初めて個人向け国債を買うときに迷いやすいのが、「変動10年」と「固定5年」のどちらを選ぶかです。特に金利が上昇している局面では、固定5年の金利に魅力を感じる一方、「数か月待てばもっと高くなるのでは」と考えやすくなります。結論からいえば、今の利率を5年間確保したいなら固定5年、今後さらに金利が上昇する可能性を重視するなら変動10年が考えやすい選択肢です。ただし、「変動10年ならいつ買ってもまったく同じ」というわけではありません。また個人向け国債は名称に「5年」「10年」とあっても、原則として満期まで資金を完全に拘束される商品ではなく、発行から1年経過後には中途換金できる仕組みがあります。ここでは財務省の公式情報をもとに、100万円を運用するケースも交えて違いを整理します。
- まず個人向け国債には3種類ある
- 2026年は固定5年が2%を超える水準まで上昇している
- 固定5年は買った時点の金利が5年間続く
- 固定5年の弱点は「その後もっと金利が上がっても2.2%のまま」
- 変動10年は金利上昇に対応できるのが大きな特徴
- では変動10年は「いつ買っても一緒」なのか?
- ただし変動10年なら「買った後の金利上昇」にある程度ついていける
- 逆に金利が下がれば固定5年が有利になることもある
- 「10年国債=10年間お金を引き出せない」は誤解
- ただし1年以内は原則として中途換金できない
- 1年後なら元本100万円をそのまま受け取れる?
- 100万円すべてを固定か変動のどちらかにする必要はない
- 購入時期を分けると「待てばよかった」の後悔を減らせる
- 定期預金1%と固定5年2.2%ならどれくらい違う?
- 今後も金利は上がりそうだから国債を待つべき?
- 固定5年が向いている人
- 変動10年が向いている人
- 1年定期を続けるメリットも十分ある
- 「5年・10年縛りだからメリットがない」とは言えない
- 100万円なら「生活防衛資金」を除いて考える
- 初めてなら「分散して試す」という方法もある
- まとめ:金利上昇が気になるなら変動10年、今の2%台を確保したいなら固定5年
まず個人向け国債には3種類ある
個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類があります。いずれも国が発行する個人向けの商品で、最低1万円から1万円単位で購入でき、利子は半年ごとに年2回支払われます。[参照:財務省・個人向け国債商品概要]
| 商品 | 満期 | 金利 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 変動10年 | 10年 | 半年ごとに変動 | 金利上昇時に受取利子が増える可能性 |
| 固定5年 | 5年 | 購入時に固定 | 5年間の利率を確定できる |
| 固定3年 | 3年 | 購入時に固定 | 固定5年より短期間で満期を迎える |
どの商品にも年率0.05%の最低金利が設定されています。また額面100円につき100円で購入し、満期には額面100円につき100円で償還されます。
したがって、株式や投資信託のように日々価格が上下する商品を保有する感覚とはかなり異なります。元本の安全性を重視しながら預貯金以外へ資金を置きたい人にとって、比較しやすい商品です。
2026年は固定5年が2%を超える水準まで上昇している
金利水準が以前と大きく変化している点は重要です。財務省が公表した2026年8月募集の個人向け国債では、固定5年の表面利率は年2.20%(税引前)でした。税引後では年1.753070%です。[参照:財務省・個人向け国債の募集情報]
なお、個人向け国債は毎月募集されています。2026年9月募集分については9月3日から30日までが募集予定で、金利は募集開始前に財務省から公表されます。金利は毎月同じではありません。
そのため「固定5年が2%を超えている」という認識自体は現在の金利環境を反映していますが、実際に購入するときには必ず自分が申し込む回号の利率を確認する必要があります。
固定5年は買った時点の金利が5年間続く
固定5年の最大の特徴はシンプルです。購入した回号に設定された利率が、満期まで変わりません。財務省によると固定5年の適用利率は、市場実勢利回りをもとに計算した期間5年の固定利付国債の想定利回りを基準として決められます。[参照:財務省・個人向け国債の金利について]
例えば100万円を年2.20%の固定5年へ投資したと仮定すると、税引前では年間2万2,000円相当の利子になります。実際には半年ごとの利払いとなり、利子には原則20.315%の税金がかかります。
単純計算で税引前の年間利子は100万円×2.20%=2万2,000円です。5年間同じ利率なら税引前では合計11万円相当になります。ただし実際の受取額は税金などを考慮する必要があります。
固定5年の弱点は「その後もっと金利が上がっても2.2%のまま」
固定金利のメリットとデメリットは表裏一体です。購入後に市場金利が下がっても自分の利率は下がりませんが、反対に市場金利が上昇しても自分が保有している固定5年の利率は上がりません。
例えば年2.2%で購入した数か月後、新しく募集される固定5年が仮に年2.5%になったとしても、以前購入した100万円分が自動的に2.5%になるわけではありません。以前の国債は2.2%のままです。
その意味では「もう少し待てばよかった」と感じる可能性はあります。しかし逆に数か月後の固定5年が2.0%へ下がれば、「2.2%のときに買っておいてよかった」となります。将来の金利が確実に分からない以上、固定金利を買うタイミングの正解を事前に確定することはできません。
変動10年は金利上昇に対応できるのが大きな特徴
変動10年では、適用利率が半年ごとに見直されます。財務省によると、各利払期の適用利率は原則として「基準金利×0.66」で計算されます。最低でも年0.05%が保証されています。[参照:財務省・変動10年の金利設定]
市場の10年金利が上昇し、それに伴って基準金利が上昇すれば、変動10年の適用利率も半年ごとの見直しで上昇する可能性があります。
例えば購入時の適用利率が仮に年1.5%だったとしても、その利率が10年間固定されるわけではありません。半年後の基準金利が上昇すれば適用利率が上がり、逆に基準金利が低下すれば適用利率も下がる可能性があります。
では変動10年は「いつ買っても一緒」なのか?
ここは非常に誤解しやすいところです。変動10年は「いつ買っても完全に同じ」ではありません。
毎月発行される変動10年はそれぞれ別の回号であり、最初に適用される利率は購入する回号によって異なります。また発行日が違うため、半年ごとの利率見直しの時期や利払日、満期日も異なります。
例えば3月募集の変動10年と9月募集の変動10年では、それぞれ異なる時点の基準金利から初回利率が決まり、その後も各回号の利子計算期間に合わせて半年ごとに利率が更新されます。[参照:財務省・変動10年の発行条件]
ただし変動10年なら「買った後の金利上昇」にある程度ついていける
「いつ買っても同じ」ではありませんが、固定5年との比較で重要なのはここです。変動10年では購入後も半年ごとに適用利率が見直されるため、金利が上昇し続けた場合、その影響を将来の利率に反映できます。
固定5年を2.2%で買った後に市場金利が大きく上昇しても2.2%のままですが、変動10年なら基準金利の上昇に応じて適用利率も上昇する可能性があります。
そのため「今後さらに金利が上がるかもしれないので、今の利率で5年間固定することに抵抗がある」という人には、変動10年の商品設計が心理的にも合わせやすいでしょう。
逆に金利が下がれば固定5年が有利になることもある
変動10年が常に固定5年より有利という意味ではありません。今後市場金利が低下すれば、変動10年の適用利率も低下する可能性があります。
一方、固定5年を高い金利のときに購入していれば、その後市場金利が下がっても購入時の利率が満期まで維持されます。
つまり金利が上昇していく局面では変動金利が有利になりやすく、金利が低下する局面では高い水準で固定できた固定金利が有利になりやすいという基本的な関係があります。ただし将来の金利方向を正確に予測することは困難です。
「10年国債=10年間お金を引き出せない」は誤解
個人向け国債を検討するとき、「10年間も資金を拘束されるのは困る」と考える人は少なくありません。しかし個人向け国債の「10年」は満期までの期間であり、10年間絶対に換金できないという意味ではありません。
財務省によると、変動10年、固定5年、固定3年はいずれも発行後1年が経過すれば、原則としていつでも中途換金できます。[参照:財務省・個人向け国債を知る]
この点は一般的な長期定期預金との比較で非常に重要です。「10年変動だから10年間完全にロックされる」という理解ではありません。
ただし1年以内は原則として中途換金できない
個人向け国債には重要な制約があります。原則として発行から1年間は中途換金できません。そのため、1年以内に使う可能性がある生活費、住宅購入資金、教育費、緊急予備資金などをすべて国債へ入れるのは避けたいところです。
例外として、保有者本人が亡くなった場合や大規模な自然災害で被害を受けた場合など、一定の条件では1年以内でも中途換金できる制度がありますが、通常の「急にお金が必要になった」という理由では原則1年間の制限があります。
したがって国債へ回す100万円は、少なくとも当面使う予定のない余剰資金から出すのが基本になります。
1年後なら元本100万円をそのまま受け取れる?
個人向け国債の中途換金では、額面100円につき100円で国が買い取る仕組みになっています。ただし何の負担もなく解約できるわけではありません。
中途換金時には原則として「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」が中途換金調整額として差し引かれます。簡単に表現すると、直近約1年分の税引後利子相当額を返すイメージです。[参照:財務省・中途換金]
そのため「5年・10年の商品だけれど、1年経過後なら必要に応じて換金できる。ただし直近約1年分の利子相当額は差し引かれる」と覚えておくと分かりやすいでしょう。
100万円すべてを固定か変動のどちらかにする必要はない
「固定5年と変動10年、どちらが正解か」と考えがちですが、100万円を一つの商品へ全部入れる必要はありません。個人向け国債は最低1万円から1万円単位で購入できます。
例えば100万円のうち50万円を固定5年、50万円を変動10年にする方法があります。固定5年部分では現在の金利を確保し、変動10年部分では今後の金利上昇に対応するという考え方です。
さらに「今買った直後に金利が上がるのが嫌」という場合には、100万円を一度に購入せず、例えば25万円ずつ時期を分ける方法も考えられます。
購入時期を分けると「待てばよかった」の後悔を減らせる
将来の金利を予測して一番高いところで固定5年を購入するのは現実的には困難です。そこで利用できるのが購入時期の分散です。
例えば余剰資金100万円について、今月25万円、数か月後25万円、その後も金利を見ながら25万円ずつ購入する方法があります。今後金利が上がれば後から購入する分は高い金利を利用できる可能性があり、逆に金利が下がれば先に購入した分について高い利率を確保できています。
これは最高金利を狙う方法ではありません。「100万円全部を買った翌月に金利が上がった」というタイミングリスクを小さくする方法です。
定期預金1%と固定5年2.2%ならどれくらい違う?
単純な比較例として、100万円を年1.0%の定期預金と年2.2%の固定金利で運用した場合を考えてみます。税金や複利効果などを単純化した税引前の概算です。
| 運用先 | 年利の例 | 100万円の年間利息 | 5年間の単純合計 |
|---|---|---|---|
| 定期預金 | 1.0% | 約1万円 | 約5万円 |
| 固定5年 | 2.2% | 約2万2,000円 | 約11万円 |
この条件が5年間続くと仮定すれば差は約6万円です。ただし定期預金は1年後に金利が上昇して、次の預け替えでは2%になる可能性もあります。逆に金利が低下する可能性もあります。
したがって「現在の1年定期1%」と「固定5年2.2%」だけを比較して固定5年が絶対に得と判断することはできません。固定5年では将来の金利上昇を逃す代わりに、現在の利率を5年間確定することにも価値があります。
今後も金利は上がりそうだから国債を待つべき?
今後の金利がさらに上昇する可能性はありますが、確実に上がるとは断定できません。個人向け国債の金利は市場金利の影響を受けるため、日本銀行の金融政策、物価、賃金、景気、国内外の債券市場などさまざまな要因で変動します。
「あと0.2%上がったら買おう」と待っているうちに市場金利が下がることもあります。逆に買った直後に上昇することもあります。
そのため金利予測に自信がない場合には、「全額を待つ」「全額を今固定する」という二択にせず、定期預金、固定5年、変動10年、普通預金などへ資金を分ける考え方が実用的です。
固定5年が向いている人
固定5年は、現在提示されている金利に納得でき、「今後多少金利が上がっても、現在の水準を5年間確保できれば十分」と考える人に向いています。
- 現在の固定5年の利率に満足している
- 今後金利が下がる可能性にも備えたい
- 運用結果を購入時点である程度確定したい
- 少なくとも1年間は使わない余剰資金がある
- 半年ごとの金利変動を気にしたくない
「最高の金利で買いたい」ではなく、「この利率なら十分」と考えられるかどうかが判断ポイントになります。
変動10年が向いている人
変動10年は、今後さらに金利が上昇する可能性を意識しており、現在の利率で5年間固定してしまうことを避けたい人と相性があります。
- 今後も市場金利が変化すると考えている
- 金利上昇時に受取利子が増える仕組みを利用したい
- 10年満期でも発行1年後から換金できるなら問題ない
- 利率が半年ごとに変わることを受け入れられる
- 元本の安全性を重視しながら長めに運用したい
ただし変動10年の金利は市場の10年金利がそのまま適用されるわけではなく、原則「基準金利×0.66」で決まる点には注意が必要です。
1年定期を続けるメリットも十分ある
金利上昇局面では、期間の短い定期預金を利用して次の金利上昇を待つ戦略にも合理性があります。1年後により高い定期預金へ預け替えられる可能性があるからです。
また預金には預金保険制度があり、一般預金等は一金融機関につき預金者一人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護対象です。個人向け国債とは安全性の仕組みが異なります。
一方、固定5年には「今後金利が下がっても現在の利率を確保できる」、変動10年には「今後の金利上昇を半年ごとの見直しで反映できる可能性がある」という定期預金とは異なる特徴があります。
「5年・10年縛りだからメリットがない」とは言えない
個人向け国債の満期が5年・10年と聞くと長期間の資金拘束に感じますが、発行1年後から中途換金できるため、実際の商品性は少し異なります。
固定5年なら高い固定金利を5年間確保できること、変動10年なら市場金利の変化に合わせて半年ごとに利率が見直されることが、それぞれ長期商品を利用するメリットです。
特に「普通預金に置いておくだけではもったいないが、株式のような価格変動リスクは取りたくない」という資金の置き場所として比較する価値があります。
100万円なら「生活防衛資金」を除いて考える
初めて100万円を国債へ投資する場合、利率より先に確認したいのが、その100万円を1年以内に使う可能性です。
病気、失業、家電の故障、自動車の修理、引っ越しなど、突然まとまった現金が必要になることがあります。発行後1年間は原則として中途換金できないため、手元資金をほぼゼロにして100万円全額を国債へ移すことは避けるべきです。
例えば預貯金が500万円あり、そのうち100万円を試しに国債へ移すケースと、貯金が110万円しかなく100万円を国債へ移すケースでは、同じ100万円の購入でも意味がまったく違います。
初めてなら「分散して試す」という方法もある
個人向け国債は1万円単位で購入できるため、最初から100万円を一つに決めなくても構いません。
例えば「固定5年40万円・変動10年40万円・1年定期20万円」と分ければ、固定金利、変動金利、短期預金を実際に比較できます。金利が上昇した場合も下落した場合も、一つの商品へ全額投入した場合より後悔を小さくしやすくなります。
もちろんこれは一例であり、最適な配分は資産総額、今後使う予定の資金、年齢、収入などによって異なります。「試しに100万円」という段階なら、商品を理解する意味でも分けて保有する考え方があります。
まとめ:金利上昇が気になるなら変動10年、今の2%台を確保したいなら固定5年
個人向け国債の固定5年と変動10年には、それぞれ明確な役割があります。固定5年は購入時の利率が5年間変わらないため、現在の高くなった金利を確保したい人に向いています。一方、購入後さらに市場金利が上昇すると、新しく発行される固定5年より低い利率を持ち続ける可能性があります。
変動10年は半年ごとに実勢金利に応じて適用利率が見直されます。そのため今後も金利が上昇すれば受取利子が増える可能性があります。ただし「変動10年はいつ買っても同じ」ではありません。購入する回号によって初回利率、発行日、利率の見直し時期、満期日などが異なります。[参照:財務省・変動10年発行条件]
また「5年・10年縛られる」という理解も正確ではありません。個人向け国債は原則として発行後1年間は中途換金できませんが、1年経過後はいつでも中途換金できます。その際には直前2回分の各利子相当額を基準とする中途換金調整額が差し引かれます。[参照:財務省・個人向け国債]
今後も金利が上がると考えるなら、1年定期で様子を見る方法にも、変動10年を利用する方法にも合理性があります。一方、「現在の固定5年の利率なら十分」と考えるなら、将来の最高金利を当てようとせず現在の利率を確保する考え方もあります。
100万円を運用する場合も、固定5年か変動10年の一方へ全額投入する必要はありません。固定と変動に50万円ずつ分ける、購入月を数回に分ける、定期預金にも一部を残すといった方法なら、「買った直後に金利が上がった」という後悔を抑えやすくなります。
最終的には将来の金利を当てることよりも、①1年以内に必要な資金を国債へ入れない、②現在の固定金利に満足できるか、③今後の金利上昇へ対応したいか、④途中で資金が必要になる可能性があるか、という4点から選ぶのが現実的です。購入直前には財務省が毎月公表する最新回号の利率を確認し、その時点の定期預金金利とも比較して判断するとよいでしょう。[参照:財務省・現在募集中の個人向け国債]
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