ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983)について、柳井正会長兼社長の過去の発言が2026年8月にSNS上で再び拡散され、「ユニクロ不買」といった反応が目立つようになりました。ただし、株価の先行きを考える場合には、SNS上の騒動だけでなく、国内ユニクロの実際の売上、海外ユニクロの成長率、利益率、為替、出店余地、そして現在の株価に成長期待がどこまで織り込まれているかを見る必要があります。2026年8月期第3四半期までを見ると、海外ユニクロは非常に好調で、9カ月累計売上収益は1兆8,340億円、前年同期比25.9%増、事業利益は3,453億円、同45.4%増でした。一方、国内ユニクロも同時点では9カ月累計で増収増益です。[参照]海外成長は株価の強い支援材料ですが、「国内売上が落ちても海外が伸びているから株価は今後ずっと上昇する」とまでは言えません。株価は将来の利益成長と、その成長に対して現在いくらの価格が付いているかで決まるからです。
- まず2026年の柳井会長「発言騒動」とは何なのか
- 騒動があっても「国内ユニクロ全体が急失速した」とはまだ言えない
- 8月の国内売上減をすぐ「不買運動の影響」と断定できない
- 海外ユニクロの成長は現在かなり強い
- 現在は海外ユニクロの売上規模が国内を大きく上回る
- 海外成長が国内減収を補う簡単な例
- それでも国内売上の低迷を軽視できない理由
- 株価は「売上が伸びるか」だけでは決まらない
- 海外売上が好調でも株価が下がるケース
- 2026年8月期の連結業績自体は非常に好調
- むしろ株価で重要なのは海外成長が何年続くか
- 中国事業は今後も重要なリスク要因
- 円安・円高もファーストリテイリング株の重要材料
- 柳井会長個人への批判が企業価値に影響するケース
- 2026年8月の客数9.1%減は今後チェックすべき数字
- 不買運動の規模をSNSの「いいね数」だけで判断しない
- 海外比率が高い企業ほど国内騒動への耐性は高くなる可能性がある
- しかし海外比率が高いほど海外リスクも増える
- ファーストリテイリング株で注目したい5つの数字
- 決算が良くても株価が高すぎれば下落することがある
- 短期株価と長期株価では見るものが違う
- 「国内が下がっても海外が伸びれば大丈夫」は半分正しい
- 今後特に確認したいのは次の本決算と月次売上
- まとめ:海外好調は強い材料だが「今後も株価上昇」と断定はできない
まず2026年の柳井会長「発言騒動」とは何なのか
2026年8月にSNSで話題になったのは、柳井氏がその時点で新たに発言した内容というより、2024年8月の日本テレビのインタビューが再び拡散されたことが発端です。
当時、柳井氏は人口減少や生産性について危機感を示し、「日本は日本人だけでこれからやっていけないでしょう」といった趣旨の発言をしていました。それが2026年になって再び注目され、SNSでは不買を呼びかける投稿などが広がりました。[参照]
なお、SNSでは柳井氏が「日本人労働者の質が下がり、単純作業しかできない」と発言したかのような文章も拡散されていますが、元のインタビューとは表現や文脈が異なるものもあります。そのため、企業価値を判断するときには、切り取られた投稿ではなく元発言と実際の売上への影響を分けて見ることが重要です。
騒動があっても「国内ユニクロ全体が急失速した」とはまだ言えない
2026年8月期第3四半期までの国内ユニクロ事業はむしろ好調でした。9カ月累計の売上収益は8,676億円で前年同期比8.3%増、事業利益は1,729億円で同15.1%増となっています。[参照]
第3四半期3カ月だけを見ても売上収益は2,859億円で10.0%増、事業利益は622億円で18.3%増でした。つまり、2026年5月までの段階では国内事業も海外事業も増収増益だったことになります。
ただし2026年8月の国内ユニクロ既存店とEコマースを合わせた売上高は前年同月比1.3%減となり、客数は9.1%減りました。一方、客単価は8.6%増でした。報道では天候不順や気温の影響によって夏物需要が伸びなかったことが要因として挙げられています。[参照]
8月の国内売上減をすぐ「不買運動の影響」と断定できない
2026年8月の既存店売上がマイナスだったことと、SNS上で不買を呼びかける投稿が広がった時期が近いため、両者を直接結び付けたくなるかもしれません。
しかし、月次売上は天候、曜日の並び、気温、販促、前年の売れ方、商品構成など多くの要因で変動します。今回も会社側の売上速報に関する報道では、低い気温や天候不順により夏物需要が盛り上がらなかったことが理由として挙げられています。[参照]
1カ月の売上減だけを見て「不買運動で国内事業が崩れた」と判断するのは早計です。不買が業績へ大きく影響しているかを見るには、9月以降の月次売上や客数、それが複数月続くかを確認する必要があります。
海外ユニクロの成長は現在かなり強い
ファーストリテイリングの株価を考えるうえで最も重要なポイントの一つが海外ユニクロです。2026年8月期第3四半期までの9カ月累計で、海外ユニクロ事業の売上収益は1兆8,340億円、前年同期比25.9%増、事業利益は3,453億円、同45.4%増でした。[参照]
第3四半期の3カ月だけでは売上収益が5,926億円で33.8%増、事業利益は1,123億円で65.2%増と、利益の伸びが売上の伸びを大きく上回っています。
地域別では、中国大陸が増収・2桁増益となり、韓国、東南アジア・インド・豪州、北米、欧州も好調でした。特に北米や欧州でブランド認知が高まり、出店と商品販売の双方が伸びていることは、中長期の成長ストーリーとして重要です。
現在は海外ユニクロの売上規模が国内を大きく上回る
2026年8月期第3四半期までの9カ月累計で比較すると、国内ユニクロの売上収益は8,676億円、海外ユニクロは1兆8,340億円でした。
単純比較では海外ユニクロの売上規模は国内ユニクロの2倍を超えています。四半期単体でも2026年第3四半期は国内2,859億円に対し、海外5,926億円でした。[参照]
したがって、昔のように「日本のユニクロが不調なら会社全体も大きく悪化する」という企業構造ではなくなっています。国内が多少弱くても、海外が高い成長を維持すれば連結業績を補える可能性は十分あります。
海外成長が国内減収を補う簡単な例
極端に単純化して考えてみます。国内事業の売上が年間1兆円、海外が2兆円だったと仮定します。
国内売上が10%減ると1,000億円減少します。しかし海外売上が20%増えると4,000億円増えるため、合計では3,000億円の増収です。
このような企業では国内市場のマイナス以上に海外市場が成長すれば、会社全体の売上・利益を伸ばすことができます。現在のファーストリテイリングは、まさに海外事業の比重が大きくなっているため、この視点は重要です。
それでも国内売上の低迷を軽視できない理由
海外事業が大きくなったからといって、日本事業がどうなってもよいわけではありません。国内ユニクロは依然として年間で大きな売上と利益を生み出す中核事業です。
国内事業はユニクロにとって成熟市場である一方、高い利益率を確保している重要市場でもあります。仮に一時的な売上減ではなく、ブランド離れによって数年間にわたり客数・売上・利益率が低下するようになれば、連結利益にも無視できない影響が出ます。
したがって不買騒動の株価への影響を見るなら、SNSの投稿数よりも、国内既存店客数が今後数カ月どう推移するかを見る方が有効です。
株価は「売上が伸びるか」だけでは決まらない
株価について最も誤解されやすいのが、「業績が伸びれば必ず株価も上がる」という考え方です。
企業の業績が非常に良くても、株式市場がそれ以上の成長をすでに期待して高い株価を付けていた場合、決算発表後に株価が下落することがあります。反対に、減益でも市場予想ほど悪くなければ株価が上がる場合もあります。
株価は「会社が良いか悪いか」ではなく、「実際の業績が市場の期待を上回るか下回るか」に強く反応します。
海外売上が好調でも株価が下がるケース
例えば市場が「海外ユニクロは来期30%成長する」と期待しているのに、実際には15%成長だったとします。15%増収そのものは非常に好調ですが、投資家の期待には届かなかったため株価が下落する可能性があります。
また売上が20%増えても、人件費、物流費、店舗賃料、原材料費などがさらに増え、利益がほとんど伸びなければ評価は下がることがあります。
ファーストリテイリングを見るときは、海外売上高だけでなく、事業利益と利益率が伸びているかも重要です。2026年8月期第3四半期では海外ユニクロの利益成長が売上成長を上回っており、この点は現在の強みです。[参照]
2026年8月期の連結業績自体は非常に好調
ファーストリテイリングの2026年8月期第3四半期累計の連結売上収益は3兆651億円で前年同期比17.1%増、事業利益は5,927億円で33.6%増、親会社の所有者に帰属する四半期利益は4,260億円で25.6%増でした。[参照]
会社は「過去最高の業績」と説明しています。少なくとも2026年5月までの決算数字からは、ファーストリテイリング全体の成長トレンドが崩れているとは言えません。
そのため、柳井氏へのSNS上の批判だけを理由に「ファーストリテイリングの業績が今後悪化する」と断定する根拠は現時点では弱いと考えられます。
むしろ株価で重要なのは海外成長が何年続くか
長期投資家にとって重要なのは、現在の海外売上が好調という事実より、北米・欧州・アジアなどで今後5年、10年と成長を続けられるかです。
柳井氏自身もファーストリテイリングのトップメッセージで、世界市場でLifeWearへの支持が広がり、「真のグローバルブランド」を目指す姿勢を示しています。2026年8月期上期では北米、欧州、韓国、東南アジア・インド・豪州などで2桁の増収増益となりました。[参照]
もし北米や欧州で店舗数を増やしながら既存店売上と利益率も維持できれば、国内市場の成熟を補う大きな成長源になります。
中国事業は今後も重要なリスク要因
海外ユニクロが好調だからといって、海外全体を一括して考えるのも危険です。地域ごとに経済環境や競争状況は異なります。
特にグレーターチャイナはファーストリテイリングにとって規模の大きな市場で、中国景気、消費動向、店舗戦略などの影響を受けます。2026年8月期第3四半期では中国大陸は増収・2桁増益でしたが、今後も常に同じ成長率が続く保証はありません。[参照]
海外売上比率が高くなれば、国内市場への依存は下がる一方、海外景気や政治・為替など別のリスクが増えることになります。
円安・円高もファーストリテイリング株の重要材料
グローバル企業では為替も業績と株価へ大きく影響します。ファーストリテイリングは海外で多くの売上を上げる一方、商品の調達でも為替の影響を受けます。
円安になると海外売上・利益を円換算した金額が増えやすい面がありますが、商品調達コストが上昇する面もあります。実際、2026年8月期上期の国内ユニクロでは、調達に使用する為替予約レートの円安によって原価率が上昇したと会社が説明しています。[参照]
そのため「円安なら必ずファストリ株にプラス」という単純な関係でもありません。
柳井会長個人への批判が企業価値に影響するケース
経営者の発言が企業価値へ影響することはあります。発言によって顧客離れが長期化したり、ブランドイメージが低下したり、人材採用や取引関係へ影響したりすれば業績にもつながります。
ファーストリテイリングの場合、創業者である柳井氏と企業ブランドの結び付きが強いため、SNS上で大規模な反発が長期化すれば完全に無視できる材料ではありません。
しかし株式投資では「炎上している」という情報だけでなく、その結果として売上・客数・利益・ブランド調査などに実害が確認できるかを追う必要があります。
2026年8月の客数9.1%減は今後チェックすべき数字
2026年8月の国内ユニクロでは既存店とEコマースの売上高が1.3%減だった一方、客単価は8.6%増、客数は9.1%減でした。[参照]
投資家としては売上高の1.3%減だけでなく、客数減が一時的な天候要因なのか、9月以降も続くのかを見ることが重要です。
もし客数が翌月以降回復すれば、一時的な月次変動だった可能性が高まります。一方、複数月にわたり大幅な客数減が続けば、消費者行動の変化を含めて原因を詳しく見る必要があります。
不買運動の規模をSNSの「いいね数」だけで判断しない
SNSでは数万件の「いいね」が付く投稿が大きな世論のように見えることがあります。しかし、SNS上の反応数と実際に店舗で商品を買わなくなる人数は一致しません。
またユニクロは日本だけでなく、北米、欧州、中国、韓国、東南アジア、インド、オーストラリアなど世界各地で事業を展開しています。そのため国内SNSでの騒動が海外顧客へ同じ規模で影響するとは限りません。
株価を見るなら、SNSの投稿数よりも月次売上、四半期決算、海外地域別売上・利益といった数字を優先した方が客観的です。
海外比率が高い企業ほど国内騒動への耐性は高くなる可能性がある
事業地域が分散している企業には、一つの国で業績が悪化しても別の地域で補えるというメリットがあります。
例えば国内ユニクロが5%減益になっても、規模の大きい海外ユニクロが20%や30%増益すれば連結利益は成長できる可能性があります。2026年8月期第3四半期までの海外ユニクロの事業利益は前年同期比45.4%増でした。[参照]
この意味では、ファーストリテイリングが長年進めてきたグローバル化は、国内市場だけに依存するより事業リスクを分散する効果があります。
しかし海外比率が高いほど海外リスクも増える
海外展開はメリットだけではありません。中国や米国の景気悪化、関税、現地規制、人件費上昇、為替変動、地政学リスクなどを受けやすくなります。
世界的にブランドが成長すればするほど、各国で店舗運営、物流、人材確保、在庫管理を適切に行う経営力も求められます。
「日本が駄目でも海外があるから安心」というより、国内リスクが低下する代わりにグローバル企業特有のリスクへ置き換わっていると考えた方が正確です。
ファーストリテイリング株で注目したい5つの数字
今後の株価を判断するなら、SNS上の議論よりも次のような数字を継続的に確認すると分かりやすくなります。
| 確認項目 | 見る理由 |
|---|---|
| 国内ユニクロ既存店売上・客数 | 国内の消費者離れが実際に起きているか確認 |
| 海外ユニクロ売上収益 | グローバル成長が継続しているか確認 |
| 海外ユニクロ事業利益率 | 売上だけでなく収益力も伸びているか確認 |
| 連結営業利益・純利益 | 会社全体の利益成長を見る |
| 会社予想と市場予想 | 株価に織り込まれた期待とのギャップを見る |
特にファーストリテイリングは海外事業の成長が大きいため、国内の月次売上だけで会社全体を評価しないことがポイントです。
決算が良くても株価が高すぎれば下落することがある
成長株では「どれだけ良い企業か」と同じくらい「いくらで買うか」が重要です。
例えば会社の利益が毎年15%伸びるとしても、株価が将来の高成長をかなり先まで織り込んでいる場合、その成長率が10%へ低下しただけで株価の評価倍率が下がることがあります。
ファーストリテイリングについて「海外が好調だから買い」と単純に判断するのではなく、PERなどのバリュエーションと利益成長率を比較する視点も必要です。
短期株価と長期株価では見るものが違う
数日から数週間の短期株価なら、柳井氏をめぐるSNS騒動、月次売上速報、為替、市場全体の動きなどによって大きく変動する可能性があります。
一方、数年単位の株価では、北米や欧州でどれだけ店舗・顧客を増やせるか、中国事業を安定成長させられるか、利益率を維持できるかといった事業そのものの成長が重要です。
そのため短期的な炎上を見て売買する場合と、世界ブランドとしての成長へ投資する場合では、同じ株でも判断基準が異なります。
「国内が下がっても海外が伸びれば大丈夫」は半分正しい
現在のファーストリテイリングの事業構造から考えると、この考え方には合理性があります。2026年8月期第3四半期までで海外ユニクロの売上収益は国内の2倍以上あり、成長率も海外の方が高いためです。[参照]
したがって国内売上が数%低下しても、海外が20%以上成長すれば連結業績としては増収増益を維持できる可能性があります。
ただし、株式市場がその海外成長をすでに十分期待しているなら、実際に高成長を維持し続けなければ株価上昇につながらない場合があります。ここが「業績」と「株価」の大きな違いです。
今後特に確認したいのは次の本決算と月次売上
2026年9月時点では、まず今後公表される国内ユニクロの月次売上で8月の客数減が継続するかを見る価値があります。
さらに2026年8月期の本決算で、通期の海外ユニクロ売上・利益、地域別の成長状況、翌期の業績予想を確認することが重要です。
海外成長が継続し、国内売上も回復すれば、現在の成長ストーリーが維持されていると判断しやすくなります。一方、海外成長率まで鈍化してくれば、株価に織り込まれている高成長期待を再評価する必要があります。
まとめ:海外好調は強い材料だが「今後も株価上昇」と断定はできない
2026年8月に再び注目された柳井正会長兼社長の発言をめぐっては、2024年のインタビューがSNS上で再拡散され、不買を呼びかける投稿などが広がりました。ただし、SNS上では元発言と異なる表現も拡散されているため、まず事実関係と実際の業績を分けて考える必要があります。
業績面では、2026年8月期第3四半期までのファーストリテイリングは非常に好調です。連結売上収益は3兆651億円で17.1%増、事業利益は5,927億円で33.6%増でした。海外ユニクロは売上収益1兆8,340億円で25.9%増、事業利益3,453億円で45.4%増となっています。[参照]
国内ユニクロも第3四半期累計では増収増益ですが、2026年8月の既存店とEコマース売上は1.3%減、客数は9.1%減でした。[参照]ただし、この1カ月だけでSNS上の不買運動が原因だったと判断することはできません。
結論として、国内売上が多少弱くなっても海外ユニクロの高成長が続けば、ファーストリテイリング全体の利益は伸び続ける可能性があります。その点は株価にとって強いプラス材料です。しかし、それだけで「今後の株価は上昇傾向で間違いない」と判断することはできません。
株価は海外成長率、中国・北米・欧州の事業環境、為替、利益率、国内客数、そして現在の株価にどれほどの成長期待が織り込まれているかによって変わります。今後を見るなら、SNS上の騒動そのものより、国内ユニクロの9月以降の客数と売上、海外ユニクロの利益成長、そして次の本決算で示される翌期見通しを確認するのが重要です。
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