オモロー山下の「ナンピンして放置」は正しい投資法?株価半減から資産3億円になった事例のリスクを解説

株式

株価が下がるたびに買い増す「ナンピン」を続け、大きな含み損になっても売らず、相場を見ないまま保有し続けた結果、その後の上昇相場で大きな利益を得る――このような成功談を見ると、「下落時は売らずに買い続ければよいのではないか」と感じるかもしれません。

お笑い芸人・実業家のオモロー山下さんも、2022年から本格的に米国株などへ投資し、下落局面でナンピンを重ね、一時は大きな含み損を経験したものの、その後の相場回復によって資産を大きく増やしたと複数のインタビューで語っています。2026年6月の文春オンラインでは、約1億円を元手に投資を始め、現在の資産が約3億円になったと紹介されています。[参照] 文春オンライン「オモロー山下さんインタビュー」

ただし、「最終的に儲かったこと」と「その途中で取った行動が誰にとっても正しい投資法だったこと」は同じではありません。ナンピン、長期保有、相場を見ないという3つの行動は、投資対象や資金管理によって合理的にも危険にもなります。成功した結果だけではなく、同じ方法を取って株価が戻らなかった場合まで考えることが重要です。

オモロー山下さんは実際にどのような投資をしていたのか

報道内容を正確に整理すると、「1銘柄に全財産を投入し、株価が半分になっても際限なくナンピンした」という単純な話ではありません。文春オンラインのインタビューによると、山下さんはうどん事業などで得た約1億円の現金を元手として、2022年ごろから本格的に投資を始めました。1億円の大部分をドルへ替えて米国株を購入し、相場が下がる中でナンピンしたと語っています。[参照] 文春オンライン

別のインタビューでは、投資開始当初はNISAを使ってS&P500やNASDAQに連動する投資信託・ETFなどを中心に購入していたことも説明しています。その後、下落するたびに買い増したものの、投資予定資金を使い切ったため追加購入を止め、保有銘柄自体は売却しなかったとしています。[参照] 東証マネ部!掲載インタビューの転載記事

また同記事では、資金を完全にゼロまで投資したわけではなく、本人は「資金の3割は現金で残したい」と考え、それ以上の投資を止めたと説明しています。そのため、「資金が尽きた」という部分も、生活資金まで使い果たしたという意味ではなく、追加投資に回す予定だった資金を使い切ったという理解が適切です。

株価を見るのをやめて売らなかった判断は正しかった?

結果だけを見ると、このケースでは売らなかったことが利益につながりました。山下さん本人も、途中から怖くなって相場を見るのをやめ、数か月後に確認すると価格が回復していたと説明しています。文春オンラインでは、買値の半分程度まで下がった時期があったことを後から知り、「見ていたら諦めていたと思う」と振り返っています。[参照] 文春オンライン

長期的な資産形成という観点では、短期的な値下がりのたびに慌てて売買しないこと自体には合理性があります。金融庁も、金融市場が大きく変動する局面であっても、長期・積立・分散投資の意義を考慮し、冷静に投資判断することが重要だとしています。[参照] 金融庁「資産形成の基本」

しかし、「株価を見ない」という方法が有効なのは、主に長期間保有する合理的な理由があり、十分に分散された資産を保有している場合です。経営状態が急速に悪化している個別企業の株まで何年間も確認しないこととは意味が違います。

ナンピンは「積立投資」と似ているようで別物

ナンピンとは、保有している資産の価格が下がったときに追加購入し、平均取得単価を引き下げる方法です。例えば1株1万円で100株購入した後、5,000円まで下がったところで同じ100株を買えば、平均取得単価は7,500円になります。

その後株価が8,000円まで戻れば、最初の100株だけならまだ20%の含み損ですが、ナンピンした200株では含み益になります。このため、価格が最終的に回復する資産ではナンピンが非常に効果的に見えることがあります。

しかし、金融庁や日本証券業協会が資産形成の基本として紹介している「積立投資」は、値下がりしたから感情的に追加購入する方法ではありません。あらかじめ決めた金額を定期的に投資する方法です。日本証券業協会も、一定額を継続的に購入する定額購入法によって購入時期を分散する考え方を紹介しています。[参照] 日本証券業協会「証券投資ってなに?3つのキホン」

ナンピン最大の弱点は「下がるほど投資額が大きくなる」こと

ナンピンには平均取得単価を下げられる一方で、値下がりしている資産への投資額をさらに増やしてしまうという大きな特徴があります。

例えば100万円投資した株が50%下落して50万円になったとします。「安くなった」と考えてさらに100万円投資すれば、その企業への投資元本は200万円になります。さらに半値になったところで100万円追加すれば300万円です。最初は小さかったポジションが、株価が悪化するほど巨大になります。

株価が最終的に回復すれば大きな利益になりますが、企業そのものが衰退した場合には逆になります。業績悪化、巨額債務、不祥事、競争力低下などによって株価が10分の1になったり、上場廃止になったりすれば、ナンピンするたびに損失額も拡大します。

50%下落した株は「50%上昇」では元に戻らない

株式投資では下落率と回復に必要な上昇率が対称ではない点も重要です。100万円が50%下落すると50万円になります。その50万円が50%上昇しても75万円にしかなりません。

下落率 元値へ戻るために必要な上昇率
10%下落 約11.1%上昇
20%下落 25%上昇
30%下落 約42.9%上昇
50%下落 100%上昇
70%下落 約233%上昇
90%下落 900%上昇

50%の下落から元値へ戻るには株価が2倍になる必要があります。したがって、大きく値下がりした資産を「いつか戻るだろう」と保有し続ける場合、その企業や市場にそれだけの回復力が本当にあるのかを考える必要があります。

S&P500への買い増しと個別株へのナンピンではリスクが違う

ナンピンを評価するときに非常に重要なのが、何を買い増しているのかです。例えばS&P500のような多数の企業から構成される株価指数に連動する商品と、特定企業1社の株式ではリスクの性質が異なります。

幅広い株価指数の場合、一社が経営不振になっただけで資産全体がゼロになるわけではありません。一方、個別株ではその企業固有の経営リスクを直接負います。企業が成長を続ければ大きな利益を得られる半面、事業が失敗すれば株価が長期間戻らない可能性もあります。

金融庁は、一つの資産だけに投資するより、国内・海外、株式・債券・不動産など値動きの異なる複数の資産へ分散することによって価格変動をある程度抑えられると説明しています。[参照] 金融庁「長期・積立・分散投資」

「株価が戻った」という結果から過去の判断を評価する危険

投資では、最終的な結果を知った後で過去の判断を見ると、その選択が最初から正しかったように感じやすくなります。しかし、2022年の下落局面にいた投資家には、その後どこが底になるのか、何年後に戻るのかは分かりませんでした。

例えば同じ日にA社とB社へ投資し、両方とも50%下落したとします。その後A社は業績を回復して株価が3倍になり、B社はさらに下落して経営破綻したとします。A社だけを後から取り上げれば「半値でも売らずナンピンするのが正解だった」という物語になります。しかしB社まで含めれば、そのルールが常に安全ではないことが分かります。

投資判断の良し悪しは「今回は儲かったか」だけではなく、「同じ判断を何度繰り返しても資金を失わず生き残れるか」という視点で評価する必要があります。

「資産3億円になった」ことはナンピンだけの成果とは限らない

報道を見る際には、「1億円が半分になった後、その同じ株だけが3倍になって資産3億円になった」と単純化しないことも重要です。

山下さんはその後も投資を継続しており、インデックス投資と個別株投資を組み合わせています。2025年12月時点のインタビューでは資産約2.5億円、その後の2026年6月の記事では約3億円と紹介されています。したがって、現在の資産額は、その後の追加投資や複数銘柄の値動きなどを含むポートフォリオ全体の結果と考えるべきです。[参照] 東証マネ部!掲載インタビューの転載記事 [参照] 文春オンライン

本人も現在の個別株について、「相場の地合いがいいから」と分析し、個別株の比率を下げてインデックス投資を増やしたほうが賢明だという趣旨の発言をしています。成功した本人自身も、個別株への集中投資を万人向けの必勝法として説明しているわけではありません。

経験者がナンピンするときに重視するのは「株価」より投資理由

経験の長い投資家でも、ナンピンをする人としない人がいます。そのため、「株歴が長い人ならナンピンが正解」という共通ルールはありません。重要なのは、値下がりした理由と当初の投資判断が現在も成立しているかです。

例えば、企業の利益や競争力には大きな変化がなく、市場全体の急落で株価が下がったのであれば、「同じ企業を以前より安く買える」と評価できる場合があります。一方、主力商品の競争力を失った、巨額の不正会計が判明した、財務状態が急激に悪化したなど、企業価値そのものが低下したのであれば、安くなったからという理由だけで買い増すことは危険です。

つまり、「1万円だった株が5,000円になった」という価格情報だけではナンピンの合理性は判断できません。5,000円でも割高な企業もあれば、企業価値に対して割安になったと分析できるケースもあります。

長期投資なら損切りしなくてよい、も万能のルールではない

山下さんはインタビューで、デイトレードなどの短期投資では損切りが必要になる場合がある一方、長期投資では値動きに左右されず保有するほうがよい場合もあるという趣旨を述べています。この区別自体には重要なポイントがあります。[参照] 東証マネ部!掲載インタビューの転載記事

ただし、「長期投資=どんな銘柄でも損切り不要」ではありません。長期投資とは保有期間が長いというだけではなく、その期間に企業や資産が価値を生み続けるという投資判断が前提になります。

企業の将来性を理由に買ったのに、その前提となる事業が崩れたのであれば、株価が下がっていても見直す必要があります。反対に、短期的な相場下落だけで長期的な投資理由が変わっていなければ、値下がりだけを理由に慌てて売らないという選択もあります。

「画面を見ない」は心理面では効果があってもリスク管理ではない

相場が大きく下落しているとき、毎日評価額を見ることで恐怖が強まり、計画していなかった売買をしてしまう人もいます。その意味では、長期積立投資をしている人が短期的な価格を何度も確認しないことには一定の合理性があります。

しかし、パソコンを閉じること自体が資産を守ってくれるわけではありません。株価を見なくても企業の価値は変化しますし、倒産リスクもなくなりません。特に個別株へ資産の大部分を集中させている場合、「見なければ売らずに済む」というだけではリスク管理になりません。

より再現性のある方法は、相場が下落する前から「この資産には総資産の何%まで」「現金はいくら残す」「どの条件なら投資判断を見直す」といった基準を決めておくことです。

山下さんが「現金3割」を残した点は重要

このエピソードで、ナンピン以上に注目したいのが資金管理です。山下さんはインタビューで、追加投資用の資金がなくなった後も「資金の3割は現金で残したい」と考え、それ以上の買い増しを止めたと説明しています。[参照] 東証マネ部!掲載インタビューの転載記事

仮に生活費や緊急資金まで投入していれば、相場が回復する前に現金が必要になり、含み損の状態で売却せざるを得なかった可能性があります。長期投資では「何年待てば戻るか」だけでなく、「戻るまで自分が保有し続けられるか」が重要になります。

日本証券業協会も、投資は余裕資金で行い、まとまった資金を一つの商品へ投資せず分散投資を心掛けるよう案内しています。[参照] 日本証券業協会「投資を決める際の心構え」

同じ方法をそのまま真似すると危険な理由

投資の成功者を参考にするときには、「何を買ったか」だけでなく、その人の資産規模や収入、生活費、投資期間、損失への耐性まで考える必要があります。

例えば資産1億円がある人が3,000万円の現金を残して7,000万円を運用するケースと、貯金300万円の人が生活防衛資金まで使って300万円を個別株に入れるケースでは、同じ30%下落でも意味がまったく異なります。

前者は数年間相場が低迷しても生活を維持できる可能性がありますが、後者は失業、病気、住宅修繕などで現金が必要になれば、最も株価が低い時期に売却せざるを得ない可能性があります。投資手法は資産額だけでなく、生活全体との組み合わせで評価する必要があります。

再現性を重視するなら「長期・積立・分散」が基本になる

一部の個別株へ大きく投資して成功すれば、分散投資より短期間で資産を増やせる場合があります。しかし、どの企業が将来大きく上昇するかを事前に当て続けることは簡単ではありません。

金融庁は、安定的な資産形成の方法として「長期・積立・分散」を挙げています。一定金額を継続して投資することで高値だけで購入するリスクを抑え、値動きの異なる資産へ分散することで、特定の資産から受ける影響を軽減するという考え方です。[参照] 金融庁「長期・積立・分散投資の考え方」

これは短期間で3倍を目指すための方法ではありません。その代わり、「一つの企業を当てられなければ資産形成に失敗する」という状態を避けやすくする考え方です。

ナンピンを検討するときのチェックポイント

値下がりした資産を買い増すか考える場合は、「下がったから買う」のではなく、少なくとも次の点を確認したいところです。

  • 最初にその株を買った理由は現在も成立しているか
  • 株価下落の原因は市場全体なのか、その企業固有の問題なのか
  • 業績、財務、競争力など企業価値に重大な変化はないか
  • 追加購入後、その銘柄が総資産の何%になるか
  • さらに50%下落しても生活に影響しないか
  • 生活防衛資金や近いうちに使うお金を残しているか
  • 「安くなった」という理由だけで買おうとしていないか
  • 投資判断が間違っていた場合に見直す条件を決めているか

このような基準を事前に決めていれば、株価が暴落したときにも感情だけで「もっと買う」「怖いから全部売る」という判断をしにくくなります。

まとめ|オモロー山下さんの成功は事実でも「ナンピンすれば勝てる」という教訓ではない

オモロー山下さんは、約1億円を元手に2022年から米国株などへ本格投資し、下落局面でナンピンを行い、大きな含み損を経験しました。その後は保有を続け、相場回復などを経て、2026年6月のインタビューでは資産約3億円と紹介されています。[参照] 文春オンライン

結果として「売らなかった」という判断はこのケースでは成功しました。しかし、そこから「株価が半分になってもナンピンし続け、見ないで放置するのが正しい」と一般化することはできません。価格が戻らない個別株で同じことをすれば、追加投資した分まで大きな損失になるからです。

また、山下さん自身も投資資金を完全に使い果たしたわけではなく、現金3割を残す基準を設けて追加投資を止めています。さらに現在はインデックス投資も継続しており、個別株についても余裕資金で行うべきだという趣旨を話しています。成功談の「ナンピンした」という部分だけではなく、この資金管理まで見る必要があります。[参照] 東証マネ部!掲載インタビューの転載記事

投資経験者の間でもナンピンや損切りについて考え方は分かれます。より重要なのは、投資対象が広く分散された指数なのか個別企業なのか、値下がりした理由は何か、投資理由が現在も成立しているか、そしてさらに下落しても保有を続けられる資金管理になっているかです。

一人の成功者が最終的に3億円へ増やしたという結果は興味深い事例ですが、それ自体は手法の安全性を証明するものではありません。一般的な資産形成で再現性とリスク管理を優先するのであれば、金融庁や日本証券業協会が示しているように、余裕資金を前提として長期・積立・分散を基本に考えるのが重要です。[参照] 金融庁「資産形成の基本」

※本記事は2026年8月30日時点の本人インタビュー、金融庁、日本証券業協会等の公開情報をもとに、ナンピン、長期保有、分散投資について一般的に解説したものです。特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。株式や投資信託には元本割れの可能性があり、投資判断は資産状況、投資目的、リスク許容度等を踏まえて行う必要があります。

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