輸出企業はなぜ仕入れで払った消費税分が戻る?小学生でも分かるように仕組みをやさしく解説

経済、景気

輸出企業と消費税の関係については、「輸出企業だけが特別に得をしている」「外国へ売ると税金がもらえる」といった説明を見かけることがあります。しかし、仕組みそのものはもっと単純です。

ポイントは、日本の消費税は、日本国内で商品やサービスを使う人に負担してもらう税金として設計されているということです。そのため、外国で使われる商品を日本から輸出するときには、その販売価格に日本の消費税を上乗せしません。

ところが輸出企業も、商品を作るまでには日本国内で材料や部品、電気、事務用品などを買います。その代金には日本の消費税が含まれていることがあります。この「国内で商品を作る途中には税金を含む支払いをしたのに、外国へ売るときには日本の消費税を受け取らない」という違いを精算する仕組みがあるため、結果として企業へお金が戻る場合があります。

  1. 一番簡単に言うと「日本で使われる商品にだけ日本の消費税を残す」仕組み
  2. 100円の商品を作る例で考えると分かりやすい
  3. 国内販売なら「受け取った20円-支払った10円=10円」
  4. 同じ商品を外国へ200円で輸出すると計算が変わる
  5. 輸出の場合は「受け取った0円-支払った10円」になる
  6. 小学生向けなら「立て替えていた10円を返してもらう」と考えると近い
  7. 輸出した会社へ特別なボーナスを渡しているわけではない
  8. 輸出企業だけに存在する計算方法ではない
  9. パン屋さんで国内販売と輸出を比較してみる
  10. なぜ外国のお客さんから日本の消費税を取らないのか
  11. では輸出先の国では税金がかからないの?
  12. 自動車会社だけの特別制度ではない
  13. 大企業ほど戻る金額が大きく見える理由
  14. 「輸出企業は消費税を払っていない」という表現にも注意
  15. 輸出企業が仕入先から10円を直接返してもらうわけではない
  16. 「仕入先が納めた分を輸出企業が横取りする」わけでもない
  17. 国内販売と輸出販売を並べると仕組みが見える
  18. 輸出しただけで誰でもお金が戻るわけではない
  19. 輸出と関係のない支出なら何でも戻るわけではない
  20. 輸出企業が得をしているかどうかは別の議論
  21. 「会社が本当に税相当額を負担したのか」という議論との違い
  22. なぜこんな回りくどい仕組みにするのか
  23. 一言で説明するならこうなる
  24. まとめ:輸出企業へお金が戻るのは「外国で使う商品に日本の消費税を残さない」ため

一番簡単に言うと「日本で使われる商品にだけ日本の消費税を残す」仕組み

まず、消費税を「商品のバトンに少しずつ付いていくお金」と考えると分かりやすくなります。

日本国内で作られ、日本国内のお店で売られ、最後に日本国内の消費者が使う商品なら、そのバトンは最後まで日本にあります。そのため最終的に日本で商品を買った人が消費税を負担する形になります。

一方、日本で作った商品を外国へ送って外国の人が使う場合、その商品は日本では最終的に使われません。そこで日本から外国へ売る部分には、日本の消費税を付けないというルールになっています。

[参照] 国税庁「輸出取引の免税」

100円の商品を作る例で考えると分かりやすい

ここからは数字を単純化して説明します。ある会社が、商品を作るための材料を国内の会社から100円で買うとします。消費税率を10%として考えると、支払う金額は110円です。

この会社は、材料の本体価格100円に加えて、10円分を含んだ110円を支払ったことになります。

その材料から商品を作り、日本国内のお客さんへ200円で販売するなら、消費税20円を加えて220円で販売することになります。

内容 本体価格 消費税相当額 支払・受取額
材料を買う 100円 10円 110円を支払う
国内で商品を売る 200円 20円 220円を受け取る

この場合、販売時には20円を受け取っていますが、材料購入時にはすでに10円を含む金額を支払っています。そのため会社が国へ納める計算では、20円から10円を差し引き、残った10円を納めるという考え方になります。

国内販売なら「受け取った20円-支払った10円=10円」

消費税の基本的な仕組みを非常に単純化すると、事業者は「商品を売るときに受け取った消費税相当額」と「事業のために商品やサービスを買ったときに支払った消費税相当額」を比べます。

先ほどの会社なら、商品を売ったときに20円を受け取り、材料購入時には10円を支払っています。

そこで計算は次のようになります。

20円-10円=10円

会社が最終的に納める金額は10円になります。このように、流通の途中にいる会社が何度も同じ税金を丸ごと負担しないように作られています。

[参照] 国税庁「消費税のしくみ」

同じ商品を外国へ200円で輸出すると計算が変わる

では、まったく同じ商品を日本ではなく外国へ販売した場合を考えます。

材料は日本国内で100円+10円、合計110円で買っています。この部分は国内取引なので10円分が含まれています。

しかし完成した商品を外国へ200円で輸出するときには、日本の消費税20円を付けません。つまり外国のお客さんから受け取るのは200円です。

内容 本体価格 日本の消費税相当額 支払・受取額
日本で材料を買う 100円 10円 110円を支払う
外国へ商品を売る 200円 0円 200円を受け取る

ここに、輸出企業へお金が戻る理由があります。

輸出の場合は「受け取った0円-支払った10円」になる

国内販売なら商品を売った際に20円を受け取っていました。しかし輸出では、日本の消費税を外国のお客さんから受け取りません。

その一方で、日本国内で材料を購入したときには10円分を含んだ代金を支払っています。

計算すると、売る側で受け取った日本の消費税相当額は0円、買う側で支払ったものは10円です。

0円-10円=マイナス10円

このマイナス10円をそのまま企業の負担にしてしまうと、本来は外国で使われる商品なのに、商品を作る途中で日本の消費税が残ってしまいます。そこで一定の条件を満たして申告すると、この10円分が企業へ戻る仕組みになっています。

小学生向けなら「立て替えていた10円を返してもらう」と考えると近い

さらに簡単なたとえにしてみます。

先生から「外国のお友達に渡すプレゼントを作ってください。日本で使うものではないので、日本で最後に負担する税金は付けなくていいですよ」と言われたとします。

ところがプレゼントを作るために日本のお店で材料を買ったところ、材料代100円と一緒に10円を支払いました。

完成品を外国へ渡すときには、その外国の人から日本の10%分を受け取りません。すると作った会社だけが途中で支払った10円を抱えることになります。

そこで最後に計算して、「外国で使われる商品のために日本国内で含まれていた10円だから、この分は企業だけに残さないようにしましょう」と精算します。大まかな考え方はこれです。

輸出した会社へ特別なボーナスを渡しているわけではない

ここは誤解されやすいところです。輸出企業へ戻るお金を、「輸出すると国から利益を上乗せしてもらえる制度」と理解するのは正確ではありません。

先ほどの例なら企業へ戻るのは、国内で材料を購入するときに含まれていた10円です。商品価格200円の10%に当たる20円を特別にプレゼントしてもらう、という話ではありません。

輸出企業だから利益としてお金をもらうのではなく、日本国内で事業のために支払った代金に含まれていた分と、販売時に受け取った分を計算した結果、前者のほうが多ければ差額が戻るという仕組みです。

輸出企業だけに存在する計算方法ではない

「輸出企業だけが仕入れ時に支払った分を差し引ける」という説明も正確ではありません。

通常の国内販売をする事業者でも、売上時に受け取った分から、事業用の仕入れなどで支払った分を差し引いて納付額を計算するのが基本です。

輸出企業で目立つのは、輸出時に日本の消費税を受け取らないため、「受け取った金額より国内で支払った金額のほうが大きい」という状態が起こりやすいからです。

パン屋さんで国内販売と輸出を比較してみる

もっと身近な例としてパン屋さんを考えます。数字を分かりやすくするため、すべて税率10%として単純化します。

パン屋さんが小麦粉などを1,000円で買い、100円分を含めて1,100円を支払ったとします。そして作ったパンを国内で2,000円+200円で販売します。

国内販売なら受け取った200円と支払った100円を比べ、差の100円を納める形になります。

ところが同じパンを一定の要件を満たす輸出として外国へ2,000円で売れば、日本の消費税200円は受け取りません。一方、小麦粉を購入したときの100円は支払っています。この100円を企業に残したままにしないため、申告による精算が行われます。

なぜ外国のお客さんから日本の消費税を取らないのか

理由は、消費税が日本国内での商品・サービスの消費に負担を求める税金だからです。

日本からアメリカへ自動車を輸出し、アメリカの消費者がその車を使うのであれば、その消費は日本国内で行われるものではありません。そのため日本の消費税を輸出価格に付けないという考え方になっています。

国税庁も、輸出取引について、日本の消費税が国内での消費を対象とする税であるため、外国で消費されるものには課税しないという趣旨を説明しています。

[参照] 国税庁「輸出取引の免税」

では輸出先の国では税金がかからないの?

日本で消費税を付けないからといって、その商品が世界中どこでも税金なしで販売されるという意味ではありません。

輸出された商品については、輸入先の国で関税、付加価値税、売上税など、その国の制度に応じた税金がかかる場合があります。

つまり、「日本で使われない商品だから日本の消費税を残さない。その代わり、実際に使われる国ではその国のルールに従う」という考え方です。

自動車会社だけの特別制度ではない

輸出時のこの扱いについて、トヨタ自動車など大手輸出企業の名前と一緒に語られることがあります。しかし、自動車会社だけを対象とした特別な制度ではありません。

一定の条件を満たして商品を輸出する事業者であれば、企業規模や業種を問わず同じ基本ルールで計算します。

たとえば小さな会社が日本で雑貨を仕入れて外国へ輸出する場合でも、必要な要件を満たしていれば同じ仕組みが適用されます。

大企業ほど戻る金額が大きく見える理由

大手輸出企業では、年間に購入する部品、材料、設備、各種サービスなどの金額が非常に大きくなります。そのため、それらの支払いに含まれる金額も大きくなります。

さらに売上のうち輸出の割合が高ければ、日本国内で販売するときのように日本の消費税相当額を受け取る売上が相対的に少なくなります。

結果として差額が巨額になる場合があります。ただし、金額が大きいから別の計算方法を使っているわけではなく、基本的には小さな事業者と同じ考え方です。

「輸出企業は消費税を払っていない」という表現にも注意

輸出企業でも、日本国内で部品、原材料、設備、事務用品、サービスなどを購入するときには、価格に消費税が含まれる取引があります。

したがって「輸出企業は消費税を一円も負担していない」という言い方では仕組みを正しく説明できません。

正確には、国内で事業のために支払った代金に含まれる分と、国内販売などで受け取った分を一定のルールで計算し、最終的な差額を精算しています。

輸出企業が仕入先から10円を直接返してもらうわけではない

もう一つ混同されやすい点があります。輸出会社が部品会社から110円で部品を買った後、「輸出に使ったので10円を返してください」と部品会社へ請求するわけではありません。

部品会社への110円の支払いは通常どおり行われます。そして輸出会社は自社の消費税の申告時に、売上側と仕入れ側の数字をまとめて計算します。

つまり、取引先同士で後から税相当額を返し合う仕組みではなく、それぞれの事業者が自分の申告の中で計算する仕組みです。

「仕入先が納めた分を輸出企業が横取りする」わけでもない

消費税を説明するとき、「仕入先が国へ納めた税金を、輸出会社がそのまま受け取る」というイメージを持つ人もいます。しかし、各事業者はそれぞれの売上と仕入れに基づいて自分が納める金額を計算します。

部品メーカーには部品メーカーの計算があり、輸出企業には輸出企業の計算があります。

流通の途中で何度も税負担が積み重なり、最終価格が税金だらけになることを避けながら、日本国内で最終的に使われる部分へ税負担を残すように設計されています。

国内販売と輸出販売を並べると仕組みが見える

ケース 材料購入時に含まれる額 販売時に受け取る日本の消費税相当額 最終的な計算
国内販売 10円 20円 20円から10円を引いた10円を納める
輸出販売 10円 0円 支払側が10円多いため、その差を精算する

この表だけでも、輸出企業へお金が戻る理由をかなりシンプルに理解できます。

輸出しただけで誰でもお金が戻るわけではない

ここまで単純化して説明しましたが、実際の税務には条件があります。

国税庁によると、仕入れ等に含まれる税額について申告による精算を受けられるのは、原則として消費税の申告を行う事業者です。消費税を納める義務が免除されている事業者が、そのまま同じ扱いを受けられるわけではありません。

また、商品を外国へ送ったことについても一定の証明が必要です。物品の輸出であれば、取引内容に応じて輸出許可書などの資料を保存する必要があります。

[参照] 国税庁「事業者区分と仕入れ時に含まれる税額の精算について」

輸出と関係のない支出なら何でも戻るわけではない

会社がお金を支払ったものなら、何でも自動的に同じ計算へ入れられるわけではありません。

事業のための購入であることや、取引の性質、帳簿・請求書等について税法上の要件を満たしていることなどが必要になります。

国税庁は輸出取引について、商品の購入代金だけでなく、その取引に必要となる事務用品、広告宣伝費など一定の事業上の購入も計算対象になり得ると説明しています。

輸出企業が得をしているかどうかは別の議論

制度について議論するときは、「なぜ差額が企業へ戻るのか」という仕組みと、「この制度が経済政策として望ましいか」という評価を分ける必要があります。

仕組みとしては、日本で最終消費されない輸出品について日本の消費税を残さないための精算です。

その制度によって輸出産業や国内取引にどのような経済的影響が生じるか、価格転嫁が十分行われているかといった問題は、そこから先の別の論点になります。まず仕組みを正確に理解したうえで議論することが大切です。

「会社が本当に税相当額を負担したのか」という議論との違い

消費税については、「企業が仕入先へ支払う価格の中で、税相当額が実際にどの程度価格転嫁されているのか」という議論もあります。

取引価格は企業同士の交渉で決まるため、経済学的な意味で最終的に誰がどれだけ負担しているかという分析と、税法上どのように申告額を計算するかは同じ話ではありません。

今回説明しているのは税法上の基本的な計算の仕組みです。価格交渉力や転嫁状況まで含めた実質的な負担については、別途経済分析が必要になります。

なぜこんな回りくどい仕組みにするのか

「最初から輸出品の材料をすべて消費税なしで買えるようにすればいいのでは」と思うかもしれません。しかし、購入した瞬間には、その材料が国内向け商品に使われるのか輸出向け商品に使われるのか分からない場合があります。

同じ工場、同じ部品、同じ電気を使って国内向けと海外向けの商品を同時に製造する会社もあります。

そこで国内で行われる通常の購入についてはいったん通常どおり処理し、一定期間の売上と仕入れをまとめたうえで最終的に計算する方法が採られています。

一言で説明するならこうなる

「日本で買った材料には日本の消費税分が入っている。でも、その材料で作った商品を外国へ売るときは日本の消費税を取らない。だから最後に計算すると、国内で材料を買ったときに含まれていた分が余る。その余った分を企業だけの負担として残さないように精算している」ということです。

これなら、難しい税務用語を使わなくても基本的な理由を説明できます。

さらに短くするなら、「外国で使う商品には日本の消費税を残さないため」と覚えておけば大筋を外しません。

まとめ:輸出企業へお金が戻るのは「外国で使う商品に日本の消費税を残さない」ため

輸出企業と消費税の仕組みは、難しい専門用語を使わなくても理解できます。

日本国内で商品を販売する会社は、販売時に消費税相当額を受け取ります。一方、商品を作ったり仕入れたりする段階でも、材料などの購入代金に消費税相当額が含まれています。そのため両方を比べて、差額を国へ納めるというのが基本的な考え方です。

ところが輸出の場合、商品を外国へ売るときには日本の消費税を取りません。日本の消費税は日本国内で使われる商品・サービスに負担を求める税だからです。

その結果、「販売時に受け取った日本の消費税相当額は0円なのに、国内で材料などを購入したときには10円、100円、1万円……と含まれた金額を支払っている」という状態が生じます。

この差を放置すると、外国で使われる商品なのに、製造途中で日本の消費税分が商品価格に残ってしまいます。そこで申告時に売る側と買う側の数字を計算し、買う側で支払った分のほうが大きければ、その差額を企業へ戻します。

つまり輸出企業に特別なご褒美を与えているのではなく、「日本では最終的に使われない商品から、日本の消費税分を取り除くための精算」と考えると分かりやすいでしょう。

たとえば100円の材料を110円で買い、それを使った商品を外国へ200円で売った場合、外国のお客さんから日本の消費税20円は受け取りません。しかし材料を買ったときには10円分を含めて支払っています。その10円を企業だけに残さないようにする、というのが基本的な仕組みです。

そしてこれは自動車メーカーなど大企業だけを特別扱いするルールではありません。一定の条件を満たして輸出を行い、必要な申告や証明を行う事業者に共通する制度です。

[参照] 国税庁「輸出取引の免税」

[参照] 国税庁「消費税のしくみ」

経済、景気
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