2021年末ごろのドル円相場を振り返り、「1ドル115円のときにもっとドルを買っておけばよかった」と感じる人は少なくありません。その後に大幅な円安局面を経験したため、結果だけを見ると115円が非常に有利な購入価格だったように見えるからです。
ただし、為替投資では過去のチャートを見てから「ここで買えばよかった」と考えることと、その時点で適切な投資判断をすることはまったく別です。また、1ドル115円を単純に「円高」と表現するのも、どの時点と比較するかによって意味が変わります。
重要なのは「115円なら何ドル買うべきだったか」ではなく、その時点で円高・円安の将来を予測できなかった前提で、どの程度の為替リスクなら家計や資産全体で許容できたかを考えることです。
2021年末のドル円は実際どのくらいだった?
日本銀行の主要時系列統計を見ると、2021年12月のドル円は月中に112円台から115円台で推移しています。12月のデータでは115円台を付ける場面も確認できます。[参照:日本銀行 主要時系列統計]
一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の2021年12月27日公表データでは、12月20日が1ドル113.45円、21日114.11円、22日114.22円、23日114.42円となっています。したがって「2021年末ごろは115円前後だった」という大まかな記憶は不自然ではありません。[参照:Federal Reserve H.10]
ただし115円が絶対的な意味で「円高」だったわけではありません。2021年5月には109円台、8月にも109円台がありました。115円より109円のほうが1ドルを少ない円で買えるため、ドルに対しては円高です。115円を円高と感じるのは、その後の130円、140円、150円といった水準から振り返った場合の相対的な評価といえます。
1ドル115円で100万ドル買うには1億1500万円必要
為替の話では金額の大きさを具体的に計算するとリスクが分かりやすくなります。1ドル115円で100万ドルを購入する場合、単純計算では1億1,500万円の円資金が必要です。
その100万ドルを仮に1ドル150円で円へ戻せたとすると1億5,000万円となり、為替差益は3,500万円です。逆に1ドル100円まで円高になれば円換算額は1億円となり、1,500万円の評価損になります。実際には為替手数料や税金なども考慮する必要があります。
| ドル円 | 100万ドルの円換算額 | 115円購入時との差額 |
|---|---|---|
| 90円 | 9,000万円 | -2,500万円 |
| 100円 | 1億円 | -1,500万円 |
| 115円 | 1億1,500万円 | 基準 |
| 130円 | 1億3,000万円 | +1,500万円 |
| 150円 | 1億5,000万円 | +3,500万円 |
つまり100万ドルを保有するということは、ドル円が1円動くだけで円換算額が約100万円変動するポジションを持つことでもあります。10円なら約1,000万円です。利益の大きさだけでなく、この変動を許容できる資産規模かどうかを考える必要があります。
115円で大量に買うのが正解だったとは当時は分からない
後からチャートを見ると、115円で大量のドルを購入することは簡単に見えます。しかし2021年末の時点で、その後ドル円がどこまで上昇するかを確実に知る方法はありませんでした。
仮に115円で1億円以上をドルへ交換した直後、ドル円が100円、90円へ下落していたら評価は正反対になります。「もっと買えばよかった」ではなく「なぜ一度に買ってしまったのか」と後悔していた可能性もあります。
これは後知恵バイアスとして注意したいポイントです。実際に起きた結果を知った後では、その結果が当時から予測可能だったように感じやすくなります。投資判断は現在から過去を見るのではなく、「その時点では未来が分からなかった」という条件で評価する必要があります。
いくら仕込むかはドル円の水準より資産配分で考える
ドルを購入する適正額に「100万円」「1万ドル」「100万ドル」といった万人共通の正解はありません。金融資産が500万円の人と5億円の人では、同じ1,000万円のドル保有でも意味がまったく異なるからです。
例えば生活資金までドルへ交換すると、その後円高になったときに必要な円を確保するため不利なレートでドルを売却することになりかねません。住宅購入、教育費、税金など数年以内に円で支払う予定の資金まで為替投資へ回すのは慎重に考える必要があります。
そのため「115円だからいくら買うか」ではなく、円預金、日本資産、外国株式・債券などを含めた金融資産全体の中で、すでにどの程度の外貨リスクを持っているかを確認することが大切です。
ドルを直接持たなくても外貨リスクを持っている場合がある
意外に見落とされやすいのが、ドル預金を持っていなくても外国資産へ投資していれば、すでに為替変動の影響を受けている可能性があることです。
例えば為替ヘッジなしの米国株式ファンドや海外資産を組み入れた投資信託を保有している場合、円換算した資産価値は為替変動の影響を受けます。そこへさらに大量の米ドルを購入すれば、本人が考えている以上にドルへの資産集中が進むことがあります。
反対に、将来米国で生活する予定がある、ドル建ての支払いが継続的に発生するなど、将来ドルを使うことが決まっている人ならドル保有には別の意味があります。単なる為替差益狙いなのか、将来必要になる外貨の確保なのかによって考え方は変わります。
一括購入より分散して買う方法もある
ドルの底値を正確に当てることは難しいため、一度に全額を交換するのではなく、購入時期を分ける方法があります。例えば1,000万円をドルへ交換したい場合、1回で1,000万円を投入するのではなく、一定期間に分けて購入する考え方です。
分散購入には「最安値で全額購入できない」というデメリットがあります。一方で、最初に購入した直後から大幅な円高になってしまうタイミングリスクを軽減できます。
どちらが最終的に有利になるかは将来の相場次第です。そのため分散購入は利益を最大化する魔法ではなく、予測を外したときの影響を分散するリスク管理の手段として考えるのが適切です。
FXで100万ドル持つ場合は話がまったく違う
「100万ドル仕込む」という言葉が現物のドル購入ではなくFXを意味する場合は、特に注意が必要です。FXでは証拠金を使って自己資金より大きな金額の取引ができるため、為替変動による利益だけでなく損失も拡大します。
現物で100万ドルを保有する場合、ドルそのものが手元に残ります。一方、高いレバレッジで100万ドル相当のポジションを保有すると、予想と反対方向へ相場が動いた際に証拠金維持率が低下し、追加資金が必要になったり強制決済されたりする可能性があります。
「115円から将来150円になる」と分かった状態で過去を振り返るのと、115円から110円、100円、あるいはそれ以下になる可能性もある状態で巨額のポジションを維持することは別問題です。特にレバレッジ取引ではこの違いが重要です。
過去の115円から学べるのは「底値を当てること」ではない
2021年末のドル円相場を振り返る価値は、「あのとき全財産でドルを買うべきだった」という結論を出すことではありません。むしろ、為替が数年間で想像以上に大きく動く可能性があることを理解する材料になります。
日本銀行の統計では2021年12月に115円台だったドル円が、2022年9月には145円台、10月には150円台を付けています。短期間でも為替環境が大きく変化し得ることが分かります。[参照:日本銀行 主要時系列統計]
だからこそ将来また「かなり円高になった」と感じる局面が来ても、全額を一点投入するより、自分の資産規模、生活防衛資金、外貨資産比率、投資期間、許容できる損失額を先に決めておくほうが再現性のある投資判断につながります。
まとめ
2021年末にはドル円が115円前後となる場面がありましたが、2021年の前半には109円前後の時期もあったため、当時の115円を絶対的な意味で「円高」と決めつけることはできません。その後の大幅な円安から振り返れば、結果的にドルを安く取得できた水準だったということです。
1ドル115円で100万ドルを購入するには単純計算で約1億1,500万円が必要です。そして100万ドルを保有すると、ドル円が1円動くごとに円換算額が約100万円変動します。非常に大きな為替リスクであり、「買っておけば大儲けだった」という結果だけで評価するべきではありません。
為替投資で重要なのは過去の最適な買値を探すことではなく、未来の相場が分からなくても継続できる資産配分を作ることです。再び魅力的と思える円高局面が訪れた場合も、「何ドル買えるか」より「円高がさらに進んでも困らない金額はいくらか」から考えることが、長期的なリスク管理につながります。
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


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