総資産1億円以上なら資産家・富裕層なのか?「総資産」と「純金融資産」の違いから基準を解説

資産運用、投資信託、NISA

「資産が1億円を超えたら資産家と呼べるのか」という疑問は、資産形成を続けている人にとって気になるテーマです。一般的な感覚では1億円は非常に大きな金額ですが、金融業界や各種調査では、単純な「総資産1億円」ではなく、金融資産から負債を差し引いた純金融資産などを使って富裕層を分類することがあります。

そのため、1億円の自宅を所有している人、1億円の株式や預金を持っている人、1億円の資産と8,000万円の住宅ローンを持っている人では、同じ「総資産1億円」でも経済的な状態は大きく異なります。

「資産家」という言葉には法律上の統一された基準がありませんが、日本でよく参照される野村総合研究所(NRI)の富裕層分類では、世帯の純金融資産が1億円以上5億円未満を「富裕層」としています。そこで、総資産1億円がどの程度の水準なのかを整理します。

「資産家」には法律上の明確な基準はない

まず押さえておきたいのは、「資産家」という言葉には国が定めた明確な認定基準があるわけではないということです。所得税法や相続税法に「資産が○円以上なら資産家」という定義が設けられているわけではありません。

一般的には、預金、株式、不動産、事業資産などを比較的多く保有している人を広く「資産家」と呼びます。そのため、総資産1億円を持つ人を資産家と表現しても、日常的な意味では特に不自然ではありません。

一方、金融機関や調査会社が市場分析を行う場合には、より客観的な数字が必要です。その代表例として使われているのが「純金融資産」という考え方です。

NRIでは純金融資産1億円以上を「富裕層」と分類している

日本の富裕層に関する統計として広く引用されているのが、野村総合研究所(NRI)の推計です。NRIは世帯が保有する金融資産の合計から負債を差し引いた「純金融資産保有額」によって世帯を分類しています。

2023年を対象とした最新の推計では、純金融資産1億円以上5億円未満を「富裕層」、5億円以上を「超富裕層」と分類しています。富裕層は153.5万世帯、超富裕層は11.8万世帯で、合計165.3万世帯と推計されています。[参照:野村総合研究所]

この基準で見ると、純金融資産が1億円以上ある世帯は、明確に「富裕層」に分類されます。したがって「資産家と呼べるか」という問いに対しても、純金融資産ベースなら十分に資産家と呼べる水準と考えられます。

重要なのは「総資産1億円」と「純金融資産1億円」は全く違うこと

ここで注意したいのが、「総資産1億円」と「純金融資産1億円」を混同しないことです。

総資産とは、預金、株式、投資信託、不動産、自動車など、保有している資産を幅広く合計した金額を指す場合があります。一方、NRIが富裕層分類に使う純金融資産は、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの金融資産から負債を差し引いた金額です。自宅などの実物不動産は基本的にこの金融資産には含まれません。

例えば、現金・株式1億円を保有して借金がない世帯であれば、純金融資産はおおむね1億円となり、NRI基準では富裕層に該当します。

しかし、1億円の住宅を所有していても住宅ローンが8,000万円残っており、預金が500万円しかない場合、「総資産は1億円超」と表現できる場合があっても、純金融資産1億円の富裕層とは全く異なる状態です。

具体例で見る「1億円」の違い

資産額を見る場合は、単純な合計額だけでなく、資産の内訳と負債を確認すると実態が分かりやすくなります。

ケース 主な資産 負債 考え方
A 預金・株式1億2,000万円 0円 純金融資産1億円超でNRI基準の富裕層
B 自宅1億円・預金500万円 住宅ローン8,000万円 総資産は大きいが純金融資産は富裕層水準ではない
C 株式8,000万円・預金3,000万円 借入1,000万円 純金融資産約1億円で富裕層水準
D 賃貸不動産1億5,000万円・現金1,000万円 不動産ローン1億円 資産家と呼ばれる可能性は高いがNRIの純金融資産分類とは別

このように、「1億円」という数字だけでは資産状況を正確に判断できません。何を1億円分持っているのか、同時にいくら借金があるのかが重要です。

不動産を多く持つ人は純金融資産が少なくても「資産家」と呼ばれる

NRIの富裕層分類は非常に便利ですが、それだけが「資産家」の基準ではありません。特に不動産オーナーや会社経営者の場合、金融資産だけでは実際の資産規模を表しにくいことがあります。

例えば、時価5億円の賃貸不動産を所有し、ローン残高が1億円ある人が、預金や株式を3,000万円しか持っていない場合を考えます。NRI方式の純金融資産だけを見ると1億円には届かなくても、実質的には大きな不動産資産を保有しています。

このような人を一般社会で「資産家」と呼ぶことには違和感がありません。つまり、「富裕層」という統計上の分類と、「資産家」という一般的な呼び方は完全には一致しません。

1億円以上でも生活が豪華とは限らない

資産1億円と聞くと、豪邸や高級車を所有して働かずに暮らしている姿を想像するかもしれません。しかし実際には、1億円の資産を持っていても生活スタイルは人によって大きく異なります。

例えば60歳で金融資産1億円を持っていても、今後30年間の生活費をそこから賄う必要がある場合があります。年間400万円を生活費として取り崩せば、単純計算では25年分です。実際には年金収入や運用益もありますが、医療費、介護費、住宅修繕費なども考える必要があります。

逆に30代で金融資産1億円があり、今後も年収1,000万円以上を稼ぎ続ける人なら、資産形成余力はかなり大きくなります。

したがって資産額を見る場合には、年齢、収入、支出、家族構成なども合わせて判断する必要があります。

1億円あれば働かずに生活できるのか

「1億円=一生働かなくても大丈夫」とは必ずしも言えません。生活費によって必要な資産額が大きく異なるためです。

例えば年間生活費が300万円であれば、運用を一切しなくても単純計算で約33年分です。一方、年間生活費が800万円なら約12年半で1億円を使い切ります。

資産を株式や債券などで運用すれば収益を得られる可能性がありますが、価格下落やインフレもあります。そのため「1億円あるから経済的に完全に自由」と一律に判断することはできません。

資産家かどうかと、働かなくても生活できる「経済的自立」を達成しているかどうかは、分けて考えたほうがよいでしょう。

総資産より「純資産」を見ると本当の資産状況が分かりやすい

個人の経済力を確認するときに便利なのが、資産から負債を差し引く考え方です。

例えば預金3,000万円、株式4,000万円、不動産5,000万円を持っていれば総資産は1億2,000万円です。しかし住宅ローンが5,000万円残っていれば、単純な純資産は7,000万円になります。

逆に預金4,000万円、株式7,000万円を保有して借入金がゼロなら、総資産1億1,000万円、純資産も1億1,000万円です。後者のほうが自由に利用・運用できる資産は多いと考えられます。

「いくら持っているか」だけでなく「いくら借りているか」を同時に見ることが、資産規模を正しく評価する基本です。

日本で純金融資産1億円以上の世帯はどのくらいいるのか

NRIの2023年推計では、純金融資産1億円以上5億円未満の富裕層が153.5万世帯、5億円以上の超富裕層が11.8万世帯です。合計すると165.3万世帯になります。[参照:野村総合研究所]

つまり1億円以上の純金融資産を持つ世帯は決して数人しか存在しないような超例外ではありませんが、日本の全世帯から見れば一部に限られます。

NRIによると、2023年の富裕層・超富裕層世帯数は2021年から11.3%増加しました。株式などの資産価格上昇も、富裕層世帯が増えた背景として挙げられています。

そのため現在では会社経営者や資産を相続した人だけでなく、長期間の株式投資や積立投資によって金融資産1億円に到達する世帯も存在します。

5,000万円と1億円では分類も変わる

NRIの分類では、純金融資産5,000万円以上1億円未満を「準富裕層」としています。その上が1億円以上5億円未満の「富裕層」です。

さらに3,000万円以上5,000万円未満が「アッパーマス層」、3,000万円未満が「マス層」と分類されています。

したがって、日本でよく使われるNRIの基準を採用するなら、純金融資産1億円は準富裕層から富裕層へ変わる明確な境界線です。

ただし、この分類も法的な基準ではなく、民間調査会社が市場分析のために設けている分類です。「1億円に1円足りなければ資産家ではない」という意味ではありません。

資産額を判断するときは世帯単位か個人単位かにも注意

NRIの富裕層推計は基本的に世帯単位です。そのため夫が6,000万円、妻が5,000万円の純金融資産を持つ世帯なら、合計では1億1,000万円となり、世帯として富裕層に該当する可能性があります。

一方、「個人で資産1億円」という表現では、その本人だけが1億円を所有している意味で使われることが多く、世帯基準より条件が厳しくなります。

ランキングや統計を見る際には、「個人資産なのか世帯資産なのか」「総資産なのか純金融資産なのか」を確認しないと、数字を正しく比較できません。

まとめ:総資産1億円なら一般的には資産家と呼べるが、富裕層判定では中身が重要

「資産家」という言葉には法律上の明確な基準がないため、総資産1億円以上を保有している人を一般的に資産家と呼ぶことには大きな違和感はありません。日本の平均的な家計と比較しても、1億円という資産額はかなり大きな水準です。

ただし、統計上の「富裕層」という意味では注意が必要です。野村総合研究所は、預貯金、株式、債券、投資信託などの金融資産から負債を差し引いた純金融資産1億円以上5億円未満を富裕層、5億円以上を超富裕層と分類しています。

したがって、借金を差し引いても金融資産が1億円以上あるのであれば、日本で一般的に使われる基準では明確に富裕層といえます。

一方、「自宅の評価額を含めると総資産1億円だが、多額の住宅ローンがある」という場合は意味が異なります。不動産を含む総資産、負債を差し引いた純資産、さらに純金融資産の3つを分けて考えることが重要です。

つまり1億円という金額だけで判断するより、「何の資産が1億円あるのか」「負債はいくらあるのか」「自由に運用できる金融資産はいくらあるのか」を見ることで、本当の意味での資産規模が分かります。

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