S&P500とオルカン(全世界株式)は、どちらも低コストのインデックス投資でよく比較されます。どちらも米国の大型企業を多く含むため値動きが似る場面はありますが、投資対象は同じではありません。また、基準価額が安い投資信託を多くの口数買えるから得、という考え方も基本的には正しくありません。
投資信託では、重要なのは「何口持っているか」ではなく、「何円投資して、その資産が何%値上がり・値下がりしたか」です。1万円で100口買える商品と、同じ1万円で50口しか買えない商品でも、どちらも10%上昇すれば利益は原則として同じ1,000円です。
この記事では、S&P500とオルカンの違い、基準価額と口数の仕組み、安い投資信託を多く買うことに特別なメリットがない理由を、具体例を使って分かりやすく整理します。
- S&P500とオルカンは似ている部分もあるが同じではない
- なぜS&P500とオルカンの値動きが似て見えるのか
- 投資信託の「値段が安い」は株の割安とは違う
- 100口買える方が50口しか買えない商品より得、ではない
- 大事なのは「口数」ではなく「投資金額×騰落率」
- 株式分割と似た考え方で理解できる
- S&P500とオルカンを選ぶときに見るべきポイント
- S&P500を選ぶメリット
- オルカンを選ぶメリット
- オルカンを買っても米国株を十分持っている
- S&P500とオルカンを両方買うと分散は増える?
- 投資信託なら通常は金額指定で買える
- 基準価額30,000円でも3万円必要という意味ではない
- 同じ10万円なら基準価額が違っても投資額は同じ
- 「安い投資信託を買う」という考え方が危険な理由
- 基準価額が高くなりすぎても運用上は問題ない
- 比較するなら信託報酬などのコストを見る
- 「どちらが今後儲かるか」は基準価額では分からない
- 100万円投資した場合のイメージ
- NISAで選ぶ場合も考え方は同じ
- 初心者ならどちらを選ぶと分かりやすい?
- 迷ったときは「米国だけでよいか」を考える
- まとめ:オルカンが安いから多く買えて得、ではない
S&P500とオルカンは似ている部分もあるが同じではない
S&P500は、米国を代表する大型株を中心とした約500社で構成される株価指数です。米国企業だけに投資する点が大きな特徴です。
一方、一般に「オルカン」と呼ばれるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、MSCI ACWIに連動することを目指し、日本、米国、欧州、新興国など世界各国の株式へ幅広く投資します。
そのため、S&P500は「米国へ集中」、オルカンは「世界へ分散」という違いがあります。
なぜS&P500とオルカンの値動きが似て見えるのか
オルカンは世界株式へ投資する商品ですが、世界の株式時価総額では米国企業が大きな割合を占めています。そのためオルカンの値動きも米国株の影響を強く受けます。
例えばApple、Microsoft、NVIDIAなどの大型米国企業は、S&P500にもオルカンにも含まれます。そのため米国大型株が大きく上昇した日は、両方とも似た方向へ動きやすくなります。
ただしオルカンには日本株、欧州株、新興国株なども入っているため、長期間ではS&P500と異なる値動きになる可能性があります。
投資信託の「値段が安い」は株の割安とは違う
投資信託には「基準価額」という数字があります。例えばAファンドが基準価額10,000円、Bファンドが20,000円なら、Aの方が安く見えます。
しかし、基準価額が10,000円だから割安、20,000円だから割高という意味ではありません。基準価額は、そのファンドの純資産を口数で割った1万口当たりの価値を示しているにすぎません。
設定された時期や、それまでの値上がり率、分配金の有無などによって基準価額は変わります。違うファンド同士で数字だけを比較して「こちらの方が安いから得」と判断することはできません。
100口買える方が50口しか買えない商品より得、ではない
具体例で考えると分かりやすくなります。仮にAファンドが1口100円、Bファンドが1口200円だったとします。
1万円投資すればAは100口、Bは50口買えます。確かにAの方が口数は2倍です。
しかしAが10%値上がりして1口110円になれば100口の価値は11,000円です。Bも10%値上がりして1口220円になれば50口の価値は11,000円です。どちらも利益は1,000円です。
大事なのは「口数」ではなく「投資金額×騰落率」
投資成果をシンプルに考えるなら、基本は「投資金額が何%増えたか」です。
例えば100万円をS&P500連動ファンドに投資して10%上がれば約110万円、100万円をオルカンに投資して10%上がればこちらも約110万円です。
保有口数が10万口なのか30万口なのかは、利益額そのものを決める重要な要素ではありません。口数は単に資産を何単位に分けて表しているかという違いです。
株式分割と似た考え方で理解できる
例えば1株1万円の株を1株持っている人がいるとします。この会社が1株を10株へ株式分割すると、理論上は1株約1,000円になります。
保有株数は1株から10株へ増えますが、総額は約1万円のままです。「10株になったから10倍得した」ということにはなりません。
投資信託の口数もこれと似ています。単価が低くて口数を多く持てても、資産価値そのものが多くなるわけではありません。
S&P500とオルカンを選ぶときに見るべきポイント
両者を比較するときに基準価額の高低を見る必要はほとんどありません。むしろ投資対象、コスト、リスク、投資方針を見ることが重要です。
| 比較項目 | S&P500 | オルカン |
|---|---|---|
| 主な投資地域 | 米国 | 全世界 |
| 企業数 | 約500社 | 数千社規模 |
| 米国への集中度 | 非常に高い | 高いが他地域も含む |
| 地域分散 | 小さい | 大きい |
| 値動き | 米国市場の影響が非常に大きい | 米国中心だが世界市場の影響も受ける |
| 向く考え方 | 米国の成長を重視 | 世界全体へ分散したい |
S&P500を選ぶメリット
S&P500の魅力は、世界を代表する米国企業へまとめて投資できることです。米国市場にはIT、金融、ヘルスケア、消費関連など世界的な大企業が多くあります。
今後も米国企業が世界経済を牽引すると考えるなら、S&P500へ集中する戦略には合理性があります。
一方で米国市場が長期間低迷した場合、その影響をそのまま強く受けます。地域分散という意味ではオルカンより弱くなります。
オルカンを選ぶメリット
オルカンの大きな特徴は、どの国が将来成長するかを自分で予想せず、世界全体へ投資できることです。
現在は米国の比率が大きくても、将来ほかの国の企業価値が高まれば、その国の比率も指数の中で自然に変化します。
「米国が今後も最強か分からないので、世界全体を持っておきたい」という人には分かりやすい選択肢です。
オルカンを買っても米国株を十分持っている
オルカンを選ぶと「米国の成長を取り逃すのでは」と心配することがありますが、オルカンの中にも米国企業は多数含まれています。
世界の株式時価総額に応じて投資するため、米国が世界株式市場で大きな存在である限り、オルカンでも米国株への投資比率は高くなります。
つまりオルカンは「米国を避ける商品」ではなく、「米国にも大きく投資しながら他国にも分散する商品」と考えると理解しやすくなります。
S&P500とオルカンを両方買うと分散は増える?
S&P500とオルカンを半分ずつ買えば、商品数は2つになります。しかし投資対象を見ると、両方に同じ米国大型企業が多数入っています。
そのため、S&P500をオルカンへ追加することは「全く別の資産へ分散する」というより、オルカンの中ですでに持っている米国株の比率をさらに高くする効果があります。
両方持つこと自体に問題はありませんが、「2本だから1本より分散される」と単純には考えない方がよいでしょう。
投資信託なら通常は金額指定で買える
投資信託は株式と違い、証券会社によっては100円など少額から金額指定で購入できます。
例えば「毎月3万円買う」と設定すれば、その日の基準価額に応じた口数が自動的に割り当てられます。基準価額が高くても3万円分、低くても3万円分です。
そのため「基準価額が高いから1口買えない」という心配をする必要は通常ありません。株式のように1株単位でしか買えない商品とは仕組みが異なります。
基準価額30,000円でも3万円必要という意味ではない
投資信託初心者が特に誤解しやすいのが、基準価額の表示方法です。
国内の投資信託では、多くの場合「1万口当たり○円」という形式で基準価額が表示されています。例えば基準価額30,000円でも、最低3万円からしか買えないという意味ではありません。
証券会社が100円以上1円単位などの買付に対応していれば、500円や1万円といった金額でも購入できます。その金額に応じて端数を含む口数が割り当てられます。
同じ10万円なら基準価額が違っても投資額は同じ
例えば基準価額20,000円のファンドと、40,000円のファンドへそれぞれ10万円投資するとします。
前者では後者より多い口数を保有しますが、購入時の資産価値はどちらも10万円です。
その後前者が5%上昇すれば約10万5,000円、後者も5%上昇すれば約10万5,000円です。口数の違いによって運用益が増えるわけではありません。
「安い投資信託を買う」という考え方が危険な理由
個別株では、企業の利益や資産価値に対して株価が割安かどうかをPERやPBRなどで分析することがあります。
しかし投資信託の基準価額だけを見て、1万円だから安い、5万円だから高い、と評価することはできません。
例えば設定から20年間成長してきたファンドは基準価額が50,000円になっているかもしれません。新しく設定されたほぼ同じ投資内容のファンドなら10,000円から始まります。後者が5分の1の価格だからお買い得ということではありません。
基準価額が高くなりすぎても運用上は問題ない
投資信託の基準価額が10,000円から50,000円、100,000円へ上昇したとしても、それ自体が「高すぎてもう上がらない」という意味ではありません。
投資先企業の株価がさらに上昇すれば、基準価額も上昇します。
逆に基準価額が5,000円まで下がったファンドが「半額だからお買い得」とも限りません。投資対象そのものの価値が下落している場合があります。
比較するなら信託報酬などのコストを見る
S&P500やオルカンのインデックスファンドを比較するときには、基準価額ではなく運用コストも重要です。
代表的な低コスト商品では信託報酬が非常に低い水準まで下がっています。長期保有ではわずかなコスト差でも積み重なります。
ただし信託報酬が最も低い商品が必ず最適というわけではありません。指数への連動性、純資産総額、運用会社の実績なども確認するとよいでしょう。
「どちらが今後儲かるか」は基準価額では分からない
S&P500とオルカンのどちらが今後高いリターンを出すかは、将来の世界経済によって決まります。
米国企業が他国を上回り続ければS&P500が有利になる可能性があります。一方、日本、欧州、新興国などが相対的に強くなれば、オルカンがS&P500との差を縮めたり上回ったりする可能性があります。
その結果を現在の基準価額が20,000円か30,000円かという数字から予測することはできません。
100万円投資した場合のイメージ
| ケース | 投資額 | 基準価額 | 保有口数のイメージ | 10%上昇後 |
|---|---|---|---|---|
| Aファンド | 100万円 | 10,000円 | 多い | 約110万円 |
| Bファンド | 100万円 | 20,000円 | Aの約半分 | 約110万円 |
| Cファンド | 100万円 | 50,000円 | さらに少ない | 約110万円 |
この例では3商品とも10%上昇したため、口数に関係なく利益は約10万円です。これが「口数を多く買えるから得ではない」という意味です。
NISAで選ぶ場合も考え方は同じ
NISAでS&P500やオルカンの投資信託を買う場合も、基準価額の高低による有利・不利は基本的にありません。
NISAでは投資した金額が年間投資枠として計算されます。何口買えたかではありません。
例えばNISAで100万円投資するなら、基準価額の低い商品を大量の口数買っても、高い商品を少ない口数買っても、使用する非課税投資枠は同じ100万円です。
初心者ならどちらを選ぶと分かりやすい?
「米国が今後も世界経済を牽引すると考え、米国へ集中したい」という考えが明確ならS&P500が分かりやすいでしょう。
「どの国が今後強くなるか分からないので世界全体を持ちたい」という場合にはオルカンがシンプルです。
どちらも長期投資の選択肢として広く使われています。重要なのは基準価額の数字ではなく、自分がどの範囲の市場へ投資したいのかです。
迷ったときは「米国だけでよいか」を考える
S&P500とオルカンの選択を難しく考えすぎる必要はありません。大きな違いは、米国以外も保有するかどうかです。
米国だけで十分と考えるならS&P500、米国以外も含めて世界全体へ分散したいならオルカン、という整理ができます。
「どちらの基準価額が安いか」は、この判断にはほぼ関係ありません。
まとめ:オルカンが安いから多く買えて得、ではない
S&P500とオルカンは、米国大型企業を多数共有しているため値動きが似ることがあります。しかし、S&P500は米国株へ集中する指数、オルカンは米国を含む世界各国へ投資する商品であり、投資対象は同じではありません。
そして最も重要なのが、基準価額の安いオルカンを多くの口数買えるから、S&P500より得になるわけではないという点です。
例えば同じ10万円を投資し、S&P500連動ファンドもオルカンも10%上昇すれば、どちらも資産価値は約11万円になります。片方の口数が2倍あったとしても利益率が同じなら利益額も同じです。
投資信託の基準価額は、個別株のように「1株が安いから割安」という意味ではありません。設定時期やこれまでの値動きなどによって変化した、1万口当たりの資産価値を示す数字です。
そのため両者を選ぶときには、「どちらが安いか」ではなく、米国へ集中したいならS&P500、世界全体へ分散したいならオルカンという投資対象の違いから考えるのが基本です。
また投資信託は多くの証券会社で100円などの金額指定から購入できるため、基準価額が高くても必要な口数だけ自動的に買えます。「高いから十分な口数を買えない」という問題も通常はありません。
最終的な運用成果を左右するのは、保有口数の多さより、投資した市場が将来どれだけ成長するか、運用コストがどれくらいか、そして長期間保有を続けられるかです。基準価額の数字だけでS&P500とオルカンを比較しないことが、インデックス投資を理解する第一歩になります。
[参照] S&P Dow Jones Indices「S&P 500」
[参照] 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」
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