生成AIや機械学習の進歩によって、企業分析、ニュース解析、ポートフォリオ構築などを自動化する投資サービスが身近になりつつあります。こうした流れを見ると、将来は人間が個別株を選ぶ必要がなくなり、ほとんどの投資家がインデックスファンドを保有するようになるのではないか、と考えることもできます。
しかし、AI投資の普及とインデックス投資の拡大は同じ現象ではありません。AIはインデックス運用だけでなく、個別株の選別、アクティブファンド、クオンツ運用、スマートベータなどにも利用できます。そのため将来の投資市場は、「インデックスだけになる」というより、低コストのインデックスを土台にしながらAIを使った運用手法が多様化していく可能性を考えるほうが自然です。
この記事では、インデックス投資が支持される理由を確認したうえで、AIが普及した場合に個別株やアクティブ運用がどう変化するのかを整理します。
そもそもインデックス投資を選ぶ人が増えやすい理由
インデックスファンドとは、TOPIXやS&P500など特定の指数への連動を目指す投資信託やETFです。市場全体や多数の銘柄へまとめて投資できるため、個別企業を一社ずつ分析しなくても分散投資しやすい特徴があります。
米SEC(米国証券取引委員会)の投資家向け情報でも、インデックスファンドは一般的にパッシブ運用を採用し、銘柄を頻繁に売買する必要がないことなどから運用コストを抑えられる可能性があると説明されています。ただし、すべてのインデックスファンドがアクティブファンドより低コストとは限らない点にも注意が必要です。[参照]
さらに、長期にわたって市場平均を上回り続けることは簡単ではありません。S&P Dow Jones Indicesの「SPIVA Japan Year-End 2025」では、日本で提供されるアクティブファンドを各ベンチマークと比較しています。2025年は日本大型株カテゴリーなど一部で良好な結果も見られた一方、15年間という長期では全カテゴリーでアクティブファンドの大多数がベンチマークを下回ったと報告されています。[参照]
このように、分散しやすさ、運用のわかりやすさ、コスト、アクティブ運用で市場平均を継続的に上回る難しさなどが、インデックス投資が選択肢になりやすい背景にあります。
AI投資が普及しても「AI=インデックス投資」ではない
重要なのは、AIが投資判断を行うことと、インデックスへ投資することは別の概念だという点です。インデックス運用では基本的に決められた指数への連動を目指しますが、AIは大量のデータを解析して投資対象や資産配分を決めるためにも利用できます。
例えばAIが企業の決算、財務指標、株価、ニュースなどを分析し、「A社を増やしてB社を減らす」と判断する仕組みなら、これはインデックスに単純連動する運用ではなく、実質的にはアクティブ運用やクオンツ運用に近い考え方になります。
一方、投資家の年齢、目標、投資期間、リスク許容度などから適切な資産配分を提案し、その中身として低コストETFを利用する方法もあります。米SECのInvestor.govでは、自動化された投資助言サービスであるロボアドバイザーについて、質問への回答などをもとに投資家の目標や投資期間、リスク許容度などを把握してポートフォリオを作成・管理するサービスと説明しています。また、サービスによっては幅広いETFを中心に利用する場合があるとされています。[参照]
つまりAIは、インデックス投資を便利にする技術にも、インデックスを上回ろうとする技術にもなり得ます。
将来はインデックス投資家ばかりになるのか
インデックス投資の比率が今後さらに高まる可能性はあります。実際、米国ではすでにパッシブ運用の存在感が非常に大きくなっています。Investment Company Institute(ICI)によると、2026年6月時点の米国の長期投資信託・ETFでは、インデックス型の純資産が約21.88兆ドル、アクティブ型が約18.83兆ドルで、インデックス型は合計の53.7%を占めています。[参照]
ただし、この数字から「いずれ全員がインデックス投資家になる」と結論付けることはできません。市場には依然として巨大なアクティブ運用資産が存在し、個別株を直接取引する個人投資家や機関投資家もいます。
また、ETFそのものもインデックス型だけではありません。ICIによると、2025年末には米国で1940年投資会社法に基づくインデックス型ETFが1,970本、アクティブETFが2,454本存在していました。純資産ではインデックス型ETFのほうが大きいものの、ETFという仕組みの中でもアクティブ運用の商品が多数存在しています。[参照]
したがって将来は「個別株かインデックスか」という二択ではなく、インデックスファンド、AIを活用するアクティブETF、クオンツファンド、個別株などが併存する市場になる可能性があります。
全員がインデックス投資をすると市場には何が起こるのか
インデックス投資について考えるときに興味深いのが、株価を誰が決めるのかという問題です。株式市場では、企業の業績や将来性などを分析した投資家が株を売買し、その取引を通じて価格が形成されています。
例えば市場にA社とB社があり、A社の業績が急速に改善しているにもかかわらず割安な価格で放置されているとします。企業分析を行う投資家が存在すれば、A社を買う動きが増え、その情報が株価へ反映されていきます。
反対に、市場参加者のほぼ全員が「指数に入っているから機械的に買う」という行動しかしなくなれば、企業価値と株価のずれを発見して取引する参加者が相対的に少なくなります。すると価格のゆがみを利用できる機会が増え、それを探すアクティブ投資家に経済的なインセンティブが生まれる可能性があります。
そのため、インデックス投資の人気が高まったとしても、アクティブ投資が完全になくなるとは限りません。むしろパッシブ運用と、価格のゆがみを探すアクティブ運用が互いに存在することで市場が成り立つと考えることができます。
AIによって個別株投資はむしろ高度化する可能性もある
AIの進歩は個別株投資を消滅させるのではなく、これまで人間が行っていた企業分析の一部を自動化する方向にも働きます。大量の企業データを短時間で比較することはコンピューターが得意とする分野だからです。
例えば数千社の財務データから「利益率が改善している」「負債が少ない」「株価が利益に対して割安」といった条件を設定し、候補企業を絞り込むことができます。さらに高度な運用では、複数のデータやモデルを組み合わせてポートフォリオを構築することも考えられます。
この考え方はすでに「クオンツ」や「スマートベータ」と呼ばれる運用にもつながっています。Investor.govでは、数値的な手法やアルゴリズムを利用して投資対象を選択する仕組みを持つ非伝統的なインデックスファンドについても解説しています。[参照]
将来的には「人間が数十社の決算書を読んで銘柄を選ぶ」という個別株投資だけではなく、AIが大量の企業を分析し、人間がそのモデルや投資方針を選択するという形の個別株・アクティブ投資がさらに一般化する可能性があります。
インデックスとAI運用の境界は曖昧になっていく
今後特に注目すべきなのは、インデックス投資とアクティブ投資の中間的な商品です。従来の代表的なインデックスファンドは時価総額など一定のルールで構成された指数への連動を目指しますが、現在では独自の条件で銘柄を選ぶ指数もあります。
例えば「割安な企業を重視する」「利益の質が高い企業を重視する」「配当の高い企業を重視する」といったルールで構成するスマートベータがあります。形式上は指数を追跡するパッシブファンドでも、指数を設計する段階にはアクティブ運用に似た考え方が含まれています。
ここへAIが加われば、さらに複雑なデータから銘柄を分類したり、投資ルールを研究したりすることが容易になる可能性があります。その結果、将来は「完全な市場平均」と「人間による個別株投資」の間に、さまざまなAI・ルールベース運用の商品が並ぶことも考えられます。
つまりAI時代には、インデックス投資が増える一方で、「どの指数・ルールを選ぶか」という新しい意味での銘柄選択が重要になる可能性があります。
AIが優秀になっても「必ず市場平均を上回る」とは限らない
AI運用について注意したいのは、AIを使えば自動的に高いリターンを得られるわけではないことです。投資市場では多くの参加者が同じように利益を得ようとしており、優れた分析方法が知られれば、その情報を利用する競争も激しくなります。
例えば「ある財務指標を持つ企業は将来上昇しやすい」という法則をAIが発見したとしても、多くの投資家が同じ法則を利用して対象銘柄を購入すれば、その銘柄の価格は上昇します。割安さが解消されれば、以前と同じ超過リターンを得ることは難しくなります。
さらにAIモデルには、過去のデータでは優秀でも将来の市場環境では機能しない「過剰適合」の問題や、想定外の経済危機・制度変更などを十分に織り込めないリスクがあります。AIという名称だけで投資商品の優劣を判断するのではなく、運用方法、コスト、リスク、分散状況などを確認することが重要です。
個人投資家にとって重要なのはAIか人間かではなく投資目的
個人投資家の立場では、「AIと人間のどちらが優秀か」という議論だけで投資方法を決める必要はありません。投資期間、許容できる損失、運用に使える時間、知識、手数料などによって適した方法は変わります。
例えば長期の資産形成を目的とし、企業分析へ時間をかけたくない人であれば、広く分散された低コストのインデックスファンドは比較的理解しやすい選択肢です。一方、企業分析そのものに価値を感じ、自分の判断で市場平均を上回ることを目指したい人にとっては個別株やアクティブ運用という選択肢があります。
また「資産の大部分はインデックスファンドで運用し、一部だけ個別株やAI運用の商品に投資する」といった組み合わせも可能です。投資方法は一つだけに統一する必要はありません。
AIは投資目的を決めてくれる魔法の仕組みではなく、その目的を実現するための分析・運用手段の一つと捉えると、AI投資とインデックス投資の関係を理解しやすくなります。
まとめ:AI時代でもインデックス・個別株・アクティブ運用は共存すると考えられる
低コストで分散投資しやすいインデックスファンドは、AIが発達する将来においても重要な投資手段であり続ける可能性があります。実際に米国ではインデックス型ファンドの資産規模が大きくなっており、ETF市場そのものも拡大しています。
しかし、AIの普及がそのまま「全員がインデックスを買う未来」を意味するわけではありません。AIは個別企業の分析やアクティブ運用にも使えるため、AIを活用して市場平均を上回ろうとする運用も同時に発達すると考えられます。また、市場価格の形成には企業価値を分析して売買する参加者の存在も重要です。
そのため将来の投資市場は、インデックス投資がさらに一般化しながら、AIを利用したアクティブ運用、スマートベータ、クオンツ運用、そして従来型の個別株投資が共存するという姿が考えやすいでしょう。投資家にとって大切なのは流行している運用方法を追いかけることではなく、それぞれの仕組み・コスト・リスクを理解し、自分の投資目的やリスク許容度に合った方法を選ぶことです。
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


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