MMT(現代貨幣理論)では、失業は政府が十分な通貨を供給していない結果であり、政府が最後の雇用主として機能するJGP(Job Guarantee Program:雇用保障プログラム)を導入すべきだと主張します。その議論の中でよく登場するのが「資源配分の歪み」という考え方です。しかし、JGPを導入しただけで本当に資源配分は改善されるのでしょうか。この記事ではMMT支持者が考える理屈と、それに対する批判的な見方を整理します。
MMTがいう「資源配分の歪み」とは
MMTでは問題はお金そのものではなく、労働力や設備、土地などの実物資源の使われ方にあると考えます。
例えば、一部の富裕層向けサービスには大量の資源が投入される一方で、介護や公共サービス、地域インフラの維持など社会的に必要な分野では人手不足が発生している状態を「資源配分の歪み」と説明することがあります。
つまり失業者が存在する一方で社会的ニーズが満たされていないこと自体が、資源配分の失敗だと捉えるのです。
JGPが資源配分を改善するとされる理由
JGPでは、民間企業で雇用されていない人に対して政府が仕事を提供します。
MMTの考え方では、これまで活用されていなかった労働力を公共目的の仕事へ移動させることで、未利用資源を活用できるとされます。
| 導入前 | 導入後 |
|---|---|
| 失業者が存在する | 公共事業や地域サービスに従事 |
| 地域課題が未解決 | 人的資源が投入される |
| 所得がない | 最低賃金レベルの所得を得る |
MMT支持者は、この仕組みによって社会的に必要な分野へ労働資源が再配置されると考えています。
なぜインフレが発生すると説明されるのか
一方でJGP導入直後は需要が増加するため、短期的なインフレ圧力が生じる可能性があります。
これまで所得がなかった人々が賃金を受け取り、消費を増やすためです。
MMT支持者の中には、この過程で一時的な物価上昇が起きても、最終的には生産能力の拡大によって均衡へ向かうと説明する人もいます。
JGPだけで資源配分の歪みは解消されるのか
ここがMMTに対する代表的な批判点です。
JGPで雇用を創出しても、高度な技術者不足や住宅不足、エネルギー不足などの問題は簡単には解決しません。
また、富裕層向け産業に投入されている資源が自動的に一般消費者向けへ移るわけでもありません。
そのため「JGPは失業問題の改善には有効でも、資源配分全体の歪みを解消するには不十分ではないか」という指摘が存在します。
経済学者の間でも評価が分かれるテーマ
MMT支持者は、JGPが完全雇用と物価安定を両立する政策だと主張しています。
一方で主流派経済学者の中には、政府が適切に労働を配分できる保証はなく、インフレや非効率な事業拡大を招く可能性を懸念する声もあります。
つまり、JGPによって資源配分の歪みが改善されるかどうかは、経済学の世界でも意見が一致しているわけではありません。
まとめ
MMTがJGPによって資源配分の歪みが改善されると考える理由は、失業者という未利用資源を社会的に必要な仕事へ投入できると考えているためです。
しかし、JGPだけで富裕層向け産業から一般消費者向け産業へ資源が自動的に移動するわけではなく、技術や設備、土地などの制約も残ります。
そのため、JGPは失業問題への対策としては理解できる一方、資源配分全体の歪みをどこまで解消できるかについては現在も議論が続いているテーマです。
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