物価が上がり、金利も上昇している一方で、株価などの資産価格が高い水準にあると、「給料だけで生活する人は苦しくなるのに、株や不動産などを持つ人は資産が増えている」という現象が起こり得ます。
この差を理解する鍵は、労働によって得る所得と、すでに保有している資産から得る利益では、インフレ局面の影響が違うことです。ただし「資産家は全員余裕があり、労働者は全員苦しい」という単純な二分法ではありません。保有資産の種類、住宅ローンなどの負債、年齢、所得、家族構成によって影響は大きく異なります。
格差が生じる大きな理由は、物価上昇に賃金が追いつくかどうかに加えて、株式・不動産など値上がりする可能性のある資産をインフレ以前からどれだけ持っていたかという「スタート時点の資産量」の違いにあります。
まず「給料が上がった」と「豊かになった」は別の話
生活水準を考えるうえでは、給与額そのものを示す名目賃金だけでなく、物価変動を考慮した実質賃金を見る必要があります。給料が3%増えても、生活に必要なモノやサービスの価格がそれ以上に上昇すれば、実際に買える量は減る可能性があります。
例えば月給30万円が30万9,000円へ3%増えても、同じ生活をするための費用が5%増えれば、名目上は昇給していても購買力は低下します。これが「給料は上がったはずなのに生活が楽にならない」と感じる一因です。
厚生労働省は毎月勤労統計調査で名目賃金と実質賃金を公表しており、総務省統計局は消費者物価指数を毎月公表しています。物価高と賃金を比較するときは、片方だけでなく両方を見る必要があります。[参照:厚生労働省 毎月勤労統計調査] [参照:総務省統計局 消費者物価指数]
インフレは「現金」と「資産」に同じ影響を与えない
インフレでは現金の額面そのものは減りません。しかし、100万円で購入できるモノやサービスの量は物価上昇によって減っていきます。預金金利が物価上昇率を下回れば、預金の実質的な購買力は低下します。
一方、株式は企業という事業への持分です。企業が価格転嫁によって売上や利益を伸ばせれば、長期的には株価や配当に反映される可能性があります。不動産も家賃や土地・建物の価格が上昇する局面があります。ただし、株式や不動産が必ずインフレ率以上に値上がりするわけではありません。
ここで差が生まれます。例えばインフレ・株高が始まる前に500万円分の株式を持っていた人と、金融資産をほとんど持っていなかった人では、同じ給与で生活していても資産価格上昇の恩恵は異なります。
株高は「株を持っている人」の資産を先に増やす
株価が30%上昇した場合、単純化すれば1,000万円の株式を持つ人には300万円、100万円なら30万円の評価益が生じます。株式を持っていなければ直接的な評価益はゼロです。
さらに元本が大きいほど、同じ上昇率でも金額差が大きくなります。5%の運用益でも100万円なら5万円ですが、5,000万円なら250万円です。資産形成では利回りだけでなく、すでに運用されている元本の大きさが結果を大きく左右します。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査」では、預貯金だけでなく株式や投資信託などを含む家計の金融資産について調査しています。家計ごとの資産保有額や構成には大きな違いがあるため、「平均的な日本人」という一つの家計像だけでは実態を捉えられません。[参照:J-FLEC 家計の金融行動に関する世論調査]
金利上昇も家計によってプラスとマイナスが逆になる
「金利高」も全員へ同じ影響を与えるわけではありません。多額の預貯金を持つ人には預金金利上昇がプラスになりますが、変動金利型住宅ローンなどの負債を抱える人にとっては利払い負担が増える方向に働きます。
例えば金融資産5,000万円で借金がほとんどない世帯と、金融資産100万円で大きな住宅ローンを抱える世帯では、金利上昇への耐性が異なります。同じ年収でも資産と負債を差し引いた純資産を見ると家計の強さには大きな差があります。
日本銀行は2025年12月に政策金利を0.75%程度へ引き上げ、その後も経済・物価情勢に応じて金融政策を運営しています。金利上昇局面では預金、住宅ローン、債券、株式、企業収益などさまざまな経路を通じて家計へ影響が及びます。[参照:日本銀行 2025年度の金融市場調節]
資産格差が拡大しやすい「複利」と再投資の仕組み
資産を持つ人と持たない人の差は、一度生まれると拡大する場合があります。その理由の一つが、運用益を再び投資することで利益が次の利益を生む複利効果です。
例えば1,000万円を年5%で運用できたと仮定すると、1年目の利益は50万円です。その50万円も再投資すれば、翌年は1,050万円が運用元本になります。もちろん実際の投資収益は毎年一定ではなく、損失が出る年もありますが、長期では「資産から得た収益を再投資できる」という仕組み自体が大きな意味を持ちます。
一方、所得のほとんどを家賃、食費、光熱費、教育費などへ使う世帯では、投資へ回す元本そのものを作るのが難しくなります。物価高で生活費が増えれば余剰資金はさらに減ります。この投資に回せる余剰資金の差も、その後の資産格差につながります。
差は「株を買ったか」だけではなくスタート地点でも生じる
資産格差を単純に「投資した人は賢く、しなかった人は自己責任」と説明するのも適切ではありません。投資を始められる条件自体が人によって違うからです。
親から住宅や金融資産を相続した人、実家暮らしで若いうちから貯蓄できた人、住宅費や教育費の負担が大きい人、奨学金やローン返済から社会人生活を始めた人では、同じ年収でも投資へ回せる金額が違います。また病気、介護、子育て、失業など本人の投資判断だけでは説明できない事情もあります。
したがって現在の格差は、賃金、資産価格、税・社会保障、雇用、住宅、相続、家族構成、教育機会など複数の要因が長期間積み重なった結果として見る必要があります。
「資産を持てばインフレに勝てる」とも限らない
ここまで見ると株や不動産を持てばよいように思えますが、資産には価格変動があります。株価は暴落することがありますし、不動産には空室、修繕、災害、金利上昇、価格下落などのリスクがあります。
また金利上昇は企業の資金調達コストや株式の評価にも影響するため、「インフレ+金利上昇=必ず株高」という法則はありません。インフレ、金利、株価はそれぞれ影響し合いますが、常に同じ方向へ動くわけではありません。
そのため資産形成では、短期間で資産家側へ移ろうとして高いレバレッジをかけたり、一つの銘柄へ全財産を集中させたりするのは別の大きなリスクを生みます。J-FLECなどでも金融経済教育の中で長期・積立・分散という基本的な考え方が紹介されています。[参照:J-FLEC 投資信託に関する教材]
家計側では「実質購買力」と「純資産」を見ることが重要
インフレ時代の家計では、年収だけを比較するより、①手取り所得、②生活費、③金融資産、④負債、⑤毎月どれだけ余剰資金を残せるかをセットで見るほうが実態を把握できます。
例えば年収800万円でも住宅ローンや教育費が大きく貯蓄ゼロの世帯と、年収600万円でも住宅ローンがなく3,000万円の金融資産を保有する世帯では、物価高や失業への耐性が違います。「年収が高い=必ず豊か」とは限らない理由です。
資産がまだ少ない場合には、まず生活防衛資金を確保し、高金利の借入れがあれば返済を優先し、そのうえで長期間使わない余剰資金を分散投資へ回すという順序が現実的です。インフレを理由に生活資金まで一気に株式へ投入する必要はありません。
まとめ:差を生むのは「所得」だけでなく資産を保有していたかという違い
インフレ・物価高・金利高・株高が同時に意識される局面で生活格差が目立ちやすくなるのは、労働所得だけで生活する家計と、労働所得に加えて株式・不動産・預貯金などの資産所得や値上がり益を得られる家計では、経済環境の変化を受ける経路が違うためです。
物価上昇に賃金が追いつかなければ実質的な購買力は低下します。その一方、すでに株式などを多く保有している人は株高による評価益を得られます。そして資産が大きいほど、同じ上昇率でも得られる金額は大きくなり、再投資によって差がさらに広がる場合があります。
ただし現在の資産額は本人の投資判断だけで決まったものではなく、所得、住宅費、相続、家族環境、雇用、教育、過去の資産価格など長期間の条件が積み重なった結果です。だからこそ格差の原因を理解するときは「給料が高いか低いか」だけではなく、誰がどの資産を、いつから、どれだけ保有していたのかという視点まで含めて考えることが重要です。
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


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