ソフトバンク株式会社(証券コード9434)やNTT(証券コード9432)の株価を見ていると、小型株のように突然ストップ高になる場面がほとんどなく、「株価が安いのに、なぜ一気に上がらないのだろう」と疑問に感じることがあります。
結論からいうと、ソフトバンクやNTTにもストップ高の制度は普通に適用されており、制度上ストップ高になれないわけではありません。ただし、両社は時価総額が非常に大きく、発行済株式数や市場に流通している株式数も膨大です。そのため、ストップ高まで株価を押し上げるだけの買い注文が売り注文を圧倒する状況が、小型株より起こりにくいのです。
さらに両社は大規模な株式分割を実施したことで1株当たりの価格が低くなっていますが、「株価が低い=企業価値が小さい」という意味ではありません。この記事では、ソフトバンク株やNTT株がストップ高になりにくい理由を、制限値幅、時価総額、発行株式数、流動性、株式分割の仕組みから分かりやすく解説します。
- ソフトバンクやNTTにもストップ高は存在する
- 株価が安いからストップ高になりやすいわけではない
- NTTは2023年に1株を25株へ分割している
- ソフトバンクも2024年に1株を10株へ分割した
- 発行済株式数が桁違いに多い
- 大型株がストップ高になるには莫大な買い需要が必要
- 時価総額が大きいほど株価は一般に動きにくくなる
- NTTやソフトバンクは流動性が非常に高い
- 小型株がストップ高になりやすい理由
- 会社規模に対してニュースがどれくらい大きいかが重要
- 低位株と株式分割後の大型株は別物
- 株価200円前後だとストップ高までの上昇率は意外に大きい
- 株価が高い銘柄より、低価格帯のほうがストップ高までの率が大きいこともある
- NTTの株価が150円ならストップ高まで50円上昇が必要
- ソフトバンクも同じ理屈でストップ高になりにくい
- 通信株は利益や配当の予想が比較的立てやすい
- 高配当目的の投資家が多いことも値動きを安定させやすい
- 株主数そのものも非常に多い
- ストップ高になるためには「売りたい人がいなくなる」ほどの材料が必要
- もしNTTやソフトバンクに超巨大材料が出ればストップ高の可能性はある
- ストップ高にならないことは「人気がない」という意味でもない
- ストップ高しやすさを判断するときに見るべき項目
- 株価と時価総額を混同しないことが一番大切
- まとめ:ソフトバンクやNTTはストップ高になれないのではなく、巨大で流動性が高いためなりにくい
ソフトバンクやNTTにもストップ高は存在する
東京証券取引所では、株価が1日に極端に変動することを防ぐため、「制限値幅」が設定されています。前営業日の終値などを基準値段として、その日の株価が上昇・下落できる最大幅が決められています。
この上限価格まで株価が上昇することを「ストップ高」、下限価格まで下落することを「ストップ安」と呼びます。
ソフトバンクやNTTについても、ほかの東証上場株と同じように制限値幅が設定されています。「大型株だからストップ高制度がない」「通信株にはストップ高がない」といった特別なルールはありません。
株価が安いからストップ高になりやすいわけではない
NTTやソフトバンクを見ると、1株数百円程度の価格帯で取引されることがあるため、「数百円なら80円くらい簡単に上がりそう」と感じるかもしれません。
しかし株式投資では、1株の価格だけを見ると企業の大きさを見誤ります。重要なのは、基本的に「株価×発行済株式数」で考える時価総額です。
例えばA社が1株200円でも発行株式数が500億株あれば、単純計算の時価総額は10兆円です。一方、B社が1株5,000円でも発行株式数が1億株なら時価総額は5,000億円です。株価だけならB社のほうが25倍高く見えますが、企業全体の株式価値はA社のほうがはるかに大きいことになります。
NTTは2023年に1株を25株へ分割している
NTT株の1株当たり価格が低い大きな理由の一つが株式分割です。NTTは2023年7月1日付で、普通株式1株を25株に分割しました。
例えば分割前に株価4,000円で100株を持っていた場合、価値は約40万円です。25分割すると2,500株となり、理論上の1株価格は約160円になります。しかし2,500株×160円も約40万円なので、株主が持つ企業価値そのものが25分の1になったわけではありません。
つまりNTTが100円台・200円台で取引されていても、「100円台の小型株」と同じ性質ではありません。1株を細かく分割した結果として株価表示が小さくなっているだけです。
ソフトバンクも2024年に1株を10株へ分割した
ソフトバンク株式会社も2024年10月1日付で、普通株式1株を10株に分割しています。
仮に分割前の株価が2,000円なら、10分割後の理論上の価格は約200円です。しかし保有株数も10倍になるため、分割そのものによって株主が保有する価値が10分の1になるわけではありません。
このためソフトバンクとNTTはいずれも「株価が数百円だから小型株」と考えるのは適切ではありません。両社とも巨大な発行株式数を持つ大型株です。
[参照] ソフトバンク株式会社「株式分割に関する基準日設定公告」
発行済株式数が桁違いに多い
2026年3月末時点で、ソフトバンク株式会社の普通株式の発行済株式総数は約479億7,000万株です。同社が公表している流通株式数も約271億8,000万株あります。
NTTについては2026年6月末時点で、発行済株式総数が約905億5,000万株です。株式分割によって1株当たり価格を低くした結果、株数そのものが非常に大きくなっています。
これだけ大量の株式が存在し、多くの投資家が日々売買している銘柄では、株価が上がる途中で利益確定の売りや機関投資家の売買も大量に出てきます。そのため、一方的な買いだけでストップ高まで駆け上がる状況が起こりにくくなります。
大型株がストップ高になるには莫大な買い需要が必要
株価を動かす基本原理は買い注文と売り注文のバランスです。買いたい人が売りたい人より圧倒的に多ければ株価は上昇します。
小型株では市場に出回っている株数が少ないことがあるため、数十億円程度の資金が集中しただけでも売り物がなくなり、ストップ高買い気配になることがあります。
一方、NTTやソフトバンクのような超大型株では、株価が数%上昇するだけでも企業全体の時価総額では数千億円規模の価値変化になることがあります。ストップ高まで一気に上昇するには、それに見合う非常に大きな買い需要が必要になります。
時価総額が大きいほど株価は一般に動きにくくなる
例えば時価総額100億円の会社が20%上昇すると、単純計算では時価総額が約20億円増加します。
一方、時価総額10兆円の会社が20%上昇すると約2兆円の増加です。同じ20%上昇でも、必要となる市場の評価変化の規模が大きく異なります。
もちろん時価総額が20%増えるために必ず2兆円の現金が新規流入しなければならないという意味ではありません。株価は市場で成立した価格によって全株式が評価されるためです。ただし、大型株ほど厚い売買注文が存在しやすく、大量の投資家が参加しているため価格が急激に動きにくい傾向があります。
NTTやソフトバンクは流動性が非常に高い
株式市場では「流動性」という言葉が使われます。これは、どれほど売買しやすいかを表す考え方です。
NTTやソフトバンクのような知名度が高い大型株では、個人投資家だけでなく、国内外の機関投資家、投資信託、ETFなど幅広い市場参加者が売買しています。そのため売り注文と買い注文が多く、板が厚くなりやすいのが特徴です。
買い注文が増えても、その価格帯で売りたい投資家も次々現れるため、買い注文だけが圧倒的に積み上がるストップ高状態になりにくくなります。
小型株がストップ高になりやすい理由
逆にストップ高ランキングを見ると、時価総額の小さな新興企業や小型株が多く並ぶことがあります。
例えば発行株式が少ない会社に「大型契約を獲得した」「画期的な新薬の開発に成功した」「業績予想を2倍に上方修正した」といったニュースが出れば、一斉に買い注文が入り、それに対して売り物がほとんど出ないことがあります。
すると売買が成立しないまま買い注文だけが積み上がり、ストップ高買い気配になります。大型通信会社では同じニュースが出ても会社全体の業績に与える影響が相対的に小さい場合が多く、株価インパクトも限定的になりやすいのです。
会社規模に対してニュースがどれくらい大きいかが重要
例えば年間利益10億円の会社が、新規事業によって年間20億円の利益を追加できると発表した場合、利益が3倍になる可能性があります。このようなニュースなら株価が急騰しても不思議ではありません。
しかし年間数千億円規模の利益を上げている巨大企業が、新事業で数十億円の利益を得ると発表しても、会社全体への影響は数%程度かもしれません。
株価は単に「良いニュースが出たか」ではなく、そのニュースが現在の企業価値と比較してどれほど大きな変化をもたらすかによって反応します。
低位株と株式分割後の大型株は別物
株価が数百円以下の銘柄を「低位株」と呼ぶことがあります。しかし、価格が低い理由は銘柄によって大きく異なります。
業績悪化によって株価が数千円から100円まで下落した会社もあれば、NTTやソフトバンクのように株式分割によって意図的に1株当たり価格を下げた会社もあります。
後者については株価の数字だけを見ても企業規模は判断できません。NTTの100円台と、時価総額数十億円の会社の100円台は、同じ「1株100円台」でも市場での性質は大きく異なります。
株価200円前後だとストップ高までの上昇率は意外に大きい
東京証券取引所の制限値幅は、株価に対して一定割合ではなく価格帯ごとの金額で設定されています。
基準値段が100円以上200円未満なら制限値幅は上下50円、200円以上500円未満なら上下80円です。
例えば基準価格200円の株ならストップ高は280円となり、上昇率は40%です。250円なら330円で約32%上昇です。このように数百円の株がストップ高するには、1日で30~40%程度上昇しなければならないケースがあります。
株価が高い銘柄より、低価格帯のほうがストップ高までの率が大きいこともある
「株価が安ければストップ高しやすい」と思われがちですが、制限値幅の仕組みを見ると必ずしもそうではありません。
例えば株価1,000円未満の価格帯では制限値幅が150円です。基準値段900円ならストップ高1,050円で約16.7%上昇です。
一方、基準値段200円なら80円上昇して280円になる必要があり、上昇率は40%です。したがって価格帯によっては、低価格の大型株のほうがストップ高到達に必要な上昇率が高くなることさえあります。
NTTの株価が150円ならストップ高まで50円上昇が必要
具体例として、仮にNTTの基準値段が150円だったとします。100円以上200円未満の制限値幅は50円なので、その日のストップ高は200円です。
150円から200円への上昇率は約33.3%です。NTTほど巨大な企業の株式が、わずか1営業日で約33%再評価されるには、極めて大きな材料が必要になるでしょう。
単に「好決算だった」「増配した」という程度では、市場がすでにある程度予想していた場合、数%程度の上昇にとどまることも珍しくありません。
ソフトバンクも同じ理屈でストップ高になりにくい
ソフトバンク株式会社についても考え方は同じです。
株式分割後は1株当たり価格が数百円程度になっていますが、会社そのものは巨大な通信企業です。数百円の小型株と同じように、少額の買い資金だけで株価が大きく跳ねる構造ではありません。
通信事業は契約者数や料金収入など比較的安定した事業でもあるため、翌日に企業価値が30~40%変化するほどのニュースが発生すること自体も、小型成長株などと比べれば多くありません。
通信株は利益や配当の予想が比較的立てやすい
NTTやソフトバンクは通信インフラを中心とする企業であり、毎月の通信料金など継続的な収益が大きな割合を占めています。
バイオベンチャーの新薬承認や、小型IT企業の大型契約のように、一つのニュースで売上・利益予想が数倍になるタイプの会社とは事業構造が異なります。
将来の利益を投資家がある程度予測しやすい企業では、良いニュースも悪いニュースも事前に株価へ織り込まれやすく、決算発表だけで株価が数十%跳ねるケースが相対的に少なくなります。
高配当目的の投資家が多いことも値動きを安定させやすい
NTTやソフトバンクは配当を目的に長期保有する個人投資家からも人気がある銘柄です。
短期的な値上がり益を目的とする投資家ばかりではないため、株価が少し上昇しただけで全員が買いに殺到したり、少し下落しただけで全員が投げ売りしたりする構造にはなりにくいと考えられます。
長期保有株主、機関投資家、インデックス投資家、短期投資家など、多様な参加者が存在することも価格変動を吸収しやすくする要因です。
株主数そのものも非常に多い
NTTは2026年6月末時点で300万人を超える株主を抱えています。ソフトバンクも2026年3月末時点で普通株式の株主数が180万人を超えています。
これほど多くの株主が存在すると、ある価格では買いたい人、別の価格では売りたい人など、多様な注文が市場へ出ます。
株主数が多いことだけで株価の動きが決まるわけではありませんが、少数株主しかいない小型株と比べれば市場参加者が非常に多く、価格形成が分散されやすいと考えられます。
ストップ高になるためには「売りたい人がいなくなる」ほどの材料が必要
ストップ高で特に印象的なのは、上限価格に大量の買い注文が並び、売り注文がほとんど出ない「ストップ高買い気配」の状態です。
これは投資家の多くが「現在の価格では売りたくない。それより高くても買いたい」と考えている状態です。
NTTやソフトバンクのように大量の株式が流通している銘柄では、株価が上昇すれば一定数の投資家が利益確定売りを出します。その売りをさらに上回るほど猛烈な買い需要が必要になるため、ストップ高になりにくいのです。
もしNTTやソフトバンクに超巨大材料が出ればストップ高の可能性はある
もちろん、NTTやソフトバンクが永久にストップ高しないという意味ではありません。
会社の利益や企業価値を劇的に変える予想外のニュースが出て、市場参加者が一斉に買い注文を出せば、理論上はストップ高になることがあります。
例えば市場予想をはるかに超える利益増加、非常に大規模な資本政策、会社価値を大きく変える事業再編などが発表されれば、大型株でも急騰する可能性があります。ただし企業規模が大きいため、それに見合った材料の規模も極めて大きくなる必要があります。
ストップ高にならないことは「人気がない」という意味でもない
株価がストップ高にならないと、「この株は人気がないのでは」と感じることがありますが、それも必ずしも正しくありません。
大量の売買が毎日成立している大型株は、むしろ非常に多くの投資家から注目されています。
ストップ高は人気度を直接表すものではなく、その日の需給が制限値幅の上限に達するほど一方向へ偏った状態を示しています。日々数%ずつ上昇する銘柄でも、長期間続けば十分大きな値上がりになります。
ストップ高しやすさを判断するときに見るべき項目
| 確認項目 | ストップ高との関係 |
|---|---|
| 1株当たり株価 | 制限値幅を決めるが、企業規模そのものではない |
| 時価総額 | 大きいほど大幅な企業価値変化が起こりにくい傾向 |
| 発行済株式数 | NTT・ソフトバンクは非常に多い |
| 流通株式数 | 多いほど売買の厚みが生まれやすい |
| 出来高 | 高い銘柄は売買相手を見つけやすい |
| 浮動株 | 少ない銘柄ほど需給が偏ることがある |
| 材料の大きさ | 企業価値を劇的に変えるニュースほど急騰しやすい |
| 株式分割 | 1株価格を下げるが企業価値は基本的に変わらない |
「株価が200円だからストップ高しやすい」と判断するのではなく、これらを組み合わせて見ることが重要です。
株価と時価総額を混同しないことが一番大切
NTTやソフトバンクについての疑問を理解する最大のポイントは、「1株の値段」と「会社全体の値段」は別物だということです。
NTTが150円のときに100株買うには1万5,000円程度なので、個人投資家から見ると非常に買いやすい銘柄です。しかしNTTという会社全体の株式価値は巨大です。
これは会社側が株式分割によって投資単位を小さくし、個人投資家にも購入しやすくした結果です。安い価格表示だけを見て小型株と同じ値動きを期待すると、実際の値動きとのギャップが生じます。
まとめ:ソフトバンクやNTTはストップ高になれないのではなく、巨大で流動性が高いためなりにくい
ソフトバンク株式会社やNTTにも、東京証券取引所のストップ高・ストップ安の仕組みは通常どおり適用されています。したがって制度上ストップ高にならない銘柄というわけではありません。
ストップ高になりにくい最大の理由は、両社が非常に大きな時価総額と膨大な株式数を持つ大型株であり、ストップ高まで価格を押し上げるほど需給を一方向に偏らせることが難しいからです。
NTTは2023年に1株を25株へ、ソフトバンクは2024年に1株を10株へ分割しています。そのため現在の1株価格は低く見えますが、会社自体が小さくなったわけではありません。株価が2,000円から200円になっても株数が10倍になれば、理論上の企業価値は変わりません。
さらに東京証券取引所の制限値幅は一定のパーセントではありません。例えば基準値段が200円なら上限まで80円あり、ストップ高には40%もの上昇が必要です。巨大通信会社が1営業日で30~40%再評価されるほどの材料は頻繁には発生しません。
NTTやソフトバンクは株主数も多く、機関投資家、個人投資家、投資信託など多くの市場参加者が売買しています。株価が上がれば利益確定売りも出やすく、売り物が完全になくなる小型株特有のストップ高買い気配が起きにくい構造です。
したがって、株の値動きを考えるときには1株の価格だけでなく、時価総額、発行済株式数、流通株式数、出来高、企業規模に対するニュースのインパクトを見ることが重要です。NTTの150円と小型企業の150円は、同じ株価でもまったく別の性質を持つと理解すると、大型株がストップ高になりにくい理由が分かりやすくなります。
[参照] ソフトバンク株式会社「1株を10株とする株式分割」
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