確認しておくことが大切です。遺産分割が完全に終わっていない場合などは、投資に回す前に法律上・税務上の整理を優先します。

相続税がかかるかどうかも先に確認する

2000万円を相続したからといって、必ず相続税がかかるわけではありません。相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があります。

例えば法定相続人が2人なら基礎控除は4200万円です。ただし課税対象となるのは受け取った預金だけではなく、不動産、有価証券、生命保険金など一定の財産も含めた遺産総額で判断します。

相続税申告が必要か分からない場合は、投資を急ぐ前に税務署や税理士へ確認するのが安全です。[参照:国税庁・相続税の基礎控除]

NISA以外の選択肢も知っておく

長期投資用の資金が1800万円を超える場合でも、NISA以外の課税口座で投資することは可能です。ただし「投資は初めてなのでNISAだけ」と決めることも一つの方法です。

課税口座では利益や配当等に原則約20%の税金がかかりますが、NISAの年間枠を待つ間に資金を長期間現金で持つことによる機会損失もあります。そのため、投資経験やリスク許容度が高まった後に課税口座を使うか検討してもよいでしょう。

逆に投資を急ぐ必要がないのであれば、毎年NISA枠だけを使い、残りを預金や個人向け国債で待機させる方法は管理がシンプルです。

個人向け国債を組み合わせる方法もある

株式100%が不安な場合、現金の一部を個人向け国債へ置く方法があります。個人向け国債の「変動10年」は半年ごとに適用利率が見直され、最低金利も設定されています。

発行から1年経過すれば原則として中途換金でき、一定の調整額は差し引かれるものの元本割れを避けやすい商品です。株式ほど大きなリターンは期待できませんが、資産全体の値動きを抑える役割を持たせられます。

財務省が商品性や募集条件を公開しているため、預金以外の安全性を重視した選択肢として比較するとよいでしょう。[参照:財務省・個人向け国債]

避けたいのは「2000万円あるから一気に増やそう」という考え方

まとまったお金を受け取ると、高配当株、FX、信用取引、暗号資産など短期間で大きな利益を狙える商品に興味を持つことがあります。しかし、投資経験がない状態で大きな資金を高リスク商品へ移すと、大きな損失につながる可能性があります。

2000万円という元本があれば、無理に高いリターンを狙わなくても資産形成の選択肢はかなり広がります。例えば年率数%程度の長期的な運用でも、長い期間では複利効果が期待できます。

まとまった資産を守りながら育てる場合、「最大利益を狙う」より「大きな失敗を避けて長く続ける」ことのほうが重要です。

具体的な進め方の一例

投資初心者で2000万円を受け取った場合、次のような順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 相続税や相続手続きが完了しているか確認する
  2. 生活防衛資金を確保する
  3. 5年程度以内に使う予定のお金を現金等で分ける
  4. 残った長期資金から投資額を決める
  5. NISAの年間360万円枠を使って分散投資を始める
  6. 半年から1年ごとに資産配分を確認する

例えば現金600万円を確保し、1400万円を長期投資資金と設定する方法もあります。そのうち初年度はNISAで360万円だけ投資し、残りを安全資産で待機させながら投資経験を積むという進め方です。

翌年、値動きに耐えられると分かれば再び360万円を投資し、必要なら株式比率を増やします。この方法なら最初から2000万円近くを市場へ投入するより、心理的な失敗を抑えやすくなります。

まとめ|200万円だけ残して1800万円をオルカンに入れる前にリスク許容度を確認

遺産2000万円を受け取った場合、NISAでオルカンのような全世界株式型インデックスファンドへ投資する方法は、長期・分散投資という点では有力な選択肢です。ただし、200万円だけ残して残り1800万円をすべて株式へ回すと、資産全体の約90%が株式となり、投資初心者には値動きが大きすぎる可能性があります。

また、現在のNISAでは年間投資枠が最大360万円なので、1800万円をNISAへ一度に入れることはできません。最短でも5年間かかります。この期間を利用して、自分がどの程度の下落に耐えられるのかを確認しながら投資額を増やす方法もあります。

最初に決めるべきなのは「オルカンを買うか」ではなく、「2000万円のうち何万円なら10年以上使わず、30%程度下落しても売らずに持てるか」です。その金額が分かれば、NISAでの投資額も自然に決めやすくなります。

投資経験がない場合は、生活防衛資金や近い将来の支出資金を十分残し、初年度はNISA枠の範囲で低コストの分散型商品から始める方法が現実的です。まとまった遺産だからこそ、急いで全額を運用するより、資産を守りながら長期間続けられる配分を作ることが重要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました