暴落した株を底値で買えば1億円を狙える?「1000万円を10倍」にする投資戦略の現実と成功条件

株式

株式市場が大きく下落したときに買い、その後の回復や上昇を待つ投資方法は、理屈としては非常にわかりやすい戦略です。実際、金融危機や景気後退などで株価が大幅に下落した局面のあと、米国株をはじめとする主要な株価指数が長期的に回復し、過去最高値を更新してきた例はあります。

しかし、「暴落後の底値で1000万円分買えば、10倍になって1億円」という計算が数学的に正しくても、それを実際の投資で再現することは別問題です。最大の難関は、暴落がいつ来るのか、どこが底なのか、その後本当に回復するのかを事前には確定できないことです。

この記事では、暴落時に株を買って資産を増やす戦略について、過去の実例、インデックス投資との違い、1000万円を1億円にするために必要な利回り、底値投資の落とし穴まで具体的に解説します。

暴落した株を買って大きく利益を得た例は実際にある

株価が暴落して投資家の悲観が強まっている時期に株式を購入し、その後の回復局面で大きな利益を得ることは実際に可能です。代表的なのが2008年の世界金融危機や2020年の新型コロナウイルスによる急落などです。

たとえば米国の代表的な株価指数であるS&P500は、2008~2009年の金融危機で非常に大きく下落しました。FINRA(米国金融業規制機構)は、2008~2009年の株価下落について約57%下落した例を投資リスクの説明に挙げています。[参照] FINRA「Risk」

そのような大幅下落局面で幅広い米国株に投資し、その後長期間保有していれば、大きなリターンにつながったケースがあります。ただし重要なのは、これは「後からチャートを見れば底がわかる」という話であり、暴落の最中に正確な底値を知ることができたわけではない点です。

「1000万円が10倍なら1億円」は計算上その通り

投資元本1000万円が値上がりによって10倍になれば、評価額は1億円になります。税金、手数料、為替変動などを無視した単純計算では、1000万円×10=1億円です。

ただし、10年間で1000万円を1億円にするには、かなり高い運用成績が必要です。複利計算すると、10年間で資産を10倍にするために必要な年平均リターンはおよそ25.9%です。

10年間の年平均リターン 1000万円の概算評価額
5% 約1629万円
7% 約1967万円
10% 約2594万円
15% 約4046万円
20% 約6192万円
約25.9% 約1億円

つまり、10年間で1億円を目標にする場合、「暴落時に買う」ということだけでなく、その後10年間にわたって平均約26%という非常に高いリターンを達成する必要があります。これは一般的なインデックス投資の長期的な期待収益率とは大きく異なる水準です。

3000万円を目標にすると必要利回りは大きく下がる

同じ1000万円を10年間で3000万円にする場合、必要となる年平均リターンは約11.6%です。1億円を目標にする場合よりは現実的な数字になりますが、それでも毎年確実に11.6%得られるわけではありません。

株式市場では、ある年に30%上昇した翌年に20%下落するといったこともあります。そのため「平均利回り10%」という数字は、毎年10%ずつ増えるという意味ではありません。

たとえば1000万円が1年後に30%下落すると700万円になります。そこから元の1000万円へ戻るためには約42.9%の上昇が必要です。下落率と回復に必要な上昇率は同じではないため、大きな暴落を経験すると資産回復には想像以上の上昇が必要になります。

「インデックスは絶対に元に戻る」とは言い切れない

米国の主要株価指数はこれまで数々の暴落を経験しながら、長期的には過去最高値を更新してきました。そのため「暴落しても長期間待てば戻る」という考え方には、過去の米国株市場を根拠とした一定の合理性があります。

しかし、将来も必ず同じことが起こるという保証はありません。FINRAも、株式は長期保有すればリスクがなくなるわけではなく、過去の実績から将来も安全だと考えるべきではないと説明しています。[参照] FINRA「Risk」

実際、日本の日経平均株価は1989年12月29日に38,915.87円の高値をつけた後に大幅下落し、その水準を終値で上回ったのは2024年2月22日でした。約34年間という非常に長い期間を要しています。[参照] 日経平均プロフィル

この例からも、「インデックスだから数年で必ず戻る」と考えるのは危険です。どの国・指数に投資するのかによって結果は大きく異なります。

最大の難関は「底」がその瞬間には分からないこと

暴落時投資で最も難しいのは、安く買うこと自体ではなく底値を判断することです。チャートを後から見れば「あの日が底だった」と簡単に分かりますが、その日の市場参加者には未来の株価は見えません。

たとえば株価指数が高値から20%下がったとします。その時点では「十分下がった」と感じるかもしれません。しかし、その後さらに20%、30%と下落する可能性があります。

1000万円を一括投入した直後にさらに50%下落すれば、評価額は500万円になります。そこで恐怖に耐えられず売却すれば500万円の損失が確定します。一方、その後回復するまで何年間も待つことができれば結果は違ってきます。

FINRAも、市場の短期的な値動きを予測して売買する「マーケットタイミング」について、成功するのは容易ではなく、暴落を避けようとして相場から離れることで、その後の急反発を逃す可能性があると説明しています。[参照] FINRA「What Is Market Timing?」

「暴落を待って現金を貯める」戦略にも機会損失がある

暴落時に大量購入するため、何年間も現金を貯め続ける方法にもリスクがあります。それは待っている間に株価が上昇し続ける可能性です。

たとえば「50%暴落したら買う」と考えていたとしても、その前に株価が100から200まで上昇し、その後30%下落して140になった場合、暴落後の140という価格は最初に投資できた100より高いことになります。

つまり、「将来もっと安く買えるはず」と現金で待機することが必ず有利になるとは限りません。暴落の発生時期を正確に予測できない以上、投資を始める時期そのものが大きな賭けになってしまう可能性があります。

SEC(米国証券取引委員会)は、一度に全資金を投入するタイミングリスクを抑える考え方として、一定額を定期的に投資するドルコスト平均法を紹介しています。価格が低いときには多く、高いときには少なく購入する仕組みです。[参照] SEC「Things to Consider Before You Make Investing Decisions」

一括1000万円より「平時は積立+暴落時に追加」という考え方もある

底値を完璧に当てる必要をなくす方法として、平常時から一定額を投資しながら、暴落時に余裕資金を追加する方法があります。この方法なら、暴落が長期間来なかった場合でも市場に参加し続けることができます。

たとえば毎月5万円を幅広い株価指数に積み立てながら、別に現金を貯めておき、株価指数が高値から20%、30%、40%と下落するごとに追加投資する、といったルールをあらかじめ決める方法です。

具体的には追加投資用資金300万円を用意していた場合、「20%下落で50万円、30%下落で100万円、40%下落で150万円」というように段階的に投入すれば、最初の下落ですべての資金を使い切ることを避けられます。

もちろん、この方法でも利益は保証されません。20%下落後にすぐ反発すれば残りの現金を投入できませんし、50%以上下落すれば追加資金を使い切った後も含み損が拡大します。しかし「底値を1回で当てなければならない」という問題は小さくできます。

暴落時には心理面が想像以上に難しくなる

平常時には「50%下落したら喜んで1000万円買う」と考えられても、本当に50%暴落したときの心理状態は大きく異なる可能性があります。株価が半値になる場面では、通常、その背景に深刻な問題があります。

金融危機なら企業倒産や失業への不安、感染症なら経済活動停止への不安、戦争や金融システム不安なら将来そのものへの不透明感が高まります。その状況ではニュースも悲観的な内容が多くなり、「さらに半分になるかもしれない」と感じるのが自然です。

しかも、自分自身が景気悪化によって失業したり収入が減ったりしている可能性もあります。暴落時ほど投資したいのに、暴落時ほど現金が必要になるという矛盾が起こり得ます。

FINRAも、相場変動への対策として、投資だけでなく緊急時の資金を維持する重要性を挙げています。[参照] FINRA「Volatility」

個別株の暴落とインデックスの暴落はまったく違う

「落ちている株を買う」という言葉で特に注意したいのが、個別株と株価指数を同じように考えないことです。市場全体が不況や金融危機によって下落している場合と、特定企業の株価だけが下落している場合では意味が違います。

幅広いインデックスでは複数の企業に分散されています。業績が悪化した会社が指数から外れ、新しい成長企業が採用される場合もあります。それに対して個別企業は、業績悪化が続けば倒産や上場廃止に至る可能性があります。

たとえば1000円だった株が200円になったからといって「80%も安くなったのでお買い得」とは限りません。企業価値そのものが大幅に悪化しているなら、200円から100円、50円、最終的にはほぼゼロになることもあります。

SECの投資家向け情報でも、投資リスクを抑える基本的な方法として分散投資が紹介されています。複数の投資対象に資金を分散することで、特定の投資先で生じる損失の影響を小さくする考え方です。[参照] Investor.gov「Ten Investment Tips」

50万円から1000万円を貯める計画も投資戦略の一部

現在の資産が50万円程度で、将来1000万円を投資したい場合には、暴落予測より先に投資元本を作る計画が重要になります。50万円から1000万円へ増やすには950万円の追加資金が必要です。

運用益を無視した単純計算で毎月5万円を貯めるなら950万円を追加するまで約15年10か月、毎月10万円なら約7年11か月、毎月15万円なら約5年4か月です。

毎月の貯蓄額 50万円から1000万円までの目安
5万円 約15年10か月
10万円 約7年11か月
15万円 約5年4か月
20万円 約4年

この段階では「次のバブル崩壊がいつ起こるか」を予測するより、収入を増やす、支出を管理する、毎月の投資額を増やすといった自分でコントロールできる要素のほうが資産形成への影響が大きい場合があります。

また、投資資金とは別に生活費や緊急予備資金を確保することも重要です。生活資金まで株式に投入してしまうと、暴落時に生活費が必要になり、最も売りたくないタイミングで株式を売却することになりかねません。

10年間で1億円を目指すなら「目標」より再現性を見る

1億円という目標を持つこと自体に問題はありません。しかし投資計画を作るときには、目標金額から逆算した都合のよい株価上昇率だけでなく、そのリターンをどの程度の確率で達成できるのかを考える必要があります。

特に「1000万円を10倍にする銘柄を見つける」という方法では、成功すれば1億円になりますが、銘柄選択を誤れば資産を大きく失う可能性もあります。期待リターンを高くしようとするほど、一般的には負担するリスクも大きくなります。

一方、投資元本そのものを増やすことも資産形成には有効です。1000万円を10倍にすることだけを狙うのではなく、収入から毎年追加投資を続ければ、必要となる運用利回りを下げることができます。

たとえば最初の1000万円だけで1億円を作るのではなく、その後も毎月10万円、20万円と追加投資を続けるのであれば、1億円到達に必要な市場リターンは低くなります。長期の資産形成では「元本×運用利回り×時間」の3要素を組み合わせて考えることが重要です。

学歴と投資成績は別の問題

株式投資では、高卒・大卒といった学歴そのものによって市場から得られるリターンが決まるわけではありません。必要なのは、金融商品の仕組み、リスク、企業や指数の特徴、税金、資産管理などを理解したうえで、自分の許容できる範囲で投資することです。

むしろ注意したいのは、「自分だけが他人より賢く底値を当てられる」「今回は絶対に上がる」といった確信が強くなりすぎることです。株式市場には世界中の個人投資家、機関投資家、金融機関、アルゴリズムなどが参加しており、価格には大量の情報と予想が反映されています。

投資では未来を完全に当てることより、予想が外れた場合にも退場しない資金管理のほうが重要です。たとえば1000万円を投入した直後に500万円まで減った場合でも生活に支障がなく、長期保有を続けられるかという観点で投資額を決める必要があります。

まとめ:暴落買いで成功することはあるが「底値を当てて10倍」は簡単ではない

株式市場の暴落時に購入し、その後の長期的な上昇によって大きな利益を得た投資家は存在します。特に幅広く分散された米国株指数は過去の大きな暴落から何度も回復してきました。そのため、恐怖が強い局面でも長期的な視点で投資を継続する考え方には合理性があります。

一方で、「インデックスなら絶対に元の価格へ戻る」「暴落したら底で1000万円を入れれば10倍になる」という保証はありません。底値は事前には分からず、暴落後さらに大きく下落することもあります。また、1000万円を10年間で1億円にするには年平均約25.9%という非常に高いリターンが必要です。

暴落投資を考える場合には、底値を一発で当てようとするより、生活防衛資金を確保したうえで、分散投資、定期積立、段階的な追加購入などによって「予想が外れても続けられる仕組み」を作ることが重要です。

最終的な資産額は株価だけでなく、投資元本、追加投資額、運用期間、税金、為替、投資対象によって大きく変わります。1億円という結果だけを見るのではなく、まず100万円、300万円、1000万円と投資可能資産を着実に増やしながら、長期間市場に残ることのできる投資計画を作ることが、結果として大きな資産形成につながる可能性を高めます。

※本記事は一般的な投資知識を解説するものであり、特定の株式・投資信託・ETFなどの購入や売却を推奨するものではありません。株式投資には元本割れの可能性があります。投資判断は商品のリスクや自身の資産状況を確認したうえで行ってください。

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