S&P500、オルカン、GPIF、ウェルスナビ、コモンズ30ファンドについて、「2017年初から現在までどのくらい上昇したのか」を比較したくなることがあります。しかし、この5つは同じ種類の商品ではなく、単純に基準価額や指数を並べるだけでは正確な比較になりません。
S&P500は株価指数、いわゆるオルカンは投資信託、GPIFは国内外の株式・債券などを組み合わせた公的年金の運用主体、ウェルスナビは複数のETFへ分散投資するロボアドバイザー、コモンズ30ファンドは日本企業を中心としたアクティブファンドです。さらに、現在「オルカン」と呼ばれるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は2018年10月31日設定なので、2017年初には存在していません。
そこでこの記事では、2026年8月末時点で確認できる公表データを使いながら、2017年初から比較できるものは2017年から、存在しなかった商品については設定来または参考となる指数で整理します。なお、過去の運用成績は将来のリターンを保証するものではありません。
- 先に結論|2017年からの上昇率は単純な1枚表にはできない
- S&P500は2017年初から約3.4倍|価格指数なら約+242%
- オルカンは2017年にはまだ存在しない
- オルカンは設定来で約+288%|1万円が約3万8842円
- GPIFは株式100%ではないのでS&P500と比べると伸びが小さく見える
- ウェルスナビには「1つの上昇率」がない
- コモンズ30ファンドは2017年から現在まで基準価額が約+180%
- なぜS&P500やオルカンの数字が大きいのか
- 上昇率だけで投資先の優劣を決めると危険
- 100万円を投資したイメージにすると分かりやすい
- 公平に比べるなら「同じ日・円建て・配当込み」にそろえる
- 「2017年初から」で最も注意すべきポイント
- まとめ|2017年からの比較ではS&P500約+242%、コモンズ30約+180%。オルカンは2018年設定
先に結論|2017年からの上昇率は単純な1枚表にはできない
最初に、大まかな結果を整理すると次のようになります。数字の条件が異なるため、順位表としてではなく「それぞれどの程度増えたかを見る参考値」と考えるのが適切です。
| 対象 | 期間・条件 | 上昇率・収益率の目安 |
|---|---|---|
| S&P500 | 2017年1月3日~2026年8月末近辺、米ドル建て価格指数 | 約+242% |
| オルカン | 2018年10月31日設定~2026年8月28日、基準価額 | 約+288% |
| GPIF | 2017年度~2024年度を複利計算 | 約+70% |
| ウェルスナビ | 2016年1月19日~2026年6月末、積立なし・円建て | リスク許容度1で+123.9%~5で+289.9% |
| コモンズ30ファンド | 2017年1月18日~2026年8月27日、基準価額単純比較 | 約+180% |
この表で最も大切なのは、数字をそのまま「S&P500がGPIFより優秀」「ウェルスナビ5がオルカンより優秀」と順位付けしないことです。期間、配当の扱い、為替、手数料、資産配分、リスクが違うからです。
特にS&P500の約+242%は配当を含まない米ドル建て価格指数の比較です。一方、オルカンの基準価額はファンド内部で配当等が反映されています。完全に同じ条件ではありません。
S&P500は2017年初から約3.4倍|価格指数なら約+242%
S&P500は米国の代表的な大型株約500社で構成される株価指数です。米セントルイス連邦準備銀行のFREDによると、2017年最初の取引日である2017年1月3日のS&P500終値は2,257.83でした。[参照:Federal Reserve Bank of St. Louis FRED「S&P 500」]
2026年8月末近辺にはS&P500は7,700ポイント前後まで上昇しています。2,257.83から7,715程度まで上昇したとすると、計算は「7,715÷2,257.83-1」となり、約+242%、約3.42倍です。
100万円を指数そのものと同じ値動きで運用できたと仮定すれば、単純計算で約342万円相当になったイメージです。ただしこれは税金、手数料、配当、為替を無視した指数上の計算です。
S&P500は「円建て」で見ると結果が変わる
日本の投資家がS&P500連動投信を保有した場合、米国株の値上がりだけでなくドル円相場の影響も受けます。2017年初は1ドル117円台でしたが、その後は円安が進んだ時期が長いため、為替ヘッジなしの円建てS&P500投信では、米ドル建て指数以上に評価額が増えた期間があります。
さらに配当込み指数を使用するか、価格指数を使用するかでも長期リターンに大きな差が出ます。そのため「S&P500の2017年からの上昇率」を尋ねる場合は、価格指数・配当込み指数・円換算のどれを意味するのかを決める必要があります。
オルカンは2017年にはまだ存在しない
一般に「オルカン」と呼ばれているのは、三菱UFJアセットマネジメントのeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)です。同ファンドの設定日は2018年10月31日です。したがって、「オルカンを2017年初に100万円買ったら現在いくら」という実績は存在しません。
オルカンはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)への連動を目指しています。三菱UFJアセットマネジメントも対象インデックスをこの指数と明記しています。[参照:三菱UFJアセットマネジメント「オルカンの対象インデックス」]
2017年からの世界株リターンを知りたい場合には、ファンドそのものではなくMSCI ACWIの配当込み・円換算指数を2017年初から比較する方法があります。ただし、それはあくまで「オルカンが存在する前にも同じ指数へ投資できたと仮定した参考値」であり、オルカンの実績とは区別すべきです。
オルカンは設定来で約+288%|1万円が約3万8842円
オルカンは2018年10月31日に基準価額10,000円で設定されました。2026年8月28日の基準価額は38,842円です。[参照:Yahoo!ファイナンス「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)時系列」]
したがって設定来の単純な基準価額上昇率は「38,842÷10,000-1」で、約+288.4%です。基準価額は約3.88倍になった計算です。
オルカンはこれまで分配金を出しておらず、ファンド内部で得られた配当等が運用資産へ反映されるため、基準価額の上昇を見ることで実質的な成長を把握しやすい商品です。ただし、購入時期によって実際の投資家のリターンは当然異なります。
GPIFは株式100%ではないのでS&P500と比べると伸びが小さく見える
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、S&P500やオルカンのような株式ファンドではありません。公的年金の積立金を国内債券、外国債券、国内株式、外国株式などへ分散して運用しています。
GPIFの公表データでは、2017年度から2024年度までの資産全体の収益率は、順に+6.90%、+1.52%、-5.20%、+25.15%、+5.42%、+1.50%、+22.67%、+0.71%です。[参照:GPIF「2024年度業務概況書」]
これらを単純に足すのではなく複利でつなぐと、2017年度初から2024年度末までの累積収益率は約+70.2%になります。100を運用すると約170になったイメージです。
GPIFの最新公表値は2026年度第1四半期で+8.20%
GPIFは2026年度第1四半期について、期間収益率+8.20%、運用資産額317兆7,596億円と公表しています。また2001年度の市場運用開始から2026年度第1四半期までの年率収益率は+4.95%です。[参照:GPIF「2026年度の運用状況」]
ただしGPIFは年度単位の公表が中心であり、「2017年1月1日から2026年8月末」という暦年ベースの上昇率を他の商品と完全に同じ区間で比較するには、四半期データまでそろえて再計算する必要があります。そのため、簡易比較では2017年度からの複利収益を見る方法が分かりやすいでしょう。
ウェルスナビには「1つの上昇率」がない
ウェルスナビについて「2017年から何%上がったか」と聞かれても、一つの数字では答えられません。ウェルスナビにはリスク許容度1~5があり、それぞれ株式・債券・金・不動産などの配分が異なるからです。
公式サイトは、追加投資をしない「積立なし」のモデルについて、2016年1月19日のサービス開始時を100として2026年6月末までの円建て累積パフォーマンスを公開しています。[参照:ウェルスナビ「運用データ」]
| リスク許容度 | 2016年1月19日~2026年6月末の円建てリターン |
|---|---|
| 1 | +123.9% |
| 2 | +168.5% |
| 3 | +221.8% |
| 4 | +276.8% |
| 5 | +289.9% |
最も株式比率の高いリスク許容度5では約3.90倍、リスクを抑えた許容度1では約2.24倍です。これは手数料控除後、分配金再投資、半年ごとのリバランスなど、ウェルスナビが示す所定の前提で計算されています。
2017年初からなら上の数字より少し小さくなる
上記は2016年1月19日からの実績です。したがって厳密な「2017年1月から2026年まで」のリターンとは異なります。2017年からだけを取り出すには、ウェルスナビが公開している月次・四半期の運用データから2017年初の指数値を取得して再計算する必要があります。
それでも「ウェルスナビ」という名前だけでは数字を一つに決められず、少なくともリスク許容度1~5のどれかを指定する必要がある点は重要です。
コモンズ30ファンドは2017年から現在まで基準価額が約+180%
コモンズ30ファンドは、長期的な企業価値の成長を重視して約30社へ投資する日本株中心のアクティブファンドです。2009年設定なので2017年時点ですでに存在しており、実際の基準価額を使った比較ができます。
コモンズ投信の過去の運用報告書によると、2017年1月18日時点の基準価額は24,102円でした。[参照:コモンズ投信「コモンズ30ファンド運用報告書」]
2026年8月27日時点の基準価額は67,596円です。[参照:コモンズ投信「基準価額推移」]
単純な基準価額比較では「67,596÷24,102-1」となり、約+180.5%、およそ2.80倍です。
コモンズ30は分配金を考えると実際のトータルリターンは少し変わる
コモンズ30ファンドは過去に分配金を支払った年があります。そのため基準価額だけを比較すると、分配金を受け取った部分を無視することになります。
ファンドそのものの運用成果を比べるなら、税引前分配金を再投資した「分配金再投資基準価額」を使用するのがより適切です。したがって約+180%という数字は、2017年1月18日と2026年8月27日の基準価額だけを比較した簡易値と考えてください。
なぜS&P500やオルカンの数字が大きいのか
2017年以降は、米国を中心とした世界株式が大きく上昇した期間でした。S&P500ではApple、Microsoft、NVIDIA、Amazon、Alphabet、Metaなど大型テクノロジー企業の成長が指数を押し上げました。
オルカンも世界中へ分散していますが、時価総額加重型のMSCI ACWIに連動するため、米国株が大きな割合を占めます。このため近年は米国大型株の上昇による恩恵を強く受けています。
一方、GPIFは値上がりだけを最大化する運用ではありません。株式に加えて国内外の債券も保有し、年金財政を長期的に支えることを目的としてリスクを分散しています。そのため株式市場が長期間上昇した局面では、株式100%の商品よりリターンが低く見えるのは自然です。
上昇率だけで投資先の優劣を決めると危険
仮にA商品が2017年から+250%、B商品が+100%だったとしても、それだけでAのほうが優秀とは限りません。投資ではリターンと同時にリスクを見る必要があります。
株式比率が高い商品ほど上昇相場では利益が大きくなりやすい一方、暴落時には大きく下落します。債券を多く持つGPIFやウェルスナビの低リスクプランは、株式100%の商品より上昇が小さくなる代わりに、値動きを抑えることを目的にしています。
| 対象 | 主な特徴 | リターン比較時の注意 |
|---|---|---|
| S&P500 | 米国大型株中心 | ドル建てか円建てか、配当込みかを確認 |
| オルカン | 世界株式 | 2018年10月設定で2017年実績なし |
| GPIF | 株式・債券などに分散 | 株式100%と目的が違う |
| ウェルスナビ | ETFによる国際分散 | リスク許容度1~5で結果が違う |
| コモンズ30 | 日本株アクティブ | 分配金再投資ベースも確認 |
100万円を投資したイメージにすると分かりやすい
単純な参考例として、それぞれの上昇率を100万円に当てはめると違いが見えやすくなります。ただし開始時期と計算条件が異なるため、あくまでイメージです。
| 対象 | 参考上昇率 | 100万円のイメージ |
|---|---|---|
| S&P500価格指数 | 約+242% | 約342万円 |
| オルカン設定来 | 約+288% | 約388万円 |
| GPIF 2017~2024年度 | 約+70% | 約170万円 |
| ウェルスナビ・リスク許容度3 | 2016年開始から+221.8% | 約322万円 |
| ウェルスナビ・リスク許容度5 | 2016年開始から+289.9% | 約390万円 |
| コモンズ30基準価額 | 約+180% | 約280万円 |
例えばオルカンが約388万円になっているように見えても、これは2018年10月31日からの計算です。S&P500の約342万円は2017年1月からの米ドル建て価格指数です。開始時期も配当処理も違うため、数字の大小だけを比較してはいけません。
公平に比べるなら「同じ日・円建て・配当込み」にそろえる
5つをできるだけ公平に比較したい場合には、条件を統一する必要があります。特に重要なのは、開始日、終了日、通貨、配当・分配金、手数料、積立の有無です。
例えば「2019年1月4日に100万円を一括投資し、2026年8月末まで保有した」と開始日を2019年へ変更すれば、オルカンもすでに存在しているため比較しやすくなります。
S&P500は配当込み円換算指数、オルカンは基準価額、ウェルスナビは積立なし・円建て、コモンズ30は分配金再投資基準価額、GPIFは同期間の時間加重収益率というように条件を可能な限り近づければ、より意味のある比較になります。
「2017年初から」で最も注意すべきポイント
今回の5つについて2017年初からの成績を尋ねた場合、最も重要な回答は「全部をそのまま2017年初から比較することはできない」という点です。
- オルカンは2018年10月31日設定なので2017年の実績がない
- S&P500は指数なので、どの投資信託を意味するかで円建てリターンが変わる
- GPIFは投資商品ではなく公的年金の分散ポートフォリオ
- ウェルスナビにはリスク許容度1~5がある
- コモンズ30は分配金を含めるかどうかで数字が変わる
つまり「2017年から一番上がったものを知りたい」という目的なら、商品名だけを並べるのではなく、比較条件を統一する必要があります。
まとめ|2017年からの比較ではS&P500約+242%、コモンズ30約+180%。オルカンは2018年設定
2017年初から2026年8月末近辺までの大まかな値動きを整理すると、S&P500の米ドル建て価格指数は2017年1月3日の2,257.83から7,700台まで上昇し、約+242%となっています。[参照:FRED「S&P 500」]
コモンズ30ファンドは2017年1月18日の24,102円から2026年8月27日の67,596円まで、基準価額の単純比較で約+180%です。分配金を再投資した場合のトータルリターンは別途計算する必要があります。[参照:コモンズ投信]
オルカンは2017年にはまだなく、2018年10月31日の設定時10,000円から2026年8月28日の38,842円までなら約+288%です。2017年から比較したい場合は、連動対象であるMSCI ACWI(配当込み、円換算ベース)の過去指数を代用する必要があります。
GPIFは2017年度から2024年度までの公式収益率を複利でつなぐと約+70%です。ただし債券も大量に組み入れた年金運用なので、株式100%のS&P500やオルカンとは目的もリスクも異なります。GPIFの最新公表では2026年度第1四半期だけで+8.20%となっています。[参照:GPIF]
ウェルスナビも一つの数字ではなく、公式の積立なし・円建てデータでは2016年1月のサービス開始から2026年6月末までに、リスク許容度1が+123.9%、2が+168.5%、3が+221.8%、4が+276.8%、5が+289.9%となっています。[参照:ウェルスナビ「運用データ」]
したがって、2017年初からの上昇率を厳密に横並びにしたいなら、2019年以降など全商品が存在する共通日を開始日にして、円建て・配当再投資・一括投資・手数料控除後などの条件をそろえて比較するのが最も適切です。単に過去の上昇率が大きかった商品を選ぶのではなく、そのリターンを得るためにどの程度の値下がりリスクを負っていたのかまで一緒に見ることが大切です。
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