NVIDIAが2026年8月26日に発表した2027年度第2四半期(Q2 FY2027)決算では、売上高が962.21億ドル、GAAP・Non-GAAPベースの売上総利益率(Gross Margin)はともに75.0%となりました。一方、次の第3四半期については売上高1,080億ドル±2%、売上総利益率74.0%±0.5ポイントという見通しが示されました。
この数字だけを見ると、「Vera Rubinの量産開始によって歩留まりが悪化し、粗利率が75%から74%へ低下するのではないか」という疑問が生じます。しかし、今回の決算内容と過去のBlackwell立ち上げ時を比較すると、少なくとも現時点で「Rubinの歩留まり悪化が3Qの粗利率低下の主因」と断定できる材料はありません。
むしろ重要なのは、NVIDIAがVera Rubinについて「full production(本格量産)」へ移行していると明言している一方、3Q売上高をQ2実績から約12%増となる1,080億ドルへ伸ばす計画を示している点です。本記事では、NVIDIAのQ2 FY2027決算を読み解きながら、Rubinの歩留まり、粗利率低下の意味、そしてBlackwell立ち上げ時との違いを整理します。
※本記事は2026年8月27日時点で公表されているNVIDIAの決算資料および報道等を基に作成しています。NVIDIAはVera Rubin GPUの具体的な歩留まり率を開示していないため、歩留まりに関する評価には推測を含みます。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
- NVIDIAの2027年度2Q決算を確認|粗利率は75%
- Vera Rubinの歩留まりは悪いのか?現時点で確認できる事実
- 3Q粗利率74%はRubinの歩留まり悪化を意味するのか
- Blackwell立ち上げ時の粗利率と比較するとどうか
- BlackwellとRubinでは「粗利率低下」の意味が少し違う
- むしろ注目すべきは「3Q売上高1,080億ドル」
- 粗利率74%をどう評価すべきか|簡単な具体例
- Vera Rubinで今後チェックすべき5つのポイント
- 「歩留まり」と「供給制約」は分けて考える必要がある
- 今回の決算からVera Rubinをどう評価するか
- まとめ|Rubinの歩留まり悪化と断定する材料はなく、3Q売上見通しはむしろ強い
NVIDIAの2027年度2Q決算を確認|粗利率は75%
まず、NVIDIAの2027年度第2四半期の主要数字を整理しておきましょう。Q2売上高は962.21億ドルとなり、前四半期の816.15億ドルから18%増、前年同期比では106%増となりました。
| 項目 | Q1 FY2027 | Q2 FY2027実績 | Q3 FY2027会社予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 816.15億ドル | 962.21億ドル | 1,080億ドル±2% |
| GAAP粗利率 | 74.9% | 75.0% | 74.0%±0.5pt |
| Non-GAAP粗利率 | 75.0% | 75.0% | 74.0%±0.5pt |
| データセンター売上高 | 752億ドル | 890億ドル | ― |
Q2のGAAP粗利率はQ1の74.9%から75.0%へ0.1ポイント上昇しました。Non-GAAPではQ1、Q2ともに75.0%です。そのため、Q2までの実績を見る限り、粗利率が悪化しているとはいえません。
さらにデータセンター部門の売上高は890億ドルとなり、前四半期比18%増、前年同期比117%増でした。AIインフラ需要そのものは依然として非常に強い状態です。
そして3Qの売上高見通しは1,080億ドル±2%です。Q2実績962.21億ドルから中央値ベースで計算すると約12.2%の前四半期比増収となります。したがって、「3Q見通しそのものが悪化した」というより、正確には「売上高は大幅増収を見込む一方、粗利率は75%から74%へ約1ポイント低下する見通し」と理解するのが適切です。
Vera Rubinの歩留まりは悪いのか?現時点で確認できる事実
結論から整理すると、NVIDIAは今回、Vera Rubinの具体的な歩留まり率を公表していません。したがって「Rubinの歩留まりは○%」「歩留まり悪化によって粗利率が1ポイント下がった」と数字で断定することはできません。
一方、NVIDIAはQ2決算発表で、Vera Rubinプラットフォームが「ramping into full production(本格量産へ移行している)」と説明しています。また、CoreWeave、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloud Infrastructure、NebiusなどのパートナーですでにRubinラックが稼働していることも明らかにしています。
さらにジェンスン・フアンCEOは決算発表時にVera Rubinについて「now in full production」と説明しています。少なくとも会社側の公式説明からは、歩留まり問題によってRubinの量産計画が大幅に遅れているというメッセージは読み取れません。
ここはBlackwell初期との大きな違いです。Blackwellでは後にNVIDIA自身がマスク変更を実施し、それによって生産歩留まりが改善したことを公式資料で明らかにしています。Rubinについては、今回のQ2発表時点で同様の設計変更や歩留まり問題は公表されていません。
3Q粗利率74%はRubinの歩留まり悪化を意味するのか
Q2の75.0%に対して3Qの粗利率見通しは74.0%±0.5ポイントです。中央値では1ポイントの低下になるため、数字だけを見るとネガティブに感じられます。
しかし、半導体企業の新製品立ち上げ期に粗利率が下がる理由は歩留まりだけではありません。新しいGPUそのものの製造コストに加えて、HBM(High Bandwidth Memory)、先端パッケージング、CPU、ネットワーク、NVLink、電源、冷却設備などを組み合わせたラックスケールシステム全体の製品ミックスが粗利率へ影響します。
特にVera Rubin世代ではHBM4など高性能メモリの重要性がさらに増しています。2026年にはメモリ価格の上昇がNVIDIAのコスト要因として市場で強く意識されており、今回の粗利率低下を「Rubin GPUそのものの歩留まり」だけで説明するのは適切ではありません。
つまり、「粗利率低下=半導体ダイの歩留まり悪化」ではありません。粗利率は販売価格からGPU製造費、メモリ、パッケージ、システム部材などさまざまな売上原価を差し引いて決まるためです。
Blackwell立ち上げ時の粗利率と比較するとどうか
Rubinを評価するうえで参考になるのが、前世代Blackwellの立ち上げ時です。Blackwellが発表された2024年を含むFY2025を見ると、NVIDIAのGAAP粗利率はQ1 FY2025の78.4%からQ2 FY2025には75.1%へ低下しました。
| 時期 | GAAP粗利率 | 次四半期ガイダンス | 新製品の状況 |
|---|---|---|---|
| Q1 FY2025 | 78.4% | ― | Blackwell発表後 |
| Q2 FY2025 | 75.1% | Q3:74.4%±0.5pt | Blackwell量産準備 |
| Q1 FY2027 | 74.9% | Q2:74.9%±0.5pt | Rubin立ち上げ前 |
| Q2 FY2027 | 75.0% | Q3:74.0%±0.5pt | Rubin本格量産へ |
BlackwellのケースではQ2 FY2025の実績75.1%から、Q3ガイダンス74.4%へ0.7ポイント低下する予想でした。今回のRubinではQ2実績75.0%からQ3ガイダンス74.0%へ1.0ポイント低下するため、直前四半期との単純比較ではRubin期の低下幅のほうが0.3ポイント大きいことになります。
ただし、Blackwellではさらに前のQ1 FY2025に粗利率78.4%という非常に高い水準を記録しており、Q2には75.1%まで3.3ポイント低下していました。つまり新アーキテクチャへの移行期に粗利率が低下すること自体は、NVIDIAでは過去にも確認されています。
そしてBlackwellでは実際に生産上の問題がありました。NVIDIAはQ3 FY2025のCFO Commentaryで、Blackwellについて生産歩留まりを改善するためのマスク変更を完了したと説明しています。この点はRubinを評価するうえで重要な比較材料になります。
BlackwellとRubinでは「粗利率低下」の意味が少し違う
BlackwellとRubinでは数字だけでなく、会社から発信されている情報にも違いがあります。Blackwellではマスク変更と歩留まり改善が公式に言及されたのに対し、今回のRubinについてNVIDIAは歩留まり問題を公表していません。
むしろRubinについては「full production」という表現を使用し、複数のクラウド事業者でラックが稼働していることを強調しています。したがって、現時点の公開情報だけを基準にすれば、Rubinの1ポイントの粗利率低下をBlackwell初期の歩留まり問題と同じものとして扱う根拠は不足しています。
もちろん「問題が公表されていない=歩留まりが完璧」という意味でもありません。NVIDIAがRubinの具体的な歩留まり率を公開していない以上、外部の投資家が正確な数値を把握することは困難です。
そのため投資家としては、歩留まり率そのものを推測するより、①Rubinの出荷スケジュールに遅延が発生していないか、②データセンター売上高が計画通り伸びているか、③粗利率が想定以上に低下していないか、④供給制約について会社がどのような説明をしているか、という複数の指標から判断するほうが合理的です。
むしろ注目すべきは「3Q売上高1,080億ドル」
粗利率74%だけを見ると弱く感じますが、3Qガイダンス全体を見ると印象はかなり変わります。NVIDIAはQ2の962.21億ドルから3Qには1,080億ドルへ売上高を伸ばす計画です。
しかも、この1,080億ドルという会社予想は決算発表前の市場予想を上回りました。Reutersは決算発表後、LSEGがまとめた市場予想が約1,041.9億ドルだったのに対し、NVIDIAが1,080億ドルを予想したと報じています。
単純計算すると、会社予想は市場予想を約38億ドル上回ります。したがって、3Qの「売上高見通し」は弱いどころか、市場予想を上回る強いガイダンスだったと評価できます。
またNVIDIAは3Qガイダンスに中国向けデータセンターCompute売上高を織り込んでいません。それでも1,080億ドルを見込んでいるため、Rubinを含めたAIインフラ需要について会社側が大幅な失速を想定しているとは考えにくい内容です。
粗利率74%をどう評価すべきか|簡単な具体例
粗利率が75%から74%へ低下する意味を、簡単な例で考えてみましょう。売上高が100億ドルで粗利率75%なら、売上総利益は75億ドルです。一方、売上高が120億ドルへ増加し、粗利率が74%へ下がった場合、売上総利益は88.8億ドルになります。
つまり、粗利率が1ポイント低下しても、売上高がそれ以上のペースで伸びれば売上総利益の絶対額は増加します。NVIDIAのQ3ガイダンスもこの視点で見る必要があります。
Q2実績の売上高962.21億ドル×粗利率75%を単純計算すると売上総利益は約721.7億ドルです。これに対し、Q3ガイダンス中央値1,080億ドル×74%なら約799.2億ドルになります。
もちろん実際の数字はガイダンスから上下しますが、この単純計算では粗利率が1ポイント下がっても、売上総利益は約77.5億ドル増えることになります。したがって、粗利率74%という数字だけを見て「Rubinの収益性が急速に悪化している」と判断するのは早計です。
Vera Rubinで今後チェックすべき5つのポイント
Rubinの立ち上がりが本当に順調なのかを判断するには、今後数四半期の数字を追う必要があります。特に注目したいのは次の5点です。
- 粗利率:74%からさらに急低下するのか、それとも安定・回復するのか
- Rubinの出荷量:量産・顧客導入スケジュールに遅延が発生しないか
- データセンター売上高:Rubin移行後も前四半期比で高成長を維持できるか
- HBM4などの部材コスト:メモリ価格上昇を販売価格やコスト削減で吸収できるか
- 供給制約:需要不足ではなく供給不足が成長の制約になっている状態が続くか
特に重要なのが粗利率の「低下理由」です。例えば次回以降の決算で、NVIDIAがRubinの設計変更、生産上の問題、歩留まり改善策などを具体的に説明し始めた場合は、Blackwell初期と似た状況として警戒する必要があります。
逆に、Rubinの出荷が順調に増え、売上高が伸びながら粗利率が70%台前半~半ばで安定するのであれば、今回の74%ガイダンスは新製品の量産立ち上げやメモリ・システムコストを伴う通常の製品ミックス変化だった可能性が高まります。
「歩留まり」と「供給制約」は分けて考える必要がある
NVIDIAを見るときに混同しやすいのが「歩留まりが悪いこと」と「供給が足りないこと」です。この2つは同じではありません。
歩留まりとは、製造した半導体などのうち正常に利用できる製品の割合を指します。一方、供給制約はGPUそのものだけでなく、TSMCの先端製造・パッケージング能力、HBM、ネットワーク部品、電源設備、ラックの組み立て能力など、AIシステムを完成させるまでのどこかがボトルネックになっても発生します。
NVIDIAのAI製品は現在、単体GPUだけを販売するビジネスから巨大なラックスケールシステムを提供するビジネスへ変化しています。そのため今後は、GPUダイの歩留まりだけで粗利率や出荷量を説明することがますます難しくなると考えられます。
今回の決算からVera Rubinをどう評価するか
今回のQ2 FY2027決算から読み取れる範囲では、Vera Rubinについて明確な歩留まり悪化を示す証拠は確認できません。NVIDIA自身はRubinを本格量産段階と説明しており、複数のクラウド事業者でラックが稼働していることも公表しています。
確かにQ3粗利率見通しは75%から74%へ1ポイント低下します。しかし、過去のBlackwell移行期にも粗利率低下は発生しており、新世代製品への移行時にマージンが一時的に下がること自体は異例ではありません。
さらに今回は、Q3売上高ガイダンスが1,080億ドルと市場予想を上回っています。「売上高の成長見通しが弱い」のではなく、「売上高は強い一方で粗利率には約1ポイントの圧力がかかる」という決算と整理したほうが実態に近いでしょう。
Blackwellとの比較で最も重要なのは、BlackwellではNVIDIA自身がマスク変更と歩留まり改善を後に明らかにしたのに対し、Rubinでは現時点で同様の問題が公表されていないことです。そのため、粗利率74%だけを根拠にRubinの歩留まり問題を推定するのは材料不足です。
まとめ|Rubinの歩留まり悪化と断定する材料はなく、3Q売上見通しはむしろ強い
NVIDIAのQ2 FY2027決算では、GAAP粗利率がQ1の74.9%から75.0%へ上昇し、Non-GAAP粗利率は75.0%を維持しました。3Qは74.0%±0.5ポイントへ低下する見通しですが、これだけでVera Rubinの歩留まりが悪いとは判断できません。
過去のBlackwell立ち上げ時にも粗利率は低下しており、NVIDIAの新製品移行では製品ミックスやシステムコストによる一時的なマージン低下が起こり得ます。Blackwellでは後にマスク変更による歩留まり改善が公式に説明されましたが、今回のRubinでは同様の問題は公表されていません。
また、3Q売上高ガイダンスは1,080億ドルで、Q2実績から約12%増となるだけでなく、決算前の市場予想約1,042億ドルも上回りました。この点を考えると、Rubinの立ち上げについて現段階で強く警戒すべき決算というより、「需要と売上成長は非常に強いが、メモリを含むコストや製品ミックスによる粗利率圧力を確認する局面」と見るのが妥当です。
今後、本当にRubinの歩留まり問題が存在するかを判断するには、3Q以降の粗利率、Rubinの出荷ペース、データセンター売上高、HBM4などの部材コスト、そしてNVIDIA経営陣による生産・供給制約についての説明を継続的に確認する必要があります。
主な参照資料:NVIDIA「NVIDIA Announces Financial Results for Second Quarter Fiscal 2027」、NVIDIA「NVIDIA Announces Financial Results for Second Quarter Fiscal 2025」、NVIDIA「CFO Commentary on Third Quarter Fiscal 2025 Results」、Reutersによる2026年8月26日のNVIDIA決算報道。数値・会社見通しは発表時点の情報です。
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