株の売却益で家・マンションを買うことはできる?現金購入・住宅ローン・税金の注意点を解説

株式

株式投資を続けて資産が大きくなると、保有株を売却して得た資金を住宅購入に使うという選択肢が出てきます。株の売却代金で家やマンションを購入すること自体に特別な制限はなく、売却後の現金を購入代金や頭金、諸費用などに充てることができます。

ただし、「株を1,000万円で売却した=1,000万円の利益が出た」という意味ではありません。株式の売却代金と売却益は別物であり、課税口座で利益が発生していれば税金も考慮する必要があります。また、住宅ローンを利用する場合には、株式資産が多いことと住宅ローン審査に通ることも同じではありません。

この記事では、株の売却によって作った資金で家やマンションを購入するときの基本的な考え方を、税金、現金購入、住宅ローン、売却タイミングなどの観点から具体例を交えて解説します。

株の売却で得た資金を家やマンションの購入に使うことは可能

保有している株式は、売却して現金化すれば住宅購入資金として利用できます。給与や預貯金だけで住宅を購入しなければならないという決まりはないため、株式を売却して得た資金を住宅の購入代金に充てることも可能です。

使い方としては、株式を売却して住宅価格の全額を現金で支払う方法だけではありません。たとえば株式の売却資金の一部を住宅ローンの頭金にして、残りを住宅ローンで調達する方法も考えられます。

ほかにも、住宅購入時には登記費用、住宅ローン関係費用、火災保険料、仲介手数料など、物件価格以外の費用が発生する場合があります。株式の売却資金をこうした諸費用に充て、住宅そのものについては住宅ローンを利用するという資金計画もあります。

株式資産5,000万円から2,000万円を住宅資金にする例

たとえば株式を時価5,000万円分保有している人が、そのうち2,000万円分を売却し、4,000万円のマンションを購入するとします。

売却後の手取り資金から1,500万円を頭金や諸費用に使用し、残額を住宅ローンで調達すれば、すべての株式を売却せずに住宅を取得することも可能です。反対に、十分な金融資産があれば株式をより多く現金化して住宅ローンの借入額を減らしたり、物件価格の全額を現金で支払ったりする選択肢もあります。

どの方法が有利かは、住宅ローン金利、株式の期待リターン、税金、生活防衛資金、年齢や収入などによって変わります。「現金があるなら全額現金購入が必ず得」とは限らない点が重要です。

「株の売却代金」と「株の売却益」は違う

住宅購入の資金計画を立てるうえで、まず区別したいのが売却代金と売却益です。売却代金は株式を売ったことで受け取る金額で、売却益は取得費などを差し引いた利益部分を指します。

国税庁では、上場株式等の譲渡所得について、基本的に「譲渡価額-(取得費+委託手数料等)」によって譲渡益を計算するとしています。[参照] 国税庁「上場株式等を譲渡した場合の課税関係」

たとえば500万円で取得した株式を1,000万円で売却した場合、単純化すれば売却代金は1,000万円ですが、利益は約500万円です。住宅購入に使える資金を考える場合には1,000万円という売却代金を見る一方、税金を考える際には利益部分を見る必要があります。

項目 金額の例
株式の取得費 500万円
売却代金 1,000万円
売却益(単純化した例) 500万円

この違いを理解せず、「株を1,000万円売れば1,000万円の利益が発生して、その全額に税金がかかる」と考えてしまうと資金計画を誤ってしまいます。実際の取得費や譲渡所得の計算については、取引履歴や年間取引報告書などを確認しましょう。

株の利益には税金がかかる場合がある

課税口座で株式を売却して利益が出ている場合には、住宅購入とは別に株式の譲渡益に対する税金を考える必要があります。上場株式等の譲渡所得等は、給与所得などとは区分して税額を計算する申告分離課税が基本です。[参照] 国税庁「株式等の譲渡益課税について」

上場株式等の譲渡益については、所得税15%、住民税5%に加えて復興特別所得税が課され、一般的には合計20.315%の負担となります。国税庁も所得税15%・住民税5%の税率と、復興特別所得税について案内しています。[参照] 国税庁「株式等の譲渡所得等の税率」

500万円の売却益が出た場合のイメージ

たとえば課税対象となる上場株式の売却益が500万円だった場合、他の損益や各種条件を考慮しない単純計算では、500万円×20.315%=約101万5,750円となります。

つまり、「500万円儲かったから500万円すべてを住宅購入に回せる」と考えるのではなく、税引き後にいくら残るのかを確認したうえで住宅資金を決める必要があります。

なお、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合には、証券会社によって源泉徴収され、一定の場合にはその口座内で納税が完結します。一方、口座の種類や損益通算、繰越控除などの状況によって確定申告が必要または有利になる場合もあるため、大きな利益を確定させる場合には税理士や税務署などの専門窓口への確認も検討すると安心です。

NISAの株を売って住宅購入資金にする場合

NISA口座で保有する対象商品を売却して利益が出た場合、NISA制度の非課税メリットを利用できます。そのため、課税口座の株式を売却する場合とは税金の考え方が異なります。

たとえばNISA口座で購入した株式が値上がりし、その売却代金を住宅購入資金に充てるという使い方も可能です。ただし、住宅購入のためにNISA資産を売却すべきかどうかは別問題です。

NISAで長期間運用する予定だった資産を住宅購入のために売却すれば、その資金は以後の運用には回りません。住宅を購入することによるメリットと、株式を保有し続けることで期待できる将来の運用成果を比較して判断する必要があります。

また、NISA制度のルールは改正されることがあります。売却後の非課税保有限度額の再利用などを含め、実際に売却するときには金融庁や利用している証券会社の最新情報を確認しましょう。

株を売って住宅を「現金一括購入」するメリットと注意点

株式資産が十分に増えている場合には、株を売却して家やマンションを現金一括で購入することも選択肢になります。住宅ローンを利用しないため、ローンの利息負担を避けられるほか、毎月の返済が発生しないことが大きな特徴です。

また、住宅ローンの借り入れに伴って発生する費用の一部を抑えられる可能性があります。収入や年齢などの事情から希望する住宅ローンを組みにくい人にとっても、十分な金融資産があれば現金購入という方法を検討できます。

一方で注意したいのが、住宅購入によって手元の流動資産を使いすぎないことです。たとえば金融資産5,000万円の人が4,500万円を住宅購入に使用すると、購入直後の現金・金融資産が大幅に減ってしまいます。

住宅購入後にも固定資産税、管理費、修繕積立金、修繕費、引っ越し費用、家具・家電の購入費などが必要です。病気や転職などによる収入減にも備える必要があるため、「物件を現金で買えるか」だけでなく、「買ったあとに十分な資金が残るか」まで考えることが重要です。

株を一部売却して住宅ローンの頭金にする方法もある

株式をすべて売って住宅を購入するのではなく、一部だけを売却して頭金に充て、残りを住宅ローンで借りる方法もあります。金融資産をある程度残せるため、現金一括購入と住宅ローンの中間的な方法といえます。

たとえば5,000万円の住宅を購入する際、株式を1,500万円分現金化し、そのうち住宅購入時の諸費用を除いた金額を頭金として利用し、残りを住宅ローンで借りるといった組み方です。

頭金を増やせば借入額を小さくでき、支払利息を抑えられる可能性があります。一方、頭金を増やすために株式を大量に売却すると、運用資産が減るほか、含み益のある課税口座では売却によって税負担が発生する可能性があります。

そのため、「頭金は多ければ多いほどよい」と単純にはいえません。住宅ローンの金利、返済期間、毎月の返済可能額、住宅購入後に残す預貯金、保有株式のリスクなどを総合的に考える必要があります。

株式資産が多くても住宅ローン審査とは別に考える

株で大きな利益を出した人が住宅ローンを利用する場合に注意したいのが、金融資産が多いことと住宅ローンを希望額まで借りられることは必ずしも同じではないという点です。

住宅ローンの審査では金融機関ごとに基準があり、年収、勤務先、勤続状況、年齢、既存の借り入れ、返済負担、物件の担保評価など、さまざまな要素が確認されます。株式投資で一時的に大きな利益が出たとしても、それだけで給与などの継続的な収入と同じように評価されるとは限りません。

たとえば会社員として年収600万円があり、株式の売却によってその年だけ3,000万円の利益が出たとしても、「年収3,600万円の会社員と同じ条件で住宅ローンを借りられる」と考えるのは適切ではありません。

一方、多額の金融資産を保有していることが金融機関との相談で考慮される可能性はあります。具体的な審査基準や必要書類は金融機関によって異なるため、住宅ローンを予定している場合には株を売却する前から銀行などへ相談しておくと資金計画を立てやすくなります。

住宅購入直前に株価が下落するリスクにも注意

株式資産を住宅購入資金にする場合、税金と並んで重要なのが株価変動リスクです。現在の評価額が3,000万円だからといって、数か月後にも3,000万円で売却できる保証はありません。

たとえば3,000万円の株式資産のうち2,000万円を半年後のマンション購入に使う予定だったとします。購入直前に相場が30%下落すれば、単純計算で資産評価額は2,100万円程度まで減少します。そこから2,000万円を住宅資金として取り崩すと、金融資産の大部分を失うことになります。

住宅の手付金や決済代金など、「数か月後に必ず必要になるお金」を値動きの大きい株式のまま保有し続けることにはリスクがあります。購入時期と必要金額が決まっている場合には、必要資金をどの時点で現金化するかも重要な検討事項です。

一度に全株を売却するのではなく、住宅購入までの期間に応じて段階的に必要額を現金化する考え方もあります。ただし、株価がその後上昇すれば早く売ったことが結果的に不利になることもあるため、将来の株価を正確に予測する方法ではなく、あくまで価格変動リスクを管理するための考え方です。

株を売って家を買う前に確認したい資金計画

株式投資によって住宅を購入できるほど資産が増えた場合でも、住宅購入に金融資産を使い切らないことが重要です。住宅は購入して終わりではなく、その後も継続的に支出が発生します。

  • 株を売却した場合の税引き後の手取り額
  • 住宅の購入価格
  • 仲介手数料や登記費用などの購入諸費用
  • 住宅購入後に残す生活防衛資金
  • 固定資産税や管理費などの維持費
  • 将来必要になる修繕費
  • 住宅ローンを利用する場合の金利と返済額
  • 株式を売らずに保有し続ける場合との比較

たとえば金融資産が4,000万円あり、3,500万円の住宅を現金で購入できるとしても、それが家計にとって適切とは限りません。購入諸費用まで含めて3,700万円を支払えば、残る金融資産は300万円です。収入や家族構成によっては、住宅ローンを利用して手元資金を多めに残すほうが安全性を高められる場合もあります。

逆に十分な金融資産と安定収入があり、住宅ローンの利息や返済を負担したくないのであれば、現金購入が合理的になる場合もあります。大切なのは「株で儲かったから家を買う」という一点だけで決めず、住宅購入後の家計まで含めて判断することです。

まとめ:株の売却資金で住宅を買うなら税金と購入後の資産残高まで考える

株式を売却して得た資金を使い、家やマンションを購入することは可能です。全額を現金で支払う方法だけでなく、株式の一部を売却して頭金や購入諸費用に充て、残りを住宅ローンで調達する方法もあります。

ただし、課税口座で含み益のある株式を売却すれば、原則として利益部分には税金が発生します。また、株式の評価額は日々変動するため、住宅購入直前まで必要資金を株式で保有すると、相場急落によって予定していた資金を確保できなくなる可能性があります。

「いくらの株を持っているか」ではなく、「売却後に税金を差し引いていくら使えるのか」「住宅購入後に現金や金融資産がいくら残るのか」まで計算することがポイントです。特に多額の株式を売却する場合には税務上の影響も大きくなり得るため、必要に応じて税理士などの専門家へ相談し、住宅ローンについては金融機関に確認したうえで資金計画を立てるとよいでしょう。

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