NISAと貯金の割合は何対何がいい?生活防衛資金から考える現金と投資のバランス

資産運用、投資信託、NISA

NISAで投資を始めると、「貯金とNISAは何対何にすればよいのか」と迷いやすいものです。貯金50%・NISA50%などの分かりやすい基準が欲しくなりますが、すべての人に共通する最適な割合はありません。

重要なのは、割合を先に決めるのではなく、近いうちに必要なお金と生活を守る現金を確保し、その残りから長期投資へ回すことです。年齢が同じでも、実家暮らしか一人暮らしか、子どもの有無、住宅購入予定、収入の安定性などで適切な金額は大きく変わります。

また、NISAそのものは預金や投資信託の商品名ではなく、一定の条件で投資による利益を非課税にできる制度です。NISA口座で購入した投資信託や株式には元本割れの可能性があるため、普通預金と同じ感覚で考えないことが大切です。

NISAと貯金に万人共通の黄金比率はない

「貯金3:NISA7」「現金50%・投資50%」などの割合は家計管理の目安として使うことはできますが、それ自体が正解ではありません。同じ300万円を持っている人でも、置かれている状況によって必要な現金は異なるからです。

例えば実家暮らしで毎月の支出が少なく、安定した収入があり、大きな支出予定もない人なら投資割合を高くできる場合があります。一方、賃貸で一人暮らしをしていて収入が不安定なら、同じ資産額でも現金を厚めに持つ意味があります。

金融庁も資産形成について、家計管理を行ったうえで長期・積立・分散投資を活用する考え方を案内しています。NISAの枠を使い切ること自体を目的にするのではなく、自分の家計に無理のない金額で利用することが基本です。[参照:金融庁 資産形成の基本]

最初に確保したいのは生活防衛資金

NISAへ回す金額を考える前に確認したいのが、病気、失業、収入減、急な引っ越し、家電の故障などへ対応するための現金です。一般に生活防衛資金などと呼ばれます。

ここでは「給料の何か月分」だけを見るより、毎月最低限必要になる生活費を把握すると考えやすくなります。家賃、食費、水道光熱費、通信費、保険料、ローンなど、収入が止まっても必要になる支出を合計します。

例えば最低生活費が月15万円なら、6か月分は90万円です。最低生活費が月30万円の家庭なら、同じ6か月分でも180万円必要になります。このように「現金を何%持つか」より「何か月生活できる現金があるか」を先に考えるほうが実用的です。

数年以内に使う予定のお金はNISAと分けて考える

生活防衛資金とは別に、近い将来使うことが決まっているお金も現金で確保しておく考え方があります。NISAで購入できる投資商品は、必要になったタイミングで値下がりしている可能性があるためです。

例えば2年後に150万円の車を購入する予定があるなら、その購入資金まで株式中心の投資信託へ入れてしまうと、購入直前の相場下落によって必要額を確保できない可能性があります。

結婚、引っ越し、住宅購入の頭金、学費、車の買い替えなど、数年以内に必要になることが分かっている資金については、普通預金や定期預金など値動きの小さい場所で管理する選択肢があります。そのうえで長期間使う予定のない余裕資金をNISAへ回すと、相場変動にも対応しやすくなります。

NISAと貯金の割合を具体例で考える

割合ではなく必要額から逆算すると判断しやすくなります。例えば金融資産300万円、最低生活費15万円、当面の大きな支出予定がないケースを考えてみます。

仮に生活防衛資金として6か月分の90万円を確保し、さらに予備費として30万円を現金で残すなら、現金120万円、残り180万円が長期投資を検討できる資金になります。この場合、結果として貯金40%・投資60%程度になります。

一方、同じ300万円でも1年後に車の購入で150万円必要なら、生活防衛資金90万円と車代150万円だけで240万円です。この場合は現金80%、投資20%程度になっても不自然ではありません。

状況 現金を多めにする理由 NISAを増やしやすい条件
一人暮らし 失業時も家賃などが必要 十分な生活防衛資金がある
実家暮らし 将来の独立費用など 固定費が少なく余裕資金が多い
子育て世帯 教育費・突発支出 教育費を別途確保できている
住宅購入予定 頭金・諸費用が必要 購入資金とは別の余裕資金がある
大きな予定なし 生活防衛資金を確保 長期間使わない資金がある

毎月の給料を貯金とNISAへどう振り分ける?

すでに十分な生活防衛資金がある場合は、毎月の黒字額を貯金とNISAへ振り分ける方法があります。ここでも割合は固定する必要がありません。

例えば毎月5万円余る家庭なら、現金がまだ少ない時期には4万円を貯金、1万円をNISAにする方法があります。必要な現金が貯まった後は、1万円を貯金、4万円をNISAへ変更することもできます。

つまり資産形成の初期と、十分な現金が貯まった後では適切な割合が変わって当然です。「一度決めた50:50を一生守る」のではなく、家計やライフイベントに応じて変更するほうが合理的です。

NISAの年間投資枠いっぱいまで投資する必要はない

現在のNISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円で、併用すると年間最大360万円まで投資できます。また非課税保有限度額は総枠1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円までです。[参照:金融庁 NISAを知る]

しかし、年間360万円という数字は「投資しなければならない金額」ではありません。投資できる上限にすぎません。貯金をほとんど残さず上限まで投資する必要はありません。

毎月1万円でも3万円でも、自分の家計で長期間継続できる金額を設定することが重要です。相場が下落した際に生活費が足りなくなり、値下がりした投資商品を売却しなければならない状態は避けたいところです。

現金を持ちすぎることにも投資しすぎることにも弱点がある

貯金には価格変動がほとんどなく、必要なときすぐ使いやすいという大きなメリットがあります。一方、長期間にわたり現金だけを保有すると、物価上昇によって実質的な購買力が低下する可能性があります。

投資には長期的な資産形成を期待できる一方、価格変動があります。金融庁も投資商品には元本割れのおそれがあることを説明したうえで、長期・積立・分散という考え方を紹介しています。[参照:金融庁 資産形成の基本]

そのため、貯金かNISAのどちらか一方を極端に選ぶのではなく、短期的な安心を現金、長期的な資産形成を投資というように役割を分けると整理しやすくなります。

NISAへ入れすぎているか判断する簡単なチェック方法

NISAの金額が適切か迷ったら、「明日から収入がなくなったとして、投資商品を売らずに何か月生活できるか」を考えてみる方法があります。すぐにNISAを売らなければ生活できないのであれば、現金が少なすぎる可能性があります。

さらに、1~3年程度の間に予定している大きな支出を書き出します。引っ越し50万円、車150万円、結婚費用100万円などが予定されているなら、それらを投資可能額から除外して考えます。

逆に、生活防衛資金と近い将来の支出をすべて現金で確保しても多額の余裕資金が残るのであれば、リスク許容度に応じてNISAによる長期投資の割合を高める余地があります。

まとめ:NISAと貯金は割合より「使う時期」で分ける

NISAと貯金に「必ず50:50」「若ければ80:20」といった万人共通の正解はありません。まず生活防衛資金と数年以内に使う予定のお金を現金で確保し、その残りから長期的に使わない余裕資金をNISAへ回すという順番で考えると、自分に合った割合を決めやすくなります。

例えば結果的に貯金70%・NISA30%になる人もいれば、十分な現金をすでに持っているため貯金20%・NISA80%になる人もいます。割合だけを他人と比較しても、家計条件が違えばあまり意味がありません。

NISAは資産形成に活用できる制度ですが、投資した資産には値下がりの可能性があります。「相場が大きく下落しても生活費には困らず、慌てて売却する必要がないか」という視点から現金と投資のバランスを決めることが、無理なく続けるための重要なポイントです。

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